「手間のかかること」が差別化に!? オオゼキの新店「調布店」の売場をレポート
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年7月23日 20時55分
オオゼキ(東京都/石原坂潤社長)は2023年4月1日、調布市内2店舗目となる「オオゼキ調布店」をオープンした。地元Webメディアによると1、2階合わせての売場面積は約230坪と、一般的な食品スーパー店舗と比べるとやや小ぶりな店舗となる。ちなみに、調布市内にあるもう1つの「つつじが丘店」も4月8日にリニューアルしており、エリア全体としてのオオゼキの存在感が高まりつつある。本稿前編では、オオゼキ調布店の青果売場について解説した。後編となる今回は総菜、精肉、鮮魚売場を見ていきたい。
精肉は価格訴求から高価格帯を幅広く品揃え
オオゼキ調布店の総菜売場はレジ前の一角と、青果コーナーからつながる右店角にある「梅丘すしの美登利」の2つに分かれている。ともにオオゼキの自社製造ではなく、外注先が店内で加工しているスタイルである。
レジ前は冷蔵ケース合計約30尺にお弁当の特設コーナーが加わる。調査日は、父の日を意識した「鴨のパストラミ」などがあったものの、全体的に定番の商品構成が中心で、凝ったメニューやトレンドを意識したアイテムは見かけなかった。「美登利」は売場が約6尺と狭く、詰め込むようなかたちで商品が陳列されていたのが印象的だった。寿司や丼、巻物など30アイテム近くあり、来店客の支持は高いとみられる。
2階のエスカレーターを上がると、正面に精肉の平台があるのが目に飛び込んでくる。トップは冷凍の大容量パックで、その奥の冷蔵ケースはハム・ソーセージなど加工肉コーナーとなっていた。青果と異なり、変化の少ないカテゴリーを売場のトップに持ってきているようだ。
その脇の平台には、ステーキや焼き肉用の牛肉を国産、輸入交えながら展開。調査日は父の日当日に松阪牛を販売するPOPが大々的に告知されていた。価格設定も700円前後から1000円前後を中心に5000~6000円する塊肉も並べるなど価格幅を広く取る品揃えで訴求し、客溜まりができていた。
定番の冷ケースでは、豚肉の種類が豊富で自社PBの「岩手純情豚」、「どんぐりの恵み豚」などのブランド肉や用途別などを高単価のアイテムから並べるかたちをとっていた。鶏肉は豚肉とは逆に低単価のアイテムから順に並べ、価格訴求を意識した売場づくりとなっていた。
品揃えに垣間見える「個店主義」
鮮魚は売場のトップはマグロの柵とお買い得の刺身アイテムを特設とし、目的買い、衝動買いの双方に合わせた展開となっていた。その隣の平台ではごちそうメニューをテーマとしたマグロの刺身、マグロのカマ、キャビア、毛ガニなど高単価アイテムがずらりと並ぶ。
そのほかも、丸魚や切り身を中心に魚種の多さが際立つ。一方で、刺身の定番コーナーは冷ケース約6尺に20アイテムをコンパクトにまとめて展開するなど、無理な拡販をせず、値下げや廃棄で利益率を下げないような工夫が感じられた。
精肉と鮮魚で注目したいのが、加工品や関連商材の使い方である。精肉では、加工品や関連商材の展開がみられなかったのに対して、鮮魚では鮭のフレークをはじめ、塩辛や珍味系、魚卵でも明太子が10アイテム以上を展開するカテゴリーが複数存在していた。個店主義を標榜するオオゼキならでは特徴がこの部分でも垣間見られる。
正社員比率70%でも高収益!
近年コスト増の問題が業界全体の課題になっている。オオゼキの正社員比率は約70%と業界屈指の高さだが、販管費率は21.0%、営業利益率は5.6%(2023年2月期)とコストコントロールができており、高収益を確保している。オオゼキ調布店を見る限り、オオゼキはこの流れを踏まえた取り組みを持続しているようである。むしろ、競合他店がコスト増で苦しみ、ローコストオペレーションをねらった省力化、効率化をめざすのであれば、さらにオオゼキの競争力が増す可能性が高いだろう。
店内加工での徹底、常に顧客の要望を受ける姿勢の訴求、また、前編で解説したようにオオゼキ調布店では試食販売も行うなど、オオゼキではあえて「手間のかかること」を明確に打ち出し、競合店との差別化を図ろうとしている。店内においても、商品の取り置きや取り扱いの要望サービスが売場に掲示されており、お店の特徴としてアピールされていた。顧客ニーズを細やかに汲み取りながら、自社の取り組みの循環を構築する、というのがオオゼキの基本戦略になっているようだ。
今回のオオゼキ調布店は2021年4月の「オオゼキ経堂駅前店」以来、約2年ぶりの出店であり、調布店オープンの翌月となる23年5月には東京都品川区に「オオゼキ戸越六丁目店」を新規出店している。今後の出店加速にも注目していきたい。
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