新規事業続々!ナルミヤ・インターナショナルが自社開発するアパレル以外の子供用品とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年8月9日 20時59分
子供写真館の展開、自社ECサイトの「子供用品のポータルサイト化」など、子供服専門店大手のナルミヤ・インターナショナル(東京都/國京紘宇社長)は、次々と新規事業に向けた布石を打っている。海外進出も虎視眈々と狙う。その背景には、縮小する日本の子供服市場への危機感がある。國京紘宇新社長に、新規事業の現状や今後の取り組みについて、率直に語ってもらった。
余力のある今こそ、新規事業の種蒔きが必要
――ECについては、子供服市場では自社サイト「ナルミヤオンライン」の集客力が圧倒的に高いので、自社ブランドだけでなく、ライバルである他社ブランドも集積して、「子供用品の総合ECモールにしたい」と、石井稔晃前社長は語っていました。
國京 自社サイトをブランドショップではなく、“セレクトショップ”にするという構想ですね。おっしゃるように、引き続きナルミヤオンラインの拡充、総合化は進めていきます。子供服をワンストップ・ショッピングできるなら、他社ブランドも買えるようにしたほうが、お客さまにとって便利です。一方で、単独ブランドを展開している競合他社にとっても、当社のサイトに出店すれば、知名度や販売効率のアップにつながるなど、メリットは大きいはずです。さらに、アパレルだけでなく、ベビーカーやおもちゃ、離乳食といった、さまざまな子ども関連のアイテムを一堂に集め、子供用品のポータルサイトにできれば、新しいビジネスモデルに発展できるかもしれません。
――石井前社長が以前、「子供服のテイストで、“大人服の新ブランド”も作りたい」というアイデアも語っていたようにナルミヤは新規事業に積極的な印象があります。本業の子供服が好調ななか、新規事業に力を入れる理由はなんでしょうか。
國京 子供服事業が好調でも、それに安住していては、先細りになってしまうからです。日本の子供服市場は今後、少子化によって確実に縮小していきます。むしろ余力のある今だからこそ、新しいビジネスの種蒔きをして、次世代の経営の柱を育てなければならないのです。例えば、ソニーは、かつてオーディオ&ビジュアル機器のメーカーとして世界市場を席巻しましたが、実はその頃にはすでに、既存のビジネスモデルからの脱却を図っていました。そうした経営戦略が奏功したからこそ、現在は音楽などのソフト、金融、半導体がソニーグループの新たな三本柱になっているわけです。当社も幸いなことに、子供服事業は現在、キャッシュを生んでくれているので、それを新規事業の投資にどんどん回そうと考えています。
海外市場では、アセアンなどアジアに注目
――新規事業の可能性はいろいろとあるわけですが、どのようなジャンルに、ビジネスチャンスがあると考えていますか。
國京 当社が進出するのであれば、子供服周辺のジャンル、小さなお子さんがいるファミリーのライフスタイル関連のビジネスが、成功の可能性は高いと見ています。私としては、ハードよりも、サービスのような「ソフト」のほうに関心があります。当社の顧客には、お子さんを抱えた“お母さん”が大勢いらっしゃいます。そうした子育てに忙しいお母さんたちのタイムパフォーマンス、コストパフォーマンスのアップに、貢献できるようなビジネスを考えてみたいですね。
――アパレル以外のサービス事業として、2020年に「LOVST(ラブスト)」という子供写真館事業にも参入しました。現状はいかがですか。
國京 子供写真館は現在、百貨店内などに11店舗を展開していますが、そのうち、自社競合が生じている2店舗をクローズする予定です。子供写真館事業は、子供服事業との親和性が高く、中長期的に成長が期待できるでしょう。顧客アンケートの結果、5点満点中で4.8点となるなど顧客満足度が極めて高く、競争力もあると自負しています。ただし、カメラマンの育成など、人材確保に苦心している点も否めません。今夏以降、事業の立て直しに本腰を入れて、収益化を図ろうと考えています。
――日本の子供服市場は縮小するとのことですが、貴社は、すでに中国事業など海外進出に向けた布石も打っています。見通しはいかがですか。
國京 大手総合商社とのアライアンスで、主力の自社ブランド「プティマイン」を「Tモール」という中国最大級のECサイトで販売したところ、とても好評だったので、海外事業への手ごたえを感じています(現状はコロナの影響によって撤退)。ただし、ご存じのように、中国市場は、政治的なリスクも高まったりしているので、今後はアセアンをはじめとする、ほかのアジア市場にも目を向けていきたいですね。
玩具メーカーやアミューズメント事業も経験
――そのほか新規事業のプランがあれば、ぜひ教えてください。
國京 まだ具体的には公開できませんが今秋以降、アパレル以外のカテゴリーで、子供向けの新商品を、ECで発売する見込みです。現在、社外ブレーンも取り込んだ商品開発プロジェクトチームを結成して、商品のプロトタイプを子どもたちに試してもらっているところです。好評なのでどうぞご期待ください。
――前職でもかまいませんが、國京社長が参画された商品開発プロジェクトの成功事例を教えてください。
國京 デロイトトーマツコンサルティング(現在)に在籍した後、玩具メーカーグループやアミューズメント関連企業の経営にも携わったのですが、例えば、ディズニーさん、サンリオさんなどと組んだ、ドラッグストア向けの「おしゃべりポンプ」というキャラクター商品がヒットしました。ハンドソープの容器などに取り付けるアタッチメントで、手で押すとミッキーマウスなどのキャラクターが、「手をちゃんと洗おうね」といった20種類くらいのセリフを言ってくれるんですね。ディズニーさんは「ホワイトスペース」と呼んでいるんですが、既存の権利を侵害しない新たな商品カテゴリーを開拓するのが、ライセンスビジネスのコツなんですよ。私のネットワークの友人達は、そうしたスキルやノウハウがあるので、今後もサポートしてもらいたいと思います。ただし、悩みもあるんですよ。
――どんなな悩みですか。
國京 自分も、友人達も経験を積んでいる分、年齢も重ねてしまっていますから(笑)。子どもたちやお父さん、お母さんと同じ目線で商品開発をするのが、どうしても難しくなってしまう。そこで、私としては、社内の若いスタッフをどんどん登用し、商品開発でも腕を振るってもらいたいと考えています。例えば、やる気のある社員には、社外研修などの支援を積極的にしたいと考えているし、就業規則を変更して「半休制度」を導入するなど、子育て中の社員が働きやすくなるような職場環境も整備していきたいですね。何と言っても、次世代を担う人材の育成が社長のミッションの一つですから。
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