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小売業とメーカー、個人 それぞれに適したライブコマースのやり方とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年6月8日 20時55分

Mongkolchon Akesin/istock

前回の記事では、ライブコマース自体の大まかな分類とその使い分け方についてご紹介しました。今回は、大きく3つに区分されるライブコマースのプレイヤーという視点から、それぞれ表現すべき情報の相性についてご紹介しましょう。

Mongkolchon Akesin/istock
Mongkolchon Akesin/istock

ライブコマースプレイヤーの3つの区分

 主だったライブコマースのプレイヤーは、小売・メーカー・個人の3つに区分することができます。それぞれの区分ごとにライブコマースで獲得できるメリットと表現すべき内容が異なるため、ライブコマースを始める前にしっかりとその内容を把握し、相性を理解してから活用するようにしましょう。

①小売とライブコマース

 ライブコマースは物販と“エンタメ”がミックスされた業態で、ライブそのものの楽しさと物を買うという実利の部分が結びつくため、小売はライブコマースに非常に向いている業種と言えます。

 ここで言う“エンタメ”とは、魅力的な“人”か“場所”が重要な要素になります。実際の事例では、ハワイで行われたライブ配信が『ハワイに行く』という体験をバーチャルで再現することでエンタメ要素に繋がり大変人気でした。ハワイでのライブが難しくても、例えば食材を栽培している畑や、小売の実店舗などもエンタメ要素として活用することができます。

 逆によくあるオフィスビルの会議室でのライブ配信では、場所としてのエンタメ感のメリットを得られないため、より魅力的な“人”を用意するか、コンテンツを充実させる必要があるなど、ライブコマースを成功させるためのハードルが高くなってしまいます。

 特にライブコマースの演者を育成することは業界全体での課題となっているため、有利に働く“場所”を用意する方が成功確率も高まります。

図表1小売ライブコマースの特性
図表1小売ライブコマースの特性

 なかでも小売店舗からの配信では、わざわざ時間をかけてお店に行くことなく、お店の雰囲気を体験しながら買い物ができるというバーチャルな体験が可能で、ライブコマースにも適しています。小売企業の場合、そういう場所をもともと持っていることが多く、例えばハンズ(HANDS)などは生活雑貨やDIY商品など多くのラインナップが充実しており、ネット上でバイヤーや専門家がそれぞれ商品説明を行うことで、店舗で接客を受けるのと同じ、もしくはそれ以上の体験を実現することができます。家にいながら店員よりもプロフェッショナルな説明を聞くことができるため、WEB接客としてライブコマースに成功している1つの例と言えるでしょう。

 小売とライブコマースの相性が良い点はもう1つあります。基本的にはライブを見た人がネットで購入することを想定していますが、その一方で「このお店が面白そうだから」という理由で実店舗に足を運ぶきっかけにも繋がります。OMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)と言われるような、お客様がネットや店舗での購入を自由に選べるという世界観を、ライブコマースを通じて作り上げることが可能になるのです。

小売ライブコマース3つの特徴
図表2小売ライブコマース3つの特徴


②メーカーとライブコマース

 メーカーがライブコマースを行う大きなメリットとして、商品のこだわりや特徴などをWEB上で時間をかけてしっかり丁寧に説明できるという点が挙げられます。

 ECページやブランドページを作る上で、こだわりの商品であればあるほどその魅力を十分に伝えるためには多くの情報を網羅する必要があります。しかし、文章ベースであまりにも長い説明を羅列してしまうと、どうしてもパッと見た瞬間の情報量の多さから一定数の離脱を招いてしまいます。しかし、ライブコマースであれば30分~1時間といった長時間でもエンタメを織り交ぜることでしっかりと語ることができるため、伝えられる情報量は圧倒的にライブコマースの方が充実させることができます。

図3メーカーライブコマースの特徴
図兵3メーカーライブコマースの特徴

 また、商品を作った開発者や研究者などが一緒に出演して、専門家として商品開発に苦労したポイントなどを伝えることも有効です。例えば、成分のこだわりや競合商品を見ながらの差別化ポイントなどを伝えられると、従来のWEB接客を超えた効果的な商品説明も可能になります。メーカーにとってはしっかりと商品説明を行えるブランディングの場としてライブコマースを活用することができるのです。

 このように、小売やメーカーは芸能人やインフルエンサーのような『集客力のある人』に頼らずとも、『きちんと説明ができる人』さえいれば、コンテンツ次第でライブコマースをビジネスとして価値あるものにすることが可能なのです。

③個人プレイヤーとライブコマース

 個人のライブコマースプレイヤーは、その人にファンが付いていることが多いため、ファンが応援するかたちで買ってくれるケースが非常に多く、YouTuberやインフルエンサーの方がライブコマースを行うのは、お客様との関係性が深い点からも有利に働きます。

 個人の場合、広告収入や企業案件、投げ銭などの収益源もありますが、ここに物販という課金モデルが1つ増えるため、フォロワーが多い方にとっては大きな収益に繋げることも可能です。ただし、フォロワーが少ないとスタートが非常に厳しいため、集客の心配がないPeace You Liveなどの専用アプリで始めるのが初心者の方にはおすすめです。

 同じように、現状でフォロワーが少ないメーカーや小売企業にとっては、フォロワーの多いインフルエンサーを活用するか、集客力のある専門アプリでライブコマースを行うことで、販売だけでなく商品の認知向上やブランディングなどに繋げることも可能です。

 このように、小売であれば場所という強みを生かしたWEB接客ツールとして、メーカーであれば強力なブランディングの場として、個人であればファンからの応援購入として活用することでライブコマースの強みを引き出すことができます。ただし、もしこの相性を間違えた配信をしてしまうと、お客様とのコミュニケーションに齟齬が生じてしまうため、しっかりと意識し、分けて考えることが重要です。

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