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学生と企業のコラボで商品化93案!未来のマーケターを育成する「Sカレ」とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年8月27日 20時55分

sカレ

大学生が商品を企画し、企業と一緒につくり上げていくインターカレッジ「Sカレ(Student Innovation College)」が注目されている。Sカレをきっかけに生まれた商品の中には継続的に販売されているものもあり、学生と企業との取り組みが続いている場合もある。

Sカレを通じて質の高い商品をつくれる理由は、プランだけでなく商品化まで見据えているからだ。発起人の一人である、法政大学経営学部の西川英彦教授に聞いた。

企業と学生が連携して商品をつくり出す

2022年は31大学36ゼミより531名の学生が参加した

 Sカレは「未来のマーケターの育成」を目的に2006年から始まり、今年で18回目を迎える。どのような商品をつくるのかは参加企業ごとに異なる。たとえば、2022年は「デジタル化時代に必要な手帳(伊藤手帳)」「社会課題を解決する印刷製品(明成孝橋美術)」などが挙げられ、そのテーマに沿ってゼミ対抗で商品を企画する。

 まずは10月に行われる大会でコンセプトを競い、同年12月に行われる大会で商品化の権利をかけてプランを競い合う。そこで1位を獲得した企画が、企業と一緒に商品化に向けて動き出す。そして翌年10月の大会では、実際の販売実績などを加味して総合優勝を決めるという流れだ。すべての企画が商品化されるわけではないが、これまで93個の企画が商品化に至っている。

 2021年にプラン1位に輝いた「かくしてほせるん」は「長期型避難自粛ケア商品」というテーマから企画され、実際に商品化された。その名のとおり、洗濯物を隠して干せることが特徴で、災害によって避難所での生活を余儀なくされた人からの「周りの目が気になって下着を干せない」という声から生まれた。このように、テーマに沿った企画を学生が立案して、企業と一緒に商品化を実現させている。

「商品化して売る」ことに意味がある

Sカレの進め方
Sカレの進め方

 Sカレの特徴は、プランだけでなく商品化までを審査対象にしているという点だ。「プランだけを考えるというのはよくある話。商品化まで考えることに意味がある」(西川氏)

 実際に商品化するとなると、商品の販路開拓や素材集めなども求められる。「たとえば、toB(企業との取引)が専門の企業はtoC(消費者との取引)向けの販路がないため開拓の必要がある。自社で取り扱っていない素材を使う場合は、他社から調達しなければならない。Sカレでは、それらの役割を学生が担うこともある。これが、プランだけでなく商品化まで検討するということ。ここが大事だと思っている」(同)

 第9回まではコンセプトステージとプランステージのみで、商品化ステージはなかった(画像参照)。しかしこれだと、商品化は企業に委ねられるため、結果的に商品化される企画は少なかった。

 そこで第10回から、年末のプラン発表の後、実際に商品を制作して販売する商品化ステージを導入。コンセプト発表とプラン発表では評価する側だった企業も、商品化発表時には「評価される側」になるため本気度が変わった。その結果、商品化に至る企画が増加したという。

社会課題を解決する視点が評価される

懐話ふだ
懐話ふだ

 Sカレから誕生した商品の中には、対外的な評価を受けているものもある。その中の一つが、印刷会社である明成孝橋美術と法政大学の学生が連携してつくった「懐話(かいわ)ふだ」だ。この商品は「高齢化が進むことによって認知症の人も増えていく」という社会課題を解決するためにつくられた。創造力にあふれる製品として知事が認定する「大阪製ブランド」に選ばれている。

 神経衰弱のようにカードをめくり、色が揃ったら自分の手札にしつつ、その二枚の札に書かれていることに沿って思い出話をする。たとえば、「ここ最近・笑ったこと」や「学生時代・やっていた運動」などだ。懐話ふだをつくる過程で、グループホームや有料老人ホームで話を聞いたり、試作品を介護施設に持っていって現場の声を集めたり、約1年間かけてブラッシュアップした。

 また、明成孝橋美術にはtoC向けの販路がなかった。そのため、学生がイチからページを作成しクラウドファンディングを実施。2カ月で、目標金額の150%の売上を達成した。さらに、SNS運用、介護コミュニティへのアプローチ、プレスリリース、新聞への掲載など、PRにも成功している。

Sカレは口コミで広がっていった

法政大学経営学部教授
法政大学経営学部の西川英彦教授

 Sカレの参加企業は2006年の1社から始まり、2022年は8社、2023年は9社にまで増えた。アパレルや家具、化粧品などのメーカー以外にも、旅行会社や製薬会社など多種多様な企業が参加している。

 最初の頃は、発起人である西川教授や流通科学大学の清水信年教授と、元々つながりのあった企業が参加していた。そこから評判が口コミで伝わり、今ではプレスリリースやSカレに関する記事を読んだ企業側から連絡が来ることも多い。

 また、参加学生も、2006年の2大学、2ゼミ、45名から、2022年には31大学、36ゼミ、531名と、年々増えている。「参加しているゼミの先生たちが、学生の感触も含めて評価してくれている。Sカレを通じて商品企画やマーケティングに興味を持ち、自分が学んできたことが実践の場でどう活用できるのかを体験して欲しい。それがSカレの目的である『未来のマーケターの育成』につながる」(西川氏)

 プランを考えるだけでなく、企業と提携して商品化まで実現する。このような経験を学生のうちから積める機会は中々ない。「学生たちがスティーブ・ジョブズのように商品をプレゼンする姿も、企業に響いているはず」と西川教授は話す。企業側にとっても新たなマーケティング体験と言えるだろう。

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