ファッションロスをなくせ!アウトレットサイト「スマセル」、在庫完売させる仕組みとは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年7月20日 20時55分
世界で年間200億弱の洋服が捨てられているという「ファッションロス」。アパレル業界の課題であるこのファッションロスを解消し、SDGsにも貢献できるアウトレットサイト『SMASELL(スマセル)』に注目が集まっている。立ち上げの背景やサイトの特徴、今後の展望について、運営元のウィファブリック(大阪府)代表取締役である福屋剛氏に話を聞いた。
ファッションロス課題の顕在化と、SDGsの影響を受けて成長
これまで有名ブランドは、自社商品を大幅に値下げして販売するとブランド価値を毀損すると考え、売れ残った洋服を廃棄してきた。しかし、2018年にイギリスで有名ブランドの大量廃棄が明るみに出ると、ユーザーが不買活動をするまでに発展。それ以降、ファッションロスはフードロス問題と同様に広く認識され、アパレル企業は商習慣を考え直す岐路に立っている。
「ファッションロスの課題が明るみに出たことで、アパレル業界全体が商習慣を改めようという流れに入った。その後、SDGsの大きなうねりが世界的に起こったことがスマセル成長の大きな契機となった」とウィファブリック代表取締役の福屋剛氏は話す。
最大98%引きで商品を購入できるアウトレットサイト『スマセル』。直近1~2年で国内外の有名ブランドが数多く出店するようになったという。
「スマセルの特徴は商品ごとにCO2削減量が可視化されていること。削減量は洋服の組成や重さに応じて、廃棄処分をした際に排出されるCO2の量から算出している。さらに、1注文当たり10円が森林保全団体more trees(モア・トゥリーズ)に寄付される仕組み」(福屋氏)
こうした情報を企業はSDGsの取り組みとして投資家に開示できるため、売上を最大化できるだけでなく企業価値を高める効果がある。
在庫の一括買取も行う
スマセルの出店企業は、販売方法を3通りから選択できる。1つは購入された商品を企業が直接ユーザーに配送する方法、2つめはユーザーが購入した商品だけをスマセルに出荷し、スマセルが配送する方法、3つめは商品在庫をすべてスマセルに預けて完全に委託する方法だ。
さらに出店して在庫が残った場合、在庫の一括買取を依頼することも可能だ。企業側は、スマセルに出店することで、ブランド価値を守りながら廃棄せずに商品を完売できる。アパレル企業が販売しきれない在庫を、なぜスマセルは完売できるのだろうか。
「アウトレットに特化したモールなので大胆な値下げができ、単品だけでなくアソートボックスなどにして販売することもある。ブランド側は発売から1〜2年以上経過した商品を中心としてアウトレットとして出品しているので、結果的にスマセルにしか出品されていない商品もあり、ユーザーからも好まれている」(福屋氏)
オンライン購入の一般化、物価上昇がユーザー増加の後押し
スマセルのユーザー数は現在25万人で、25~40代の男女が中心だ。割安な商品を求めているだけでなく、自身の購入自体がCO2削減という社会課題の解決につながっている点も認識しているという。流通額はコロナ禍以降で10倍以上に伸びた。その要因を「オンライン購入をする人口が増えたこと、物価上昇により洋服の予算を節約したいユーザーが増えているのではないか」と福屋氏は分析する。
最近では、新品をアウトレット価格で販売するだけでなく、古着の回収や販売も行っている。出店ブランドの実店舗に古着の回収ボックスを設置し、一律料金での買い取っているのだ。
「洋服の廃棄の半分はアパレル企業、残りの半分は家庭から出ている。ファッションロスの課題を解決するなら、古着の課題にも着手するべきだと考えた。古着を出したユーザーには、ブランド側から買い物に利用できる300~500円ほどのクーポンを渡している」(同)
有名ブランドの古着をスマセルが回収し販売することは、実はそのブランドの新たなファン獲得にもつながる。新品ではなかなか買えない憧れのブランドの古着を購入した若いユーザーが、次は新品を購入したいと考えるきっかけになる。その点がアパレルブランドからも評価されている。
グローバルへの進出も視野に
企業側からもユーザー側からも支持されているスマセルは、福屋氏自身の問題意識からスタートしている。
「繊維系の商社に10年ほど勤めていて、自分自身も大量に作って、残ったら捨てることもあった。しかし、洋服の生産量の約半数が一度も袖を通されないまま捨てられるという現状を知った。捨てられている洋服は欲しいと思う人に出会えなかっただけではないか。必要とする人たちに届けるオンラインのプラットフォームを作ろうと考えた」
ウィファブリックは現在20名前後の少数精鋭の組織だ。開発やデザイン、グラフィックデザイナー、営業兼MD、マーケター、保守などすべてを内製化している。今後の展望について福屋氏に聞いた。
「さらに認知度を上げて、25年には250万人ユーザーを目指している。これまでは日本国内のファッションロス課題に取り組んできたが、グローバルにも進出したい。ファッションの先進国は日本と同様の課題を抱える一方、開発途上国では衣服が不足している。一極集中している富や資源をグローバルにシェアしていきたい」
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