書店数が激減するなか、ローソンが「マチの本屋さん」を続々オープンする理由
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年5月17日 20時55分
コンビニ大手のローソン(東京都/竹増貞信社長)が、書店併設型店舗ブランド「LAWSONマチの本屋さん」を続々オープンしている。直近では、2023年1月に「神戸ジェームス山店」(兵庫県神戸市)、同年2月1日に「田子町店」(青森県三戸郡)を出店。25年度中に100店舗まで拡大する計画だ。書店とコンビニを組み合わせた、新たな店舗フォーマットの出店の意図を担当者に聞いた。
書店併設型店舗を拡大する理由とは
ローソンが書店併設型店舗ブランド「LAWSONマチの本屋さん」を開店したのは2021年のことだ。埼玉県狭山市に1号店である「狭山南入曽店」をオープンし、現在では8店舗を運営する。
同ブランドの店舗では、おにぎりや弁当、ベーカリー、デザートといった通常のコンビニの品揃えに加えて、20~30坪の書店コーナーを設け、約6000タイトルの本・雑誌を取り扱う。
立ち上げの意図についてローソンエンタテインメントカンパニーマーチャンダイザーの河本純季氏は「おもに2つの理由がある」と説明する。まず、1点目として地域に親しまれる、20~30坪程度の小~中規模の書店の減少が挙げられるという。
ローソンはそれを好機と捉え、自治体に書店のない地域など「書店空白地」への出店を進めることになった。「書店のみでは経営が成立しなくても、コンビニと併設であれば、チャンスがあるのではないかと考えた」(河本氏)。
2点目の理由として河本氏は「書店を併設することで、本来設定していた商圏よりも広い地域からの来客が見込めるほか、コンビニ商品の合わせ買いも期待できる」と相乗効果による売上アップを見込んでいることを説明した。
コンビニ併設であることの強みは、24時間営業であることだという。深夜帯も営業していることから、仕事からの帰宅時間が遅くなったビジネスマンなどの書籍購買につながり、機会損失が防げるほか、コミックをいち早く購入したいと希望するお客のニーズに応えることもできる。
導入店舗では、書籍・雑誌カテゴリーの合計売上高が導入前に比べて平均で約20倍となり、店舗単体の売上も同等かそれ以上の伸長率が見られているという。
ビジネスモデルは「スリーエフ」のノウハウを踏襲
書店併設型店舗のビジネスモデルは、「スリーエフ」のノウハウを引き継いだ。ローソンとスリーエフ(神奈川県/山口浩志社長)は2016年に合弁会社のエル・ティー・エフ(同)を設立し、ダブルブランド店舗の「ローソン・スリーエフ」を展開するなど協業関係にある。このスリーエフは約30年前から書店併設モデルを運営しており、「コンビニ併設書店における売れ筋商品や、オペレーションを共有していただいた」(ローソンエンタテインメントカンパニーシニアマーチャンダイザー平野彰宏氏)。
「LAWSONマチの本屋さん」では、売上高構成比の高いコミックを多く品揃えするほか、コンビニのおもな客層である40~50代に向けた定期誌を強化している。加えて、「書店で実際に絵本を手に取って選びたいが、近くに書店がなかったという子連れのお客さまから好評をいただいていている」(河本氏)と、絵本も品揃えする。ほかにもPontaカードによって得られた情報を基に地域の客層に合わせた品揃えを意識しているという。
また、各店にはジャンルを絞らず選書できる棚を設け、地域に根差した「ご当地本」を並べているのも大きな特徴だ。たとえば「日立駅前店」(茨城県日立市)では日立製作所に関する書籍や「碧南相生町三丁目店」(愛知県碧南市)では、名古屋鉄道や周辺地域の歴史について記した書籍を置いており、お客から支持を得ている。
今後も書店空白地への出店を進める
書店併設型店舗の今後については、変わらず書店が少ない地域に出店し、コンビニに20~30坪の書店売場を併設した店舗を展開していくとした。そのうえで、「たとえば店舗の広さが確保できない場合でも、出店を断念しないような工夫をしていく」(河本氏)とした。実際に2月22日には、増床改築工事をせず、店内のレイアウト変更によって従来の4分の1程度の広さの書店スペースを確保した「石巻相野谷店」(宮城県石巻市)をオープンしている。
また、エンターテインメント商品にも注力していく。ローソンはブックレットにキャラクターグッズが入った「開発品」を多く取り扱いしている。売上構成比が高いコミックと、そのキャラクターを使用した開発品や一番くじなどとシナジーを創出し、さらなる売上向上をめざす考えだ。
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