スーパーマーケットの次世代顧客は「ヤングファミリー」か、「MZ世代」か
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年4月25日 20時55分
多くのスーパーマーケットに共通する課題の1つが、次世代の顧客獲得です。スーパーマーケットは概して団塊とそのジュニア世代の子育てと共に成長してきた業態であり、主要客層の年齢は持ち上がってきました。先を見越せば、若い世代の獲得が欠かせません。2020年~30年代の食の消費を担う、現在の20~30代をいかに獲得するか。彼らをMZ世代(ミレニアム世代とZ世代を合わせた言葉)とも、ヤングファミリー層とも呼びながら、需要獲得の試みが続いています。しかし、ヤングファミリーとMZ世代を次世代顧客として一括りにしてよいものでしょうか? ことは顧客ターゲットの問題なので、厳密に考える必要がありそうです。
![ヤオコーは次世代顧客としてヤングファミリーの獲得を進める](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2023/04/01.jpeg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=9d3f128e50f61ca0a2957c26af062cd8)
ヤングファミリーは世代なのか?
そもそもヤングファミリーは、世代を表す言葉ではないはずです。ヤングファミリー、より一般的な表現として「子育て世代」という言い方もありますが、これは「子育て世帯」と言うべきでしょう。日本人の初婚年齢は男女合わせた平均で30才前後ですから、50代で子育て中の人はざらである一方、40代半ばで子育てを終える人もいるはずです。夫婦で10も20も年齢差がある場合もあり、同じ世帯でも同世代とは限りません。子供のいない夫婦も多く、独身だって珍しくありません。子育ては「世帯」でするものであって、子育てをする特定の「世代」があるわけではありません。
スーパーマーケットで使われるヤングファミリーとは、子育て中の「世帯」を指すはずです。特定の世代を指すのではなく、子育て中というライフスタイルでくくったかたまりです。
子育て中の世帯には、その夫婦が何才であろうと、子供の年齢によって購入するものには似た傾向があるはずです。子供の数によって差は出るでしょうが、子供のいない世帯や単身世帯との違いはもっと大きいでしょう。
子育て世帯であるヤングファミリーといえば、業界ではヤオコーが戦略的なターゲットと位置付けていることで知られています。そのレンジは「49才以下」と設定されており、「49才がヤングか?」 という話に時折なるわけですが、これは会員カードの所有者が大人だからそのような設定になるのでしょう。ヤング=子供を指すのであって、そんなヤングがいる世帯だからヤングファミリーと考えた方が自然です。
スーパーマーケットが「ヤングファミリーの獲得を目指す」という場合、それは子育て世帯を獲得するという意味になります。前述のヤオコーも、川野澄人社長は以前の会見で「スーパーマーケットにエントリーするのは結婚、子育てのタイミング」と語っていました。ヤングファミリーは、ライフスタイル軸のターゲティングであることが分かります。
子育ても単身も。MZ世代を狙うイオン
![イオングループはMZ世代をターゲットにした施策を強化している](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2023/04/02.jpeg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=fb577479e8df41bf766db4ec6197af81)
一方、イオングループは、24年2月期に入ってからのいくつかの会見で、MZ世代へのフォーカスを鮮明にしています。これはジェネレーション軸のターゲティングです。
その必然性は、人口動態や世帯構造の変化から導き出されています。団塊世代が子育て中だった1985年、全世帯に占めるファミリー世帯(夫婦と子供)の割合は58.3%、単身世帯は15%でした。2020年にはファミリー世帯は41%に低下、単身世帯は34%に倍増しています。2035年になるとファミリー39%、単身35%と拮抗するとの予測をもとに、単身世帯をファミリー世帯と同等のターゲットと位置付けます。
そして20~30年代の食市場を支えるMZ世代ですが、現状の初婚年齢の平均値を踏まえれば、今のところ半数以上は独身ということになるでしょう。子育て中ではない世帯に向けても商品・サービスの提案を強める、それがイオンの戦略のようです。
象徴する商品の1つが、明らかにMZ世代を狙ったテレビCMを放映している「トップバリュ もぐもぐ味わうスープ」です。個食のレトルトスープで本体価格298~498円と設定、子供とシェアする商品ではありません。
イオントップバリュの土谷美津子社長は商品戦略に関する今春の会見で、「かつてのようにマスのターゲットは存在しません。求められる商品はお客さまによって異なります。ある人には必要でも、別の人には全く不要という世の中です。その価値観別に、スモールマスといわれるニーズを深掘りしていきます」と語っていました。
今夏スタートするオンラインマーケット「グリーンビーンズ」においても、そのサービス設計にはデジタルネイティブである20~30代にとっての利便性を高める意図があります。また、4月に発売した低利用魚を原材料とする「トップバリュ モッタイナイお魚シリーズ」は、水産資源の活用の幅を広げるという意図と同時に、洋風フレーバー・失敗しない調理・冷凍によるストック性と、MZ世代に好まれる要素を盛り込んだと言います。
イオンのようにMZ世代をターゲットにする場合と、ヤオコーのようにヤングファミリーを対象とする場合では、同じ次世代顧客でもターゲティングの軸が違います。一方は「ジェネレーション」であり、もう一方は子育てという「ライフスタイル」にフォーカスしています。
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