フード&ドラッグの最注目店舗「イオンタウン幕張西店」のココがスゴイ
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年4月16日 20時55分
今回訪れたのは、千葉県千葉市にある「ウエルシアイオンタウン幕張西店(以下、幕張西店)」だ。イオン(千葉県)グループのショッピングセンター内に店舗を構える大型郊外店舗で、2021年10月21日のオープン以降、現在まで多くの方に親しまれている。オープン当初から業界紙で紹介されるなど業界内でも注目店として話題になったこの幕張西店。本稿では、現役ドラッグストア店員の目線で同店の売場を観察してみたい。
計算され尽くしたPB展示コーナーに注目!
店舗に入って思わず感動のため息をついたのは、店内入ってすぐのプライベートブランド(PB)の展示コーナーだ。ウエルシア薬局(東京都)では、「人生の毎日を、健康で、美しく」をモットーに食品や肌に触れる商品を揃える「からだWelcia」、「生活に便利、快適、安心」をお届けする「くらしWelcia」の2ラインでPBを展開している。同店のPBコーナーでは、健康と暮らし、それぞれの訴求にあったプロモーションを目に留まりやすい入口で大きく行っていたのが目を引いた。
同コーナーで特筆したいのが、「PBのみ」を「入口」で「大きく展開していること」という点だ。一般的に、PBの商品扱いは“NB(ナショナルブランド)品あってこそ”であり、認知度が高いNB品が並ぶ売場にPB商品を一緒に並べるのが定石だ。消費者の認知度はNBが勝るので、NBと価格比較してお得なPBを選んでもらう……いわゆる価格訴求の演出で使われるケースが多い。
一方、幕張西店のPB展示コーナーはNB商品が一切なく、PBのみで構成されている。このような売場演出は、お客さまに対し、PB商品の質の良さ、また、自社の商品に対する自信を感じさせることだろう。また、パッケージデザインが揃っているため、「売場の統一感」も演出されており、商品の魅力を2倍、3倍に引き上げている。
たとえ同コーナーで購入につながらなかったとしても、お客さまが店内を回って定番棚でもう一度商品を目にすることで「そういえばこの商品、入口にも置いてあったな」と思い返すことで、購入につながるケースも多いだろう。前述のとおり、ウエルシア薬局のPBはパッケージデザインが統一されているため、印象に残りやすい。思わず唸ってしまうほど、計算高くて美しい売場提案であると感じた。
競合“スーパー”への対抗意識が透ける食品売場
幕張西店の“要”でもある、食品売場をチェックしてみた。目を引いたのは、6台も配置された特大の冷凍什器で、売れ筋のNBのほか、バラ肉スライスの大容量や鮭の切り落としなど冷凍の生鮮素材も揃えている。同店の最寄り駅である「幕張本郷駅」周辺には、「業務スーパー」が出店しており、駅前の競合店を意識した品揃えであるようだ。
冷凍食品コーナーを抜けると、食品スーパー顔負けの青果売場が見えてくる。その中でもとくに目を引かれたのが果物だ。ただ商品を並べるのではなく、木々や新緑の葉をアクセントとして置くことで果物のみずみずしさをうまく表現していた。ドラッグストアならではの販促物の使い方の上手さが発揮されていて、大変面白かった。
実際に「からだWelcia」の食品PBをいくつか購入してみたので、感想をレポートする。
購入したのは、「素材で勝負のうまナッツ 28g×7袋」「とまらないアーモンド小魚」の2点だ。
まず、「素材で勝負のうまナッツ 28g×7袋」から。一口食べた素直な感想は「え!ちゃんと旨いじゃん」だ。パッケージを見ると、原材料は「アーモンド・くるみ・カシューナッツ」のみで添加物などの記載がない。「素材がよくなければ本当においしくないパターンだけど大丈夫か……?」という不安は杞憂に終わった。
また、個包装で食べきりサイズなのでひとり暮らしでもファミリー層でも食べやすい。6パックも入っているので仕事の合間や休憩時間にも食べやすく、利便性も高い (この記事を書いている合間にも食べてしまうほど“ガチ”でおいしい商品です)。
もう1つの「とまらないアーモンド小魚」も小魚の塩加減が絶妙で、満足できる味だった。こちらは個包装ではないものの、蓋が付いているので、一度に食べきれなくても保存できるため、こちらも利便性に優れている。個人的な味の好みは「うまナッツ」に軍配が上がってしまうものの、ちびちびと食べているといつの間にか量が減っていったので、「なんだかんだ気に入ってしまうおいしさ」であることに食べ終えてから気づいた。
スマイルケア商品も高クオリティ!
「からだWelcia」と並んで売場内で目立っていたため、一緒に購入してみたのが「大妻女子大学」が監修した「スマイルケア商品(介護食)」だ。「大妻女子大学×Welcia」による「さばの味噌煮」「ハンバーグ」を購入し、実際に食してみた。
まず、「さばの味噌煮」。介護食ということで薄味をイメージしていたが、実際に食べてみると味噌の味がしっかりと感じられ、食欲をそそる味付けとなっている。味噌味も何かで薄めたようなチープな味ではなく、最後までおいしく食べることができる仕上がりだった。「ハンバーグ」はボリューム感がありながらも、舌と上あごでつぶせるくらい柔らかく、味だけでなく食べやすさも意識された、こちらも完成度の高い商品だった
ウエルシアの食品PBを食べてみて、「こんなにハズレがないことがあるなんて……」と感服させられた。食品以外にも、「くらしWelcia」でラインナップする「誰も傷つけたくないスポンジ」(128円)も購入して食後の皿を洗ってみたが、泡立ちと水切れのよさに「これもすごい商品なのか……」と戸惑ってしまうほどだった。「安かろう悪かろう」のPBの時代はとっくに終わり、今はもう「満足度の高い上質PB時代」であると強く感じた。
ハイクオリティな店舗だからこその課題
筆者はこれまでも大型の食品強化店舗を見てきたが、「あれもこれも」と商品を展開して商品政策の軸がぶれてしまっているケースは少なくない。店舗のテーマにそぐわない商品展開や通路をふさいでしまうようなランドリー陳列で、開店当初のよさが失われた店も見てきた。
一方、幕張西店は「お客さまの健康ステージを支え、地域の方が楽しめるコミュニティ拠点をめざす」というオープン当初の目的を忘れることなく、今日まで営業を続けている。憩いの場として提供している「ウエルカフェ」では、イベント終了後だったのか、ご年配の女性とスタッフが気軽に話をして盛り上がっていて、普段から地域とのつながっていると感じた。
ここまでクオリティの高い店舗を見たのは久しぶりで、良い点ばかり列挙したが、課題がないわけではない。いくつか挙げてみたい。まず感じたのは「今後5年、10年と営業を続ける中で、このクオリティを維持できるのか」という点だ。
年々働き手が不足している昨今、400坪以上ある売場のメンテナンスや業務に適切な人手と時間を割き続けることが果たして可能なのだろうか。現に、同店を訪れた際は、夕方の比較的混雑する時間だったのにもかかわらず、レジがフル稼働していなかった(4台中3台が稼働)。夕方の来客数が多い時間帯であること、売場規模を踏まえた客単価や購入点数を考えると、ピークタイムにレジをフルオープンしない理由はほとんどない。あるとするなら、「その時間に勤務できるスタッフがいない」というところではないだろうか(調査日は、レジから離れた酒類・飲料売場付近までお客さまが並んでおり、会計終了までそこそこの時間を要した)。自身が大型店に勤務していたときの経験からいえば、レジ4台分のメインスタッフにプラスしてレジサポートのサブスタッフが複数名ついていても不自然ではない。
また、上記の問題点を踏まえると、ハイクオリティな店舗であるがゆえに、同モデルの多店舗化は難しいようにも感じる。売場、とくにエンドの整然とした様や安定感は素晴らしい。棚はほこり一つなく、清潔で過ごしやすい空間となっている。しかしピークタイムにレジ要員を揃えられていないことを考えると、やはり人手不足感が否めない。安易に2店舗目3店舗目の出店に踏み出すのは長期的な視点で考えると厳しいのではないだろうか。
来客数に合った人員を配置していかなければ、お客さまや働くスタッフに不満が募り始め、それまでうまく回っていた業務も回らなくなってくるからだ。店舗運営する上で必要不可欠な「オペレーション」の部分が今後の課題になりそうだ。
ただ、売場の見栄えやPB商品の完成度は申し分なく、同店がフード&ドラッグでめざすべき理想の店舗の1つであることは間違いない。筆者の個人的な感想を大袈裟に言ってしまえば「完成系」に近いようにも思う。ウエルシア薬局にとって、この幕張西店はフード&ドラッグのモデル店舗の1つであると思われる。同店を皮切りに、このモデルを数多く出店し、より多くのお客さまに魅力を直接感じてほしい。筆者が住む地域にも出店してほしいと思わされる、魅力あふれる店舗だった。
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