ゴルフウエアに本格参入のワークマン 上方修正で見据えるゴルフ1000億円市場での未来像
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年5月18日 20時55分
ワークマン(群馬県/小濱英之社長)がゴルフウエア市場でも急拡大中だ。2022年春夏に、パンツ、手袋などからスタートした同社のゴルフ領域。2023年春夏では、クラブ以外は揃う、ゴルフウエアではほぼフルライナップで本格参入を果たした。反響は大きく、早くも計画を10億円上積み。2024年度の売上見込みを40億円に上方修正した。創業以来、徹底する「低価格・高機能」で、ゴルフ領域でも旋風を巻き起こす同社は、どこまで躍進を続けるのかーー。
「低価格・高機能」で、ユーザーも待望のゴルフ領域へ
製品価格は市場平均の3分の1。これまでに、アウトドア、スポーツアパレルなどでも、高い機能性を誇りながら、低価格を実現し、先行メーカーにインパクトを与えてきたワークマン。ゴルフウエアへの本格参入でも、同路線はしっかりと踏襲し、1000億超といわれる市場に切り込んだ。
「実は企画当初、『本当に売れるのか?』との懐疑的な声はあった」と同社役員待遇製品開発部第2部長の北村武士氏は、ゴルフ領域参入前の意外な事実を明かした。
高機能なワークマンのウエアをゴルフウエア代わりに活用するゴルファーはすでに一定数存在。需要は見込まれていただけに、成功は固いようにみえていた。それでも社内で厳しい声が挙がったのは、本格参入となれば、中途半端な製品では受け入れられないという、同社の機能性への並々ならないこだわりがあったということだろう。
しかし、2022年に第一弾として投入したゴルフ関連製品は想定以上の高い評価を受け、不安は杞憂に終わる。期待以上の出来栄えに、待ち望んでいたユーザーも飛びつき、同社の高機能・低価格が改めて、新領域でもインパクトを残す結果となった。
コストがかさみがちなゴルフ関連の支出をセーブ
どんな分野も例外はなく、「高機能・低価格」を徹底する同社。とりわけ費用が嵩みがちなゴルフ関連アイテムは、同社の真骨頂を発揮しやすい領域といえる。
フェアウェイを長時間移動することで、日差しや寒冷、発汗、防寒などへの高い機能性が求められるだけでなく、スイング時には生地への負荷も大きく、そうしたハードな動きへの機能性も、ゴルフウエアには求められる。シューズもしかりだ。
作業着メーカーとして蓄積したノウハウをゴルフに最適化
後発メーカーにとって、ゴルフウエアへの参入は決して容易ではない。それでもワークマンには作業着メーカーとして培った、過酷な環境に耐えうるアパレル製造のノウハウが豊富に蓄積されている。
加えて、昨今はワークマンプラスの立ち上げで、デザイン力も飛躍的に向上。ゴルフウエアに不可欠なファッション性、デザイン性にも十分対応できる。それでいて、価格は市場平均の3割程度となれば、売れない要素を考える方が困難だ。
「やはり価格面が訴求ポイントとして非常に大きいと思っている。ワークマンはもともと低価格で高機能なウエアをつくってきた下地があり、それをちょっとゴルフ向けに振っていったら、そういうものを求めているお客さんが非常に多くいらっしゃった。そこがうまく噛み合ったのだろう」と北村氏は分析する。
ゴルフボールまで含む、本格参入にふさわしい充実のラインナップ
この春夏アイテムの充実度は、同社の本気モードが全開だ。ポロシャツに始まり、パンツ、グローブ、バッグ、ベルト、ボールまで、クラブ以外は揃う充実のラインナップ。2022年の3アイテムから一気に15アイテムにまで拡充している。同社のワークパンツなどをゴルフウエアに代用していたユーザーも少なからず存在していたが、そうしたニーズに「満額回答」するような力の入りようだ。
アパレルには「動きFIT by.3D」による3DCADシステムを活用。スウィング時にどの部位に負荷がかかるかをシミュレーションし、服のつっぱりやハリを最大限に軽減。快適にスイングできるパターンを採用し、プレーのしやすさも踏まえた着心地を追求している。
作業着製造で培った機能性のノウハウを、ゴルファーにも受け入れてもらえる仕様に転換すべく、ゴルフ部門のために起用したアンバサダー「NAOYUKI」氏の意見を取り入れながら何度も試行錯誤。ゴルフ領域でも「ワークマン基準」をクリアする品質に到達したものだけが、市場に送り出されている。
2022春夏に発表した「2150耐久撥水ライトゴルフパンツ」は発売開始7日間だけで1万点を販売。発売後1か月では2万点を販売した。
2023春夏から新発売の「2158ストレッチゴルフパンツ」は1月中旬から4月中旬で4万本の販売。2023春夏新製品のパンツとしては№1の販売数で、ワークマン全パンツ製品の中でもトップクラスを誇るなど、同社のゴルフウエアを待ち望むユーザーがいかに多かったかを数字も示している。
ゴルフに限定せず、どんなシーンにも溶け込めるデザインに
ゴルフ分野でも爆発的なスタート切ったワークマンだが、製品づくりにおいてはさらに上に目を向ける。「ワークマンのゴルフウエアというところで、『ゴルフにしか着ていけないんじゃないの?』という印象をお持ちの方もいるかもしれない。我々としては、ゴルフはもちろん、カジュアルにも使えるというところを目指したい。例えばゴルフ場まで車で行く。その途中で買い物をしたいとか、そういうシーンでも溶け込めるようなデザインにもこだわっていきたい」と製品開発部第2部 スポーツ&カジュアル担当 チーフバイヤーの半田峻也は、機能性に留まらない付加価値へのこだわりを明かす。
1000億円超の市場をさらに拡大することで見据える未来
ウエア、グローブ、シューズを合わせた市場規模が1000億円を超えるともいわれるゴルフ関連市場。本格参入直後に2024年度の見込みを10億円上積みし、40億円に上方修正するなど、末恐ろしいロケットスタートで、またしても大きなインパクトを残した同社。
「機能性アパレル」を強みに巨人・ユニクロに迫る同社は、常にチャンレンジを続けており、それが成長の原動力ともなっている。だからこそ、ゴルフウェア本格参入の目線の先に見据える未来もダイナミックだ。
「いい商品を安く製造していくことでゴルフ人口が増えていくことを期待している。そうなれば少ないパイの奪い合いにもならないし、業界にとっても、お客さんにとってもウィンウィンになる」と半田氏。
ゴルフ関連の総支出をセーブし、人口増やし業界活性化へ
実際、同社でウエア、グローブ、シューズ、バッグまで買い揃えても2万円弱に収まる。ラウンドにかかる費用は仕方がないとしても、関連コストを圧縮できれば、ラウンドを回る回数を増やすことにもつながる。
そうやって「コト消費」に支出が回れば、ゴルフ業界全体が勢いづく。これまでゴルフに縁のなかった新規ユーザーの増加も期待できる。
常にユーザーの期待を上回り、既存客の満足度向上を果たしつつ、新規顧客も開拓し続けるワークマン。もはやその存在感は、関わる業界の発展を左右するほどに大きくなりつつある。
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