コメ兵、セカスト、ブックオフ……好調リユース業界の動向を解説!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年4月23日 20時55分
10数年ほど前までは、アクセサリー、古本、家具、パソコン、自転車、ベビーカーなどはゴミとして廃棄するのが当たり前だったが、昨今は再利用、つまり「リユース」することが主流となっている。SDGs(持続可能な開発目標)が世間に浸透し、ゴミや二酸化炭素排出、資源消費の削減につながるリユースに注目が集まったことが大きな要因だろう。それに伴い、リユース業界も年々市場規模が拡大している。本稿では、SDGsへの注目が追い風となっているリユース業界について解説していく。
リユース事業が追い風となっている理由
昨今、なぜリユースに対して社会全体が注目するようになったのか。これは、大量廃棄社会に対して危惧・懸念を抱く世間の声が大きくなってきたことが背景にある。
国連本部が発信するSDGsの目標12でも「つくる責任・つかう責任」を掲げ、持続可能な生産・消費のサイクル確立を加盟国に求めている。このように、最近は官民一体となってSDGsに熱心に取り組んでおり、リユース業者にとって追い風となっているのだ。
リユース大手5社の特徴を紹介していこう。
まず、ハイブランドのジュエリーやウォッチ、バッグなどの買取・販売を得意分野とするコメ兵ホールディングス(愛知県:以下、コメ兵)について説明する。コメ兵の大きな特徴の1つとして、OMO(店舗とオンラインの融合)を意識し、EC関与売上と同社が独自に呼ぶ指標を重視していることが挙げられる。一連の買い物行動においてECが何らか介在することをいい、この比率は上昇傾向にある。22年3月期は46.6%と目標の50%に近づいている。
銀座店を移転するなど適宜旗艦店を配置しながらも、目下注力しているのは、小型店の展開だ。それも販売ではなく売場面積30㎡程度の「買い取りセンター」の多店舗化である。買取数を伸ばすことが販売強化の最大のポイントだからである。
次に紹介するのはセカンドストリート(愛知県)だ。ゲオホールディングス(愛知県)の子会社で、全国で700店以上の店舗を展開し、衣料品や家電製品等の買取販売を行う。なかでも、古着を豊富に品揃えしていることがセカンドストリートの強みだ。リユースの服飾・雑貨部門の売上では、2位のZOZOや3位のブックオフグループホールディングス(神奈川県:以下、ブックオフ)を倍以上引き離し、首位を独走する。セカンドストリートの業績は好調で、ゲオのDVDレンタルが落ち込むなか、グループの経営を支えている。
中古書籍や音楽・映像メディアを主体に、リユース事業を展開しているブックオフにも注目したい。消費者の本離れやサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスの浸透の流れを受けて一時は業績が低迷したが、最近ではトレーディングカードやフィギュアなどのホビー商品に注力するなど、新商材に果敢にチャレンジし、苦境を脱した。ホビー商品は価格の相場が確立してないうえに買取時の確認箇所も多岐に渡るため、査定が難しいとされている。その代わり、いったん軌道に乗れば他社の追随は難しい。
また、ブックオフでは新商材導入の権限を、店舗に委譲したことも奏功した。たとえば、海が近い茅ヶ崎ではサーフグッズを取り扱うといったことが可能になり、地域ごとの戦略が成功している。
これらの結果は数字にも表れている。ブックオフは、2019年3月期には3期続いた赤字から脱却し、黒字化。23年5月期は約950億円の売上を見込む。
トレジャー・ファクトリー(東京都)にも触れておきたい。衣料を中心に、家電からスポーツ用品まで幅広く手掛ける。さらに、引っ越し請負と不用品買取を兼ねる「トレファク引越」など、ユニークなビジネスを展開し、業界で存在感を示している。
最後に紹介するのは大黒屋(東京都)だ。ブランド品から、貴金属、携帯電話、パソコン、家電さらには酒類まで幅広く取り扱う。大黒屋ホールディングスには買取査定スタッフが多く在籍している。最近は、クラウドによるビッグデータ活用や、AI鑑定導入にも取り組み、業務効率化につなげている。現在は24店舗(23年3月末時点)を展開しているが、21年に発表した「5カ年事業計画」では67店舗にまで増やす予定だとしている。
このように、業界各社ともビジネス展開において様々な工夫を凝らしたり、得意分野に磨きをかけたりし、生き残りを図っている。
持続可能社会の実現に向けた買取業者のミッションと課題とは…
リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rを通じて循環型社会の構築をめざす「3Rイニシアティブ」は、2004年のG8サミットにて小泉純一郎首相(当時)が提案したコンセプトだ。20年近い歳月がたち、この3Rがようやく社会にも浸透してきた。今後、リユース業者は、リユースを円滑に普及させる媒介としてのミッションがより求められることになるだろう。
一方で、リユース事業に立ちはだかる最大の懸念材料が、フリーマーケットアプリなどのオンラインビジネスの存在だ。たとえば フリーマーケットアプリ大手のメルカリの急成長は途切れることなく、直近4年間でアクティブユーザー数は倍増し、2000万人を超えている。リユース事業のパイ自体が増えているとはいえ、実店舗を中心とするリユース各社はスタッフ人件費・家賃などの店舗運営コストが重くのしかかり、ECとのコスト競争はどうしても不利だ。
もちろん、品質面における「安心・信頼」はリアル店舗のアドバンテージだ。一方でユーザーには、「店舗に持ち込んだら5円といわれたものがメルカリに出品したら200円で売れた」など、売り手からみた価格優位性という点では既存リユース業者が強みとならない点もある。リアル店舗や信頼という強みを活かしつつ、広がる個人間取引(CtoC)にはない価値を追求できるか、リユース業界にとっての正念場だ。
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