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国際認証「B Corp」コンサルと投資のシグマクシス・グループが取得の理由と意外な効果とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年8月16日 20時55分

シグマクシスグループ

昨今は環境への配慮なしでは企業としての価値は認められない。活動にお墨付きを与える認証制度も多数ある。そうした中、じわじわと認知度を高めているのが「B Corp」と呼ばれる国際認証制度だ。アウトドア用品の「パタゴニア」が取得していることはよく知られている。国内でも関心が高まっており、取得企業も増加している。日本の上場企業として初めて同制度を取得したシグマクシス・ホールディングス(東京都/太田寛代表取締役社長)。取得企業の多くがメーカーという中で、同社はコンサルティングと投資を生業としており、異彩を放つ。その目的や狙いはどこにあるのか。取得をけん引した同社のコンサルティング子会社シグマクシスの常務執行役員である齋藤立氏に聞いた。

国際的な認証制度「B Corp」とは

 「B Corp」は、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度。運営は米国の非営利団体の「B Lab」が行う。

  社会や環境に配慮する観点では、「フェアトレード認証」や「LEED認証」などがある。「B Corp」は、「企業のあり方」を認証するという点で、それらと一線を画す。具体的には、環境や社会に配慮した事業を行ったうえで、それらの透明性や説明責任などをクリアした企業に対し、認証が与えられる。

従業員の労務環境にもメスを

 「企業のあり方」に焦点をあてているため、認証試験では、従業員の有給休暇・病気休暇の年間日数や学びに対する経済的サポートの割合、管理職における女性比率なども確認される。つまり、環境に配慮する企業として、製造における脱炭素などだけでなく、それを実行する従業員の職場環境にまでメスを入れた本質的な環境対応をしているのかを同制度は問うている。

コンサルティングと投資の企業がなぜ環境配慮系の認証を取得したのか

 

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B Corp取得は国内企業9社目、国内上場企業としては初となる

 同社がなぜ、そこまで厳格な同制度を取得したのか。有志から始まったという同認証取得へのプロセスでは、会社から取得の意味を問う声も挙がったという。ゼロベースから同認証取得をけん引したシグマクシス 常務執行役員の齋藤立氏は、その経緯を次のように説明する。

 「当グループのサステナビリティについて、有志が集まって具体的な指標や取り組みについて検討していくうちに、グローバルスタンダードの中である種最も厳しい認証の一つ『B Corp』にトライして、われわれ自身の現状を評価するとともに、どうしたもっと進化できるかを考えてみようということになった

  上場会社でもあり、新しい試みでもあることから、経営陣も巻き込みながら、最終的には1年半をかけて取得したという

「社会課題の解決」と「進化」がキーワード

 ポイントは、「社会課題の解決」と「進化」というワードだ。同社の事業であるコンサルティングも投資も、企業がいかに儲けるかを指南する仕事。しかし、時代は大きく変わり、社会課題を無視しての成長は評価されなくなりつつある。そこで、経営課題を支援するにしても、さらなる「進化」が求められるーー。そこに、社会課題の解決にも積極的に取り組む同社がコミットするのはある意味では必然の流れだったといえる。

 もともと、同社はパーパスとして「美しい社会づくりに貢献すること」を掲げている。その言葉をストレートに捉えれば、未来にふさわしい価値提供をすることが同社の使命となる。そうした企業スタンスと照らし合わせても、「B Corp」は、同社と極めて高い親和性があった。

取得にメリットはあったのか

 あくまでも成長のためのワンアクション。齋藤氏は、特別にメリットは考えていなかったという。だが、結果的には取得したことで企業から関心を寄せられ、採用面でも好影響があると話す。なにより、「B Corp」の認知度の高まりと比例し、企業としての存在価値をより訴求しやすくなっている。

  「先端的な感覚のある会社が B Corp』を理解してくれていたり、実は取得したいと思っていたり。そういう会社さんとの連携ではパートナーとして選ばれるポイントの一つとなっている感触はある。投資家にしてもとくにグローバルでは社会的価値を出すような会社に投資したいという潮流が強くなっていると感じる」(齋藤氏)

 前述のように企業のあり方に焦点をあてた認証制度の「B Corp」。だからこそ、制度を認識する経営者にとっては、その価値が本質的なものだと理解している。言い換えれば、ごまかしの利かない、ホンモノの企業の証だと捉え、信用してくれる。

人材育成方針を新たに制定

シグマクシス 常務執行役員の齋藤立氏

 同社は取得後の20233月に人財育成方針を新たに制定した。社員は「人材」ではなく「人財」として、「社員の成長と価値創造が、組織の成長の源泉。多様な人財がモチベーション高く能力を発揮し、持続的に成長しながら、自分らしく、いきいきと価値創造に取り組める環境の実現を目指す」ことを宣言した。

 これはまさに「B Corp」取得による、会社の「進化」に他ならない。同社 C&C コミュニケーションの池田多恵氏は、次のように補足する。「われわれは知恵とネットワークから価値を創造し、対価をいただく仕事。そうなるとやはり人が全て。社員のパフォーマンス向上が会社のパフォーマンス向上につながる」

 「B Corp」取得のプロセスで、もともと根付いていた同社の顧客との向き合い方を整理し、磨き上げ、明文化。そうすることで、全社員、そして対外的にも、そうした理念をより浸透させやすくなったといえるだろう。

本物だからこそ大きくなる課題

 環境問題や社会課題に真剣に取り組む企業にとっては、数字では表せない相乗効果が期待できる「B Corp」。一方で、齋藤氏は「自分たちが取得しただけでは未来は創れない。同じ志を持つ企業がコラボレーションして、輪を広げていってこそ、意義が大きい。日々その課題が大きくなっているように感じる」と課題をあげる。それだけに、より多くの企業も巻き込んでいく推進力もより強く求められる。

 幸い、日本でもここ23年で取得企業が増加しており、今後数年で20社を超える勢いだ。

 単なるトレンドではなく、時代が求める地球が存続し続けるための必然ーー。経営課題の解決や、企業の変革をミッションとする企業が包括的なベネフィットをピュアに追求するという事実は、逆説的に、とってつけたような環境対策ではもはや生き残れない時代が到来したことを示しているともいえるのかもしれない。

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