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ロイヤルホストがコロナ前よりも売上水準が上がっている複数の理由とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年8月2日 20時55分

定番となりつつある「ロイヤルデリ」の販売コーナー(画像は「光が丘IMA店」)

ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」(222店/2023年6月末時点)では、2022年12月期の売上水準が19年度を上回った。ロイヤルホールディングス(東京都/阿部正孝社長)の22年度決算の決算説明資料によると、「ロイヤルホスト」の月次売上高(既存店換算)は19年度比で10月が117.5%、11月が106.9%、12月が114.2%となっている。客単価は250円もアップしている(実額は非公表)。
コロナ禍にありながら、その好調の要因はどのようなものか、同チェーンを展開するロイヤルフードサービス(東京都)の代表取締役社長、生田直己氏を取材したことから、そのポイントをここでまとめておきたい。ちなみに同社は、ロイヤルホールディングスの外食事業の中核となる事業会社で、グループ会社としてはロイヤルコントラクトサービス(コントラクト事業)、ロイヤル(食品事業)、アールエヌティーホテルズ(ホテル事業)などがある。

ロイヤルフードサービス代表取締役社長の生田直己氏

メニューの強み「洋食」に注力する

 ロイヤルホスト好調の理由は何か。まず挙げられるのが、店舗の立地環境だ。

 「ロイヤルホスト」は1971年に北九州の黒崎に1号店がオープンしてから50年以上の歴史がある。当初はモータリゼーションが発達途上だった時代で、クルマで来店できるように駐車場を数多く抱えた店舗を出店していく。そのような形で約30年が経過したが、人の集まり方が都市や繁華街にシフトするようになり、店舗もロードサイドタイプからビルインタイプに変わっていった。

 ただ、コロナ禍で繁華街や駅前から人が消えたことで、そうしたビルインタイプの都心店舗が大打撃を受けた。一方、コロナ禍にあっても強かったのが、ロードサイドに象徴される「地域のお店」だ。元々、食事を目的に来店するお客が多く、コロナ禍が悪化していった中でもそのような利用目的の来店が増えていった。これまで以上に食事を楽しむ客が増え、客単価も上がっていったのである。

 ファミリーレストラン50年の歴史の中で「ロイヤルホストは少し高いけれど、おいしいお店」というポジションを得るようになったが、コロナ禍での閉塞感が漂う中で、この「おいしい」という部分が「行きたいお店」という目的来店の動機をもたらしたようだ。

 最も特徴的なのは、フードメニューのシグネチャー(特徴、代表)である「オニオングラタンスープ」の出数(注文数)が1.5倍に増えたことだ。「オニオングラタンスープ」とは、新婚旅行中のマリリン・モンローが好み、「ロイヤルホスト」の原点であるフランス料理店「ロイヤル中州本店」に来店したのだが、それを手軽に味わえるようにしたもの。「ロイヤルホスト」の楽しみ方を知っているお客が好んでオーダーするメニューでもある。

「洋食小皿」シリーズの「シーフードクリームオムライス&煮込みハンバーグ」2398円(税込、以下同)+「前菜セット」671円

 強みとする「洋食」に磨きをかけている点にも注目したい。それを象徴するのが、昨年導入した「洋食小皿」シリーズ(例:シーフードクリームオムライス&煮込みハンバーグ、税込2398円)で、ネーミング通りに洋食の楽しみを1つのお膳の中にセットにして、人気を博したことから組み合わせのバラエティを広げている。

テイクアウトや冷凍食品販売が定着

 コロナ禍にあってテイクアウトに着手したことも業績を押し上げた要因の一つだ。

 同社ではコロナ前にもテイクアウトを行なっていたが、取り扱いはカレーやサンドイッチなど数品であった。しかし、ステーキやハンバーグといった「ロイヤルホスト」の強い部分もテイクアウトで楽しんでもらうべく、それまでプラスチック製であった容器をお重のような形状のものを刷新し、テイクアウト商品の価値を高めた。

定番となりつつある「ロイヤルデリ」の販売コーナー(画像は「光が丘IMA店」)

 コロナ禍が始まった頃、客数が大きく減少し、店舗売上が落ち込んだこともあって、テイクアウト売上比率は店舗全体の約10%に上ったこともあった。現在はイートインが増え、テイクアウトは比率こそ低くなったものの、売上自体は変わっていないという。つまり、テイクアウトの売上はプラスオンされるようになっているのだ。これについて、生田氏は「ロイヤルホストのメニューをテイクアウトで楽しむというパターンが定着してきたのではないか」と述べる。

 調理済みフローズンミールの「ロイヤルデリ」も根付きつつある。当初はレジ周りに冷凍設備がなかったことから、「ロイヤルデリ」の注文が入ると、キッチンにある冷凍庫まで商品を取りにいくオペレーションだったが、コロナ禍でお客が減少した際に、従業員がお客に積極的に告知するようになった。そこで、レジ周りに冷凍設備がある店より、ない店の方が「ロイヤルデリ」の売上が高いといった成功事例が盛り上がりを見せたという。それ以降、「ロイヤルデリ」を全店でより分かりやすく販売できるように、レジ周りに冷凍設備を置くことを標準装備とした。

 足元では、現在、「ロイヤルホスト」のメニューブックでは、3000円前後の「プラッター(盛り合わせ)」が盛んにアピールされている。このような高価格帯の商品は、メニューにおける自信の現れと見ていいようだ。

 「ロイヤルホスト」では7~8年前から「価値創造戦略」に力を入れている。象徴的な事例として、生田氏は「アンガスサーロインステーキ」を紹介してくれた。高品質な米国産のアンガスサーロインステーキを現地でパッキングした同商品。特徴的なのは、店舗のキッチンで封を開け、ある程度トリミングし、チルドの状態で少し寝かすというひと手間を加えている点だ。生田氏は「当初は2000円超える商品はどうかと思っていたが、この一連の商品がお客さまにご好評をいただいて、これを継続しているところ」と語る。

「ロイヤルホスト」の得意なメニューを集めた「プラッター」の1つ、「アンガスサーロインステーキ ギャザリング・プラッター」(オニオングラタンスープ・ガーリックトースト付)3388円

 冒頭で述べた客単価アップは目的来店が増えた証である。「ロイヤルホスト」が取り組んでいる価値創造戦略が顧客に根付いてきているのであろう。

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