アメリカ小売業トップ10社ランキングに見る、大手企業の最新動向!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年6月7日 20時58分
長く続いたコロナ禍もついに終焉を迎え、世界的にコロナ前の日常を取り戻しつつある今日。一方で小売企業は、コロナ特需の反動や激しいインフレといった新たな逆風下にさらされている。そうしたなかで米大手小売企業はどのような成長戦略を描いているのか。ユーロモニターによる最新販売額ランキングに入った上位10社にフォーカスして考察する。※1ドル=135円換算 販売額はユーロモニターのデータをもとに算出
2022年の小売販売総額は約554兆円!
2022年の米国小売(自動車、ガソリン等の燃料を除く)の市場規模は、対前年比5.3%増の4兆1047億ドル(約554兆円)となっており、17年から22年までの過去5年間の年平均成長率は6.0%で推移している。
販売額ランキングのうち、まずトップ5に入ったのはウォルマート(Walmart)、アマゾン(Amazon.com)、CVSヘルス(CVS health)、クローガー(Kroger)、コストコ・ホールセール(Costco Wholesale)。昨年と比較して上位4社の顔ぶれに変化はないが、コストコが昨年の6位から順位を1つ上げトップ5に食い込んだ。
6~10位は、ターゲット(Target)、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(Walgreens Boots Alliance)、アップル(Apple)、ホームデポ(Home Depot)、アルバートソンズ(Albertsons)の順。多少の順位変動はあったが、ラインアップは昨年と変わりはない。
上位10社の中ではウォルグリーンのみが昨年から販売額を減少させており、順位も5位から7位にダウンしている。ただし概して、上位企業は前年と比較しても、過去5年間の推移を見ても、堅調な成長を示している。
テクノロジー投資加速するウォルマート、リアル店舗の”選択と集中”進めるアマゾン
今回もトップを維持した世界最大の小売業であるウォルマート。最新の22年の販売額4911億ドルで、前年から7.1%増、コロナ前の17年からの過去5年間で見ても6.0%増と力強い成長を示した。22年度末時点の店舗数は店舗数は米国と海外でそれぞれ約5300店舗となっており、同社は新規出店よりも既存店活性化に注力する姿勢を見せている。
実店舗以上に投資を強化しているのが、EC、テクノロジー、サプライチェーンの領域だ。AIやロボティクスなどによる”自動化”の取り組みを軸としたサプライチェーンの効率化を進めるほか、ECシステムや即時配送インフラ、デジタル広告を外販することで新たな収益の柱を築きつつある。
ここ数年、このウォルマートの牙城に迫りつつあるのが、ECの巨人・アマゾンだ。コロナ禍での巣ごもり需要をとらえて大きな成長を示した同社だが、最新の販売額の伸び率はその反動を受けやや鈍化。最新決算(22年度)ではおよそ10年ぶりに最終赤字を計上するなど振るわない。
そうしたなかで同社はさまざまな事業領域でリストラを進めており、なかでも注目を集めているのがリアル店舗の”選択と集中”だ。昨年初頭にはアマゾンブックス(Amazon Books)、アマゾン4スター(Amazon 4-star)、ポップアップを閉店し、アマゾンフレッシュストア(Amazon Fresh Store)、アマゾンゴー(Amazon Go)、アマゾンスタイル(Amazon Style)の3つにほぼ集約している。
他方、22年には初期医療サービスを提供するワンメディカル(One Medical)を買収したことで、約200カ所のクリニックを手中に収めている。リアル店舗という文脈でも、アマゾン全体の経営戦略で見ても、ヘルスケア領域への進出は特筆すべき動きである。
EC投資を加速させるクローガー インフレ下でコストコは絶好調
食品スーパー(SM)としては米国最大手の規模を誇る4位のクローガーは、ECに係る物流インフラの強化を進めている。21年6月にネットスーパー専 業の英オカドグループ( Ocado Group)と提携、同社が有する最新技術を用いたEC専用の大型物流施設「カスタマー・フルフィルメントセンター」(以下、CFC)を稼働させている。CFCの数は徐々に増えており、それと並行して都市圏を中心に小型CFCを設置する「ハブ&スポーク戦略」により、配送スピードの向上を実現している。
5位コストコの最新販売額は前年から12.2%増と上位企業の中でもとくに好調だ。年会費という初期費用は必要になるものの、インフレ下で価格の安さが支持を集めている。その傾向はホールセラー業態全体に共通しており、ウォルマート傘下の「サムズクラブ(Sam’s Club)」の業績も好調に推移している。
6位のターゲットも近年成長著しい小売企業の1つだ。同社は近年、都市型小型店フォーマットの開発によって都市圏の顧客の取り込みを図る一方、従来の大型店よりもさらに大きな「超大型店フォーマット」も開発。品揃えの拡大と店内フルフィルメント機能の向上を図ったもので、新規出店や既存店改装を介して、同フォーマットへの転換を進める考えである。また、「アルタ・ビューティ」「アップル」など外部の小売ブランドをショップ・イン・ショップのかたちで店内に誘致し、集客力を高めている。
クローガーによるアルバートソンズ買収の成否はいかに
このほかトップ10ランキングにおいて注目したいのが、クローガーによる10位アルバートソンズ買収の動きだ。クローガーは昨年10月にアルバートソンズの買収計画を発表。買収総額は200億ドル超に上る超大型M&A(合併・買収)案件で、業界内外の注目を集めた。
ただ、米連邦取引委員会(FTC)による調査が行われているほか、今年5月には双方の従業員の多くが加盟する米SM労働組合が合併に反対を表明するなど買収実現は不透明な情勢だ。
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