ついにベールを脱いだセブン&アイ新業態「コンフォートマーケット」を徹底レポート
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2019年8月2日 20時0分
セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)が8月2日、新型スーパーマーケットを東京都品川区に正式にオープンした。フルセルフレジのほか、専用スマホアプリで注文・決済した商品を店内で受け取れる仕組みを導入し、ローコストオペレーションを徹底する一方で、店内加工の総菜をスタッフが対面販売するなど接客も重視した実験店の位置付けだ。ついにベールを脱いだセブン&アイの新業態をレポートする。
売場面積566㎡の小型スーパー!
セブン&アイがオープンした新型スーパーの名称は「COMFORT MARKET中延店」(以下、コンフォートマーケット)。東京都品川区、都営地下鉄浅草線「中延」駅からすぐ、交通量の多い幹線道路「第二京浜国道」沿いに位置する。建物は4層構造で1~2階が売場、3~4階がバックヤードや作業場となっている。売場面積は1~2階合わせて566㎡で、品目数は5500品目。品揃えを絞り込んだミニスーパーのような印象だ。
1階入口から入ってまず目に飛び込んでくるのが総菜売場だ。「一品一品の素材・味つけ・調理方法にこだわってご用意」をコンセプトに掲げ、揚げ物、米飯、サラダ、寿司といった具合に一般的なスーパーマーケットのような品揃えを展開する。
売場中央にあるラウンド型の売場にスタッフを配し、鶏の唐揚げ(100g/本体価格200円)などを接客しながら量り売りする。このほか、とんかつ(1枚/同300円)やアジフライ(1枚/同150円)など揚げ物もバラ売りも実施する。
1階売場奥にはインストアベーカリーもあり、「ちぎりパン」7SKU、「プチパン」2SKU、「マフィン」4SKU、「スコーン」2SKUを品揃えする。ちぎりパンやプチパンは店内焼き上げで提供し、出来たてのおいしさをアピールする。
特筆すべきは省力化の取り組みだ。コンフォートマーケットでは、4階にある作業場で総菜を製造する。この4階の作業場と1階のラウンド型総菜売場がエレベーターで結ばれており、製造した商品をすぐに下階に下ろせる構造としている。また、弁当類についてはアウトパック商品を多用しており、製造の負担を軽減している。
エスカレーターを上がって2階には、青果・鮮魚・精肉のほか、冷凍食品や加工食品、日用品を中心とした非食品の売場が広がる。
こちらに並ぶ商品も一般的なスーパーマーケットと変わらない。例を挙げると、精肉では国産和牛を100g同498円で販売。鮮魚では刺身の3点盛(同780円)、4点盛(同980円)のほか、マグロのサクなどを販売。食べ切りを意識した小型サイズも揃える。青果売場ではトマトのボリューム陳列していた。
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オールフルセルフレジ! ローコストの取り組みとは
スマホで注文・決済した商品を店舗で受け取り!
コンフォートマーケットは“コンビニ3つ分”ほどの売場面積でありながら、正社員数は3人のみで、パート・アルバイトを合わせてもたった34人で運営する体制としている。
そのため同店では、随所でローコストに向けた取り組みが行われている。多くの人時が割かれるレジにおいても徹底した合理化を追求しており、専任スタッフを置かず、初めてのお客でも使いやすい新型のインターフェースを搭載したフルセルフレジを8台配置。うち2台はキャッシュレス専用レジとしている。
もう1つ、新たな取り組みとして始めたのが、スマートフォン1つで完結する買物の仕組みだ。
専用のスマホアプリをダウンロードし、商品ラインアップや料理レシピのページから商品を選択して注文すれば、店舗スタッフが当該商品をピックアップ。店内入口近くにある冷蔵機能がついた専用ロッカーに入れておく仕組みだ。決済もアプリ上で行うため、お客は従業員とやり取りすることなく買物を済ませることがきる。
コンフォートマーケットがターゲットに据えるのは、「日々忙しくしている人」。このスマホ注文・店舗受け取りの仕組みを使えば、「ネットスーパーを頼んでも自宅で受け取れない」という悩みを抱えるお客のニーズに対応することができる。宅配は当面しない方針としており、従業員の負荷が減らすことができ、ローコスト化に寄与するというわけだ。
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「セブンプレミアム」を扱わないワケ
「基本的に1からすべてを構築する」
同店はセブン&アイが2018年4月に立ち上げた新会社、「フォーキャスト」が運営する。社長にはセブン–イレブン・ジャパン執行役員や、商業施設の開発運営会社であるセブン&アイ・クリエイトリンク取締役兼常務執行役員新業態開発本部長を務めた有坂順一氏が就任している。セブン&アイ広報によれば、フォーキャストにはグループ内外から集めた人材が在籍しているという。
これはイトーヨーカ堂(東京都)やヨークベニマル(福島県)といったグループの有力企業の影響を受けずに独自の発想で新たなスーパーマーケットをつくりあげたいというねらいによるものだ。実際に商品の仕入れに関しても、新会社のフォーキャスト内にバイヤーを配置。店内を見ても、セブン&アイのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」の扱いは一切ないという徹底ぶりだ。
商品政策や運営スタイルも「基本的に1からすべてを構築する」(セブン&アイ広報)考えで、「どれだけ効率化が図れ、どれだけ売り上げとれるかを実験する」(同)という。つまり、効率化によってサービスレベルを落とさず、かつ買物の楽しさを提供できるかの実験というわけだ。
「コンフォートマーケット」フォーマットの多店舗化の計画は未定であり、同店の成果をどのようにグループのSM企業に落とし込んでいくかも今後検討していくとしている。大手セブン&アイが、過去の成功体験にとらわれずに1から作り上げる新スーパーマーケットフォーマットの成否に注目だ。
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