流通再編の衝動その8 孤高デイリーヤマザキに再編の風は吹くか
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2019年9月1日 20時0分
コンビニエンスストアの再編はこの先、無風状態が続く可能性が高い。再編が注目されている中堅コンビニのうち、大手色に染まっていないチェーンとしては「デイリーヤマザキ」「セイコーマート」がある。ただし「セイコーマート」(企業名:セコマ)は直営・非24時間営業、製造小売という独自のビジネスモデルで我が道を行く。他方、デイリーヤマザキはコンビニと全方位で取引する山崎製パン(東京都)が運営母体だが、再編に向かう可能性はあるのだろうかーー。
なぜ、デイリーヤマザキは再編の対象とならないのか
現在、中堅コンビニは業界3位のローソンに次ぐ売上規模を持つイオングループのミニストップ(千葉県)以下、スリーエフ(神奈川県)、ポプラ(広島県)、セーブオン(群馬県)などがあるが、いずれも上位3社との規模の差は歴然とし、大手と提携したり、協業したりしている。
こうした状況下、大手色に染まってないコンビニチェーンとして注目されるのが、製パン業界のガリバーである山崎製パンが展開する「デイリーヤマザキ」、北海道が地盤のセコマが運営する「セイコーマート」である。一見すると、いずれこの2社は大手との関係性を構築するものと思われがちだが、デイリーヤマザキ、セコマともに再編に向かう観測はまったくといっていいほど流れていない。「セコマ」はすでに冒頭で述べた通りで、デイリーヤマザキにも固有の事情があるからだ。
デイリーヤマザキの店舗数は1454店舗(2019年6月末時点)。店舗数だけみると、大手によるM&A(合併・買収)のターゲットになってもおかしくない。なぜ、デイリーヤマザキは再編の対象とならないのか。それは、運営会社である山崎製パンが抱える、ある事情に起因する。
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“全方位”の山崎製パンが抱える憂鬱
“全方位”の山崎製パンが抱える憂鬱
デイリーヤマザキはかつては同名の法人が運営していたが、現在は山崎製パンの事業の一つとなっている。山崎製パンにしてみれば、大手コンビニ3社は大口の取引先。仮に3社のどこかに売却したり、提携関係を結んだりするようなことがあれば、ほかの大手との取引関係がギクシャクしかねない。
しかし、デイリーヤマザキ事業は赤字が続いている。19年12月期の上期(1~6月)の営業損益は10億円で、18年12月期まで7期連続の営業赤字となっている。同社でもテコ入れに乗り出しているが、浮上は難航している。
山崎製パンとしては抜本的なテコ入れ策として、本来なら大手との提携や統合を検討したいところとみられる。しかし、どこか特定のチェーンと親密になって、大口の取引先を失ったり、溝をつくったりしたくないのが正直なところかもしれない。
そうでなくても山崎製パンは90年代前半に、セブン-イレブン・ジャパン(東京都)が始めた焼き立てパンの取り扱い、開発をめぐって意見が対立。取引を縮小し、経営への痛手として尾を引いたという経緯もある。山崎製パンの選択肢としては、赤字解消まで辛抱強く経営を続けるか、あるいは少しずつ縮小の道を辿るか、それとも取引に影響がでることに目を瞑って、どこかの傘下に入るかしかないとみられるが、その決断は簡単ではないだろう。その一方で、コンビニにとって必要不可欠なパン、菓子(留型商品含む)等を自社グループである程度賄えるという強みがあるからこそ、この規模でここまで単独でやってこられたと言うこともできよう。
そう考えると、やはりデイリーヤマザキに再編の風が吹くのは、もう少し先のことと考えるのが自然だろう。(次回へ続く)
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