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イギリスのベジタリアン人口が急増!牽引役はサンドイッチチェーン!?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2019年8月8日 20時32分

ギリスでは、小売側の商品訴求も奏功し、ベジタリアンやヴィーガンの人口が急増している

「イギリスの食事は美味しくない」「イギリス人は食にこだわりがない」といった根拠のない先入観を持つ日本人が今も少なくない。しかし、イギリスでは今、「ベジタリアン」や「ヴィーガン」の人口が急速に増えており、「身体によいメニューを美味しく食べたい」というニーズが拡大している。そんななか、人気サンドイッチチェーンが「ミートフリー(肉を使わない)」を掲げた新業態をオープン。ロンドンを中心に大きな話題を呼んでいる。イギリス在住のクリエイティブ・コンサルタント、森田亜紀子氏が現地からレポートする。

4年間でヴィーガン人口が4倍に!

ギリスでは、小売側の商品訴求も奏功し、ベジタリアンやヴィーガンの人口が急増している

 人や社会・環境に考慮した「エシカル消費」への関心が高まるイギリスでは、衣食住に「プラント・ベース(原材料が植物性由来)」の製品の利用を心がける消費者が急増しています。とくに食においては、いわゆるベジタリアンのうち、乳製品や卵、魚介類なども一切口にしない「ヴィーガン」の人口が過去4年間で約4倍に増加。現在、15歳以上の英国人口の7%にあたる325万人がベジタリアンおよびヴィーガン、たまには肉も食べつつ野菜中心の食生活を実践する「フレキシタリアン」が50万人以上に上ると言われています。

 さらに、この1年間で3人に1人が肉を食べることをやめるか控えるかしており、現在、英国では4分の1の家庭がミートフリー(肉を使わない)の夕食をとっているとのこと。この傾向は若年層を中心に拡大していく模様で、2025年までに英国総人口の4分の1がベジ・ヴィーガンに、半数近くがフレキシタリアンになるだろうと予測されています(ここまですべて2018年の英国ヴィーガンソサエティー調べ)。

  昨年1年間に国内で発売された食品の新商品の6つに1つがヴィーガン認証を受けていますが、興味深いことに、英国で消費された植物性食品のうち、購入者の92%が実はヴィーガンではない人たちでした。この実状は、消費者の潜在意識を多角的に引き出そうとする小売店や外食・中食産業の革新的な商品開発が功を奏したといえるのではないでしょうか。

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人気サンドイッチチェーンがベジブームを牽引

「ミートフリー」のサンドイッチ店が爆発的人気 M&Aで店舗網急拡大へ!

 

プレタ・マンジェの新コンセプト店舗「ベジ・プレット」

 さて、去る522日、「プレット(PRET)」の名で親しまれる英国の大手サンドイッチチェーン「プレタ・マンジェ(PRET A MANGER)」(以下、プレタ)が、ロンドンを中心に店舗を展開している同業の「イート(EAT.)」を買収することで合意したと発表しました。業界内でも驚きのニュースでしたが、プレタはイートの既存店を可能な限り「ベジ・プレット(VEGGIE PRET)」に転換する方針を掲げ、「なるほど」とロンドンっ子を納得させました。

 ベジ・プレットとは、ロンドンの歓楽街・ソーホーにあったプレタの既存店で、16年6月に1カ月限定で試験的に全商品をミートフリーにしたところ、あまりの人気に期間延長の末、常設となった新コンセプト店舗です。プレタは営業実験で当初30%の減収を覚悟していたにも関わらず、開店2週間にして対前年比70%の増収を記録。なかでもヴィーガンデザート「カカオとオレンジのポットデザート」(チョコムース)は売上目標を10倍上回り、想像以上のベジタリアンではない若者の来客数に経営陣は嬉しい悲鳴をあげました。ベジ・プレットはその後、ロンドンに3店舗、マンチェスターに1店舗を新規出店(店舗によってメニューはやや異なります)。ランチタイムには品切れが目立つ程の人気店となっています。

 以下、ベジ・プレットで販売されている商品をいくつかご紹介しましょう。

■ファラフェル・アボカド・チポトレのフラットブレッドサンド(テイクアウト3.99ポンド、イートイン4.80ポンド)


サツマイモのファラフェル、アボカド、レッドパプリカ、コリアンダー、オニオンの酢漬け、焦がしコーンサルサをフラットブレッドでサンド(ラップ)。チポトレ風味のケチャップ和え。

 

■ビーツのマッシュ・ピスタチオ・フェタチーズのバゲットサンド(テイクアウト3.45ポンド、イートイン4.15ポンド)

潰したビーツ、フェタチーズ、ローストピスタチオ、ルッコラ、キュウリ、ミント、フリーレンジ・マヨのバゲットサンド。

フモスとローストパプリカ on プレタ特製グルテンフリー・ブレッド(テイクアウト3.25ポンド、イートイン3.90ポンド)

グルテンフリー・ブレッドのスライスに、プレタ特製のフモス、特製レッドタベナード、レッドパプリカのグリル、フェタチーズ、松の実、バジルの葉をトッピング。

「美味しさ」を伝えるブランドメッセージがカギになる

 今後、100近いイートの店舗がベジ・プレットになることで、ベジブームに拍車がかかることは間違いないでしょう。実際に、調査会社ミンテルは、2017年に57200万ポンド(約755億円)だった植物性食品の市場価値は、21年には65700万ポンド(約867億円)に達すると予測しています。

 欧米では気候変動対策に肉の消費減が不可欠と提唱されており、ますます高まる環境保護への認識の強まりがヴィーガン市場を牽引するに違いありません。しかし、食通なミレニアル世代にアピールするには、「ヴィーガン」を謳うだけではなく、「新しい美味しさ」を「エキサイティングなブランドメッセージ」で訴求することがこれまで以上に必要と思われます。

 

森田亜紀子●在英35年、英国のデザイン産業に20年以上携わるフリーランス・クリエイティブ・コンサルタント。12歳で渡英し、ロンドンのミドルセックス大学ビジュアルコミュニケーション学部を卒業。グラフィックデザイナーとしてロンドンのB to B広告代理店や出版物を扱うデザイン会社、飲食品ブランドを扱うデザイン会社での勤務を経てフリーランスに。日本市場向けの商品デザインや、英国市場向けの日本商品の開発を幅広く手掛けている。

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