50周年の日高屋が見据える次なる成長 乗降客3万人前後の中規模駅前に機会を見出す理由
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年5月30日 20時59分
「熱烈中華食堂日髙屋」などを展開するハイデイ日高はさきごろ、2023年2月期の決算を発表した。売上高は381億6800万円(対前期比44.6%増)、営業利益は6億1500万円(前年同期営業損失35億2300万円)、経常利益24億7000万円(対前期比4.5%減)、当期純利益は15億1900万円(同3.8%減)だった。コロナ禍が収束フェーズに入ったことに加え、それに伴う営業時間の正常化や値上げ、店舗運営の効率化などの要素も後押しし、営業黒字を達成。ポストコロナを見据えての完全復調へ弾みのつく結果となった。2024年2月期は売上高440億円、営業利益30億円、経常利益29億5000万円、当期純利益18億5000万円を見込む。
外食産業の歴史とリンクしながら歩んだ50年
23年2月に50周年を迎えた同社。その歴史は、日本における外食産業の勃興とそのままリンクする。自宅での食事が当たり前だった時代から、「外食」という概念が広がり始めたのが1970年代。経済成長の後押しもあり、ちょっとしたぜいたくとして、ファミレスなどの飲食チェーンで家族揃って外食が一般的な光景となった。
その当時、創業者で会長の神田正氏は、わずか5坪の小さなラーメン屋の厨房で客においしいラーメンを提供しようと無我夢中で働いていた。そのころを振り返り、「小さなラーメン屋がチェーン展開してここまで発展するとは予想もしていなかった」と神田会長。それでも、「当時いわゆるサラリーマンが弁当を持たずに出勤する姿を散見し、外食産業の可能性を感じた」とも明かし、天性のビジネスセンスの一端を示している。
50年以上続く外食チェーンとなるとほんの一握りだ。そうしたチェーンは、それぞれが築き上げた独自のノウハウや思想、強みを持っている。同社のそれは、特に人を大切にする理念がその根源にある。
半年で約10%増の値上げも、中華そば税込み390円は死守
100周年をも見据えたこれからの50年に向け、青野敬成社長は「この仕事は結局、人なくしては成り立たない、だからこそこれからも人が大事というのがハイデイ日高のモットー。この会社で働こうと思って来てくれた従業員が希望や情熱を持って働ける会社にしていきたい」と力説する。
実際、コロナ禍の頑張りをねぎらうように、正社員には特別感謝金を支給 (2月下旬に支給)とベースアップを実現 (1万3000〜1万5000円)。パート・アルバイト社員の時給もアップし、中途採用者へも条件を満たせば50万円を支給するなど、手厚い待遇で応えている。
昨今の飲食業界は原材料費などのコスト増大が大きな課題。それでも人への投資を惜しまない。それが同社の強みであり、高いサービス力の源泉となっていることは間違いない。
環境の変化への対応力も長く愛され続ける大きな要素の一つだ。象徴的なのは、20年キープし続けている「中華そば」税込み390円。この環境下では値上げもやむなしだが、あえて値段を据え置いた。ただし、それ以外のメニューを値上げ(昨年8月に5%増、今年3月に5%増、計約10%増の価格改定)し、セット割を活用することなどで利用者の負担を最小限に。中華そば、餃子6個、生ビール一杯を1000円以内で満足して欲しいとの思いがあり、セット割が入って税込み990円で提供している。また、一部外国産を使用していた野菜を国産化し、餃子、野菜たっぷりタンメンなどに使用する野菜類をすべて国産化するなど看板商品のブラッシュアップも行い、単なる値上げではなく価値を高めることにも腐心している。
苦し紛れの値上げではなく、客を裏切らないためにどうすればいいか。常にそこを最優先に、戦略を考え抜いているからこそ、値上げしても客離れにはつながらない。
また、キャッシュレス決済やテイクアウトへの対応等もタイムリーに実施。新たな潮流にも変に抗わず、柔軟に適応していくことで、サービス力や利便性の向上につなげ、不用意な客の流出も最小限に抑えている。
めざすは乗降客3万人程度の駅前…そのわけは
もちろん、今後のさらなる成長を見据えれば、各テーマにおけるさらなる効率化や最大化は避けられない。数年前にサラリーマンのニーズをわしづかみにしたちょい飲みも、コロナ禍の打撃を受け、人流が変貌、今後どれだけ回復するかは未知数な状況。テレワークの実施状況も読みづらく、通勤が完全復活するかさえ不透明だ。
そうしたなかで、店舗出退店については、引き続き新規出店を進めながら、スクラップアンドビルドにより、利益確保が困難な業績不振店の退店を進める。計画では、24年2月期通期で出店19店舗(23年2月期は15店舗、退店16・FC化1店舗)を予定。際立つのは、乗降客数3万人程度と比較的乗降客数の少ない駅前への出店だ。賃料が抑えられ、競合が少ないブルーオーシャンであるだけでなく、従来のオフィス立地や繁華街立地から、より消費者の自宅に近い駅前立地へと飲食ニーズが分散しているともいわれているなかで、コロナ後の新たな勝ちパターンづくりを進める。
また、コロナ中に獲得したテイクアウト需要についても、コロナ前比で2.5倍に成長しており、さらなる需要獲得を進める。テイクアウト専用メニューの拡大や自動販売機用に開発した冷凍食品を店頭販売にも拡大するなどの取り組みだ。
決算に合わせて発表した、26年2月期を最終年度とする中期経営計画では「社会インフラとして地域活性化に貢献」と題し、<駅前に「日高屋」がある、そんな当たり前の風景を夢見て、お客様においしい料理を低価格で提供し、ハッピーな一日(ハイデイ)を過ごしていただく、そして、このことを通じて、会社の発展、従業員の幸せと社会への貢献を実現します>と同社の目指すべき方向性を打ち出している。
具体的には、まずは2026年2月期までに、売上高480億円、500店舗、営業利益率7.5%、ROE8.5%。そこを目標にコロナ禍のダメージを完全修復し、日高屋に続く業態開発なども進めながら、従業員エンゲージメント向上にも努め、さらなる成長をめざす。
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