ミツカン、”究極”をめざした納豆がヒットした必然と今後の納豆販売戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年4月5日 20時55分
Mizkan (愛知県/吉永智征社長:以下、ミツカン)は2022年9月に、納豆の人気ブランド「金のつぶ」シリーズから「金のつぶ 国産小粒納豆3P」を発売した。納豆は、各スーパーマーケット(SM)で価格訴求品として扱われることが多いが、同商品の参考小売価格は218円(税抜)とやや高めの価格設定となっている。ミツカンは「『金のつぶ 国産小粒納豆3P』は23年度に10億円の売上をめざせる」と話す。ミツカンの納豆戦略について、担当者に話を聞いた。
“究極”をめざした納豆を開発した理由とは
ミツカンが22年9月に発売を開始した「金のつぶ 国産小粒納豆3P」について、同商品のマーケティングを担当する加納慎太郎氏は「ミツカンの持てる技術を結集したという意味で“究極”をめざした納豆だ」と話す。
「金のつぶ 国産小粒納豆3P」では“究極”をめざすために、3つのこだわりが込められている。1つ目が原材料に小粒大豆の「国産ユキシズカ」を使用した点。2つ目がミツカンが培ってきたノウハウでユキシズカを炊き上げることで、ふっくらとした食感に仕上げている点。3つ目が、タレにもこだわり、宗田がつおと昆布のだしを凝縮し、旨味とコクを実現した点だ。
商品開発にあたって「調査会社と共同で、納豆を購入している消費者の動向を調査したところ「納豆市場金額の2割程度が、国産大豆を使っていることが納豆購入の決め手となっていることがわかった」(加納氏)ことが、国産大豆使用の決め手となったという。
さらに、以下のような事実も判明した。国内で流通している納豆は、小粒以下の納豆が約75%、中粒以上とその他(ひきわりなど)納豆が約25%と、小粒以下の納豆が圧倒的な金額シェアを占める。一方で、国産大豆を使った納豆に対象を絞った場合、中粒以上の納豆と小粒以下の納豆がほぼ等しい金額シェアとなる。「75%:25%」の構成比が国産納豆のカテゴリーにも当てはまるとすれば、国産大豆の小粒納豆の市場には参入の余地が残されていることになるからだ。
この2つの調査結果から「市場の2割が国産大豆を支持しているなかで、国産小粒納豆の開発にチャンスがあるのではないかと考えた」(加納氏)という。
テレビCM効果で購買層に思わぬ変化が
販売開始にあたっては、主要都市でテレビCMを放映し、商品の認知度を高めた。さらにそのタイミングに合わせ、たとえば期間限定で店頭価格を強化した販促を展開した。
納豆マーケティングチームの梶原洋平課長は、「データを見ると、このCM放映が初回購入に繋がっている。一度食べれば品質の高さが伝わり、加えてリピート率が高いため計画以上の数字で推移している」と話す。その勢いは23年度中に10億円の売上もねらえる勢いだという。
さらに、梶原氏は国産納豆市場のメインの購買層は、60~70代が中心であるのに対し、「金のつぶ 国産小粒納豆3P」は 40~50代が中心で、その要因についても、テレビCMの効果があったと考えている。「当社の既存の納豆購入層とは違った年代層から購入いただいていることになる。自社商品と食い合っていない傾向もこの納豆の強みといえる」と話す。
「今後はリピート率の高い定番商品に注力していく」
ミツカンは、これまでも焼肉味やバター醤油味などの変わり種のフレーバー納豆を数多く開発してきた。しかし、先述の調査によって、フレーバー納豆購入者の多くは同商品を1、2回購入し、その後定番の納豆の購入に戻る傾向にあることが判明したという。
加納氏は、若年層から支持を集めるフレーバー納豆は変わらず開発していくとしたうえで、「今後はこの『金のつぶ 国産小粒納豆3P』のように、リピート率の高い定番の納豆商品に注力していきたい。新商品を開発するほか、既存の定番商品をリニューアルするなどしてより強化していく」と話す。
また、今後は定番商品として金のつぶシリーズの「とろっ豆」を据えていくという。この納豆は、昔ながらの納豆のような“豆感”のある食感ではなく、柔らかでとろっとした食感にこだわっているのが特徴だ。
同商品はミツカンが開発した、納豆の蓋部分を取り外し、真ん中でパキッと割るだけでタレが出せる容器を採用しており、手が汚れない設計になっているのも特徴の1つ。「『とろっ豆』は従来とは違ったイメージの納豆であり、若年層により強く訴求していきたいと考えている」(梶原洋平課長)と説明する。23年4月中にはパッケージを刷新し、さらなるイメージ戦略を図っていく予定だ。
昨今の値上げラッシュもあって、価格訴求品が注目される中、高質な納豆をもヒット商品に育て上げるミツカンの戦略に注目が集まる。
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