新領域を切り開く? グリーンビーンズ、ビオラルカフェが進む独自路線とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年7月31日 20時55分
スーパーマーケット業界は、新たな事業領域への挑戦が注目を集めています。それも手がける当の企業にとって新領域というだけでなく、業界的にも新しい領域を試みるチャレンジです。
イオングループのオンラインマーケット事業「Green Beans(グリーンビーンズ)」のサービス設計は、ネットスーパーでもない、生協宅配でもないものです。セブンーイレブン・ジャパンが予定する「SIPストア」は、コンビニでもない、小型スーパーでもない、大型コンビニという業態です。ライフコーポレーションのビオラル事業は、専門店だけでもない、スーパーマーケットだけでもない仕掛けとして拡大しており、最新の有明ガーデン店(東京都江東区)では、外食と内食をつなぐようなカフェ機能を導入しました。
まだヴェールを脱いでいないSIPストアはさておき、グリーンビーンズとビオラル事業について、それらが既存のものとは異なるポイントを整理したいと思います。
グリーンビーンズ 目指すのは、まとめ買いの継続利用
グリーンビーンズは注文から配達までのリードタイムを、翌日から14日先までとしました。日付をまたいだ直後の深夜に注文すれば当日の夕方以降にも配達してくれますが、ほぼ翌日のようなものです。一般的なネットスーパーのように、即日配送を売りにしません。
つまり、来店できない人が数時間以内に必要な商品を買うためのサービスではないということです。翌日から14日先までの間で、利用者それぞれの計画性に基づいて購入するためのサービスです。一方で、生協宅配のように配送機会を週に1回に絞ることもしませんでした。
計画的に買うとなれば、買上点数は増えてくるはずです。だからこそ、グリーンビーンズは自社サービスについて「“まとめ買い”という新しいお買い物スタイル」の提案をうたっているのでしょう。
配送リードタイム以外の設計も、まとめ買いを促すものです。最低購入金額は4000円(税抜き)、配送料は時間帯などの違いで330、440、550円(いずれも税込み)の3段階です。購入金額が1万円を超えると送料が半額になるそうで、これもまとめ買いのインセンティブになります。
サービス稼働時の会見で、運営会社イオンネクストのバラット・ルパーニ社長は「私たちが狙っているのはお客さまに爆買い(binge shopping)していただくこと」と語っています。4000~1万円という客単価を実現することが、事業モデルの肝なのかもしれません。また4月の会見時には、太田正道副社長はユーザーの利用頻度について、1回あたりの購入ボリュームにもよるとはしつつ、「週1回を実現したい」と語っていました。
店舗を拠点としたネットスーパーよりも計画的にまとめ買いしてもらい、生協宅配よりも使い勝手よく継続してもらう。グリーンビーンズが目指す食品オンライン販売の新領域とは、そういったものかと思います。これを実現するためのMDが、生鮮の1週間鮮度保証であり、2000SKUの冷凍食品であり、最終的に5万SKUに拡大する幅広い品揃えなのでしょう。また、AIが自動ピックアップするスマートカート機能や、さまざまなレシピ提案に力を入れる目的もそこに集約されるはずです。
ビオラル 三位一体の事業
ライフコーポレーションのビオラル事業とは、その名を冠した専門店とプライベートブランド(PB)商品、通常店で展開するコーナーが三位一体になったものです。あまり類例のないブランド展開の方法ですが(無印良品と似ています。店名・商品名・供給先のコーナー名)、そうすることでいくつかの課題を相互補完的に解消しようとしています。
ビオラル業態のようにナチュラル志向の商品群で店舗を構えた場合、それはスーパーマーケットというよりも専門店の性格を帯びます。広域から集客を図れる一方、来店頻度はスーパーほどにはならず、出店可能な立地も制限されます。しかし、同名のコーナーを既存店に導入することで、顧客接点は大きく広がりました。すでに8割以上のライフ既存店にビオラルコーナーは導入されています。
通常店のビオラルコーナーは、専門店と同一の世界観で演出されており、コーナーの存在感や説得力を高めています。ライフ店舗でビオラルの存在を認知した利用客が専門店に出かけたり、専門店で見つけた商品を最寄りのライフで購入するといった相互送客も生まれていることでしょう。
最新の有明ガーデン店には、新たな試みとしてビオラルカフェを併設しました。ビオラルで販売している商品を使って、米・主菜・副菜・スープのカフェメニューをはじめ、ドリンク、サンドイッチ類、キッズメニューなどを提供するものです。
カフェ単独でやるとすればハードルは高くなりますが、専門店に併設させたことで、外食と内食の相互送客を見込める特殊な位置づけになり、販促策のような意味合いも帯びます。また、コロナ以前にスーパーマーケット各社が可能性を探っていたイートインの発展系というか、グローサラント(この言葉を思い出すのに一苦労でした)というか、世の中がアフターコロナに移行したことを感じさせる試みでもあります。
ビオラルをまとめると、専門店として独自のMDを追求しながらも、通常店でのコーナー展開によって顧客接点はスーパーと同等に確保しており、店舗によっては外食と内食の垣根も越えて消費の機会を提供しています。これを「業態」とは言えず、「PB」とも言えないわけで、ビオラル「事業」と呼ぶほかないという感じです。
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