日本初「スマホ×アナログロッカー」でクリーニング 急拡大の理由は導入ハードルの低さにあり!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年4月2日 20時55分
スマホ特化型のクリーニングロッカーサービス「LAGOO」が注目を集めている。全国200カ所に設置されている完全無人ロッカーで、洋服の受け渡しから決済までのすべてがアプリ一つで完結することから人気が高まった。さらに、コロナによるライフスタイルの変化で利用者減少に悩むクリーニング店の救済も期待される。同サービスを展開するAiCT(熊本県) 代表取締役の渡邉直登氏に、「LAGOO」のサービス内容や強みについて話を聞いた。
導入コストが類似サービスの1/4の理由
季節の変わり目や、Yシャツ、スーツを着用する機会の多いビジネスマンにとって不可欠なクリーニング店。以前から、宅配サービスやロッカーでの受け取りサービスは存在しているが、今回紹介するLAGOOは、スマホアプリとアナログロッカーを掛け合わせた、熊本発の新しいクリーニングサービスである。スマホを介してロッカーの開閉、決済のすべてが完結し、待ち時間なしで24時間いつでも気軽に利用できる。
「『家事や仕事が忙しくて夜遅くにしか取りに行けない』『週末のレジ待ちの時間を減らしたい』といった利用者が抱える課題を解決するだけでなく、クリーニング激戦区の生き残りをかけた差別化サービスにつながる」と語るのは、LAGOOを展開するAiCT代表取締役の渡邉直登氏。
サービス開始当初から大手クリーニングチェーンのホワイト急便と提携。ホワイト急便の店舗横にLAGOOロッカーを設置するところからスタートし、現在ではホワイト急便以外のクリーニング店にも導入が拡大。設置件数は全国で200カ所にのぼり、LAGOOアプリのアカウント登録数も2万件に達している。
さらに、規制がない地域での展開に限定されるものの、駅中やスーパー、コインランドリー内などでの設置も進んでいる。
設置が拡大する背景には、類似サービスのクリーニングロッカーと比べて導入ハードルが低い点が挙げられる。最大の強みは、電源がいらないこと。この仕組みは特許取得済で、ロッカーの開閉はアナログ形式で暗証番号をボタン入力して開け閉めできることから、駅中、軒下などどんな場所にでも設置できる。
操作はすべて利用者のスマホアプリを通じて行うので、ロッカー自体にネットワーク回線も不要。他社のシステムでは、電源、ネット回線ともに必要なため、導入コストが200万円程度と高額だが、LAGOOロッカーは約4分の1の40~50万円で導入することができる。
すでに200回超えの利用者も。シンプル・時短操作で「一度使ったら元には戻れない」
登録費用や年会費などは一切かからず、利用方法はいたってシンプルだ。
スマホアプリを使ってロッカーを開け、商品を入れる。次に、扉のQRコードを読み取ると暗証番号が表示されるので、ロッカーの数字ボタンを押して扉を閉めるだけという簡単操作。決済もアプリ上で行うので、受付完了までわずか15秒程度しかかからない。
LAGOOの利用者は、30~40代がメーン層となっている。通常のクリーニング店では、利用者の6割から7割程度を女性が占めるのが一般的であるところ、LAGOOは男性利用者が55%と半数を超えている。
渡邉氏は「LAGOOに向いている衣類は、Yシャツ、スーツ、スカート、ブラウスなど。クリーニング方法を相談した方がいい高級衣類はおすすめしていない。実際にYシャツが最も多いのが現状。共働き世帯の増加もあってLAGOOを便利に感じる男性利用者が多いのだろうと分析している」と話す。
「今後も利用するか?」というアンケートに対して、「定期的に使う」「たまに使う」との回答が9割にのぼるなど、一度利用を体験したユーザーからは高い評価を受けている。さらに、併設店舗が開いている時間帯でも6割のユーザーがロッカーを利用しているという興味深いデータもあり、すでに200回以上利用しているユーザーもいるという。
「スマホさえあれば順番待ちから解放されるので、一度使ってみると、便利過ぎてそれしか使えなくなるサービスだと思う」と渡邉氏は強調する。
IT経営者がクリーニング業界に参入したきっかけは「開発者自身の実体験」
渡邉氏が経営するAiCTは、熊本でインターネットサービスやアプリ開発を行う会社だ。同社が、完全無人のクリーニングサービスの開発をスタートしたのは2016年。クライアントの1社であったホワイト急便との付き合いの中で見えてきたクリーニング店の現状から「ITを活用して効率化できないか?」と考えたのがきっかけだ。
さらに、「熊本ではほとんどのクリーニング店が19時には閉まる。平日夜にYシャツを取りに行きたくても間に合わくて困ったことが多々あった。預けに行くのと引き取りで2度足を運ばなくてはいけないところも面倒でしかたなかった」という渡邉氏自身の実体験があったのも大きかった。
海外の事例を調べると、当時アメリカのシリコンバレーに同様のサービスがあることがわかったが、アメリカ仕様のサービスをそのまま導入することは難しかったという。理由の一つは、日本のように紙のバーコードタグを取り付けるのではなく、洋服自体にバーコードを焼き付ける仕組みで、これは日本人には受け入れられないと考えたからだ。もう一つは、クリーニング所以外で洗たく物の処理ができないという日本のクリーニング業界特有の規制である。
そこで、スマホを活用した独自のサービスを一から開発することに決めた。当初は、クリーニング店の付帯設備として店舗横に設置する方法でスタートし、その後少しずつ規制が緩和されたエリアが増え始め、今では駅ロッカー、スーパー内などの設置場所も増えてきた。
モノの受け渡しを時短するプラットフォームを目指す
コロナによってスーツやYシャツを着る機会が減少した、という人は多いはずだ。クリーニングの利用者が減り、クリーニング店の経営には、家賃、光熱費、人件費という大きな固定費がかかることから、閉鎖する店、何とか生き残る道を模索している店も多い。
そんな中、LAGOOは店舗の差別化サービスとして威力を発揮する。
渡邉氏は「LAGOOロッカーを使うことで、閑散期には人を減らしたり、店舗の営業時間を短くするなど人件費の削減も可能となる。店舗の空いていない時間にはロッカーを使ってもらうことを前提とした、『短時間営業店』という新しい業態も増やしていけたら」と意気込む。
将来的に描くのは「LAGOOを、モノの受け渡しを時短するロッカープラットフォームにしていくことだ」と語る。デジタルのスマホアプリとアナログロッカーを掛け合わせた独自の技術で、忙しい私たちの暮らしをより便利に進化させる新たなサービスの誕生を期待して待ちたい。
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