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レシートは語る第11回 直近の月次も好調続く! ヤオコーを躍進させる「二極化への対応」

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年8月20日 20時57分

 mitoriz(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約40万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間1000万枚のレシートを収集し、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる(提携サイト含める)。

 このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。

 連載第11回は、増収増益を34期連続で達成するヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)にクローズアップする。同社は直近の既存店売上高・対前年同月比をみても、4月106.5%、5月106 .1%、6 月106 .3%と絶好調だ。

 新型コロナウイルス感染が収束を見せ、世界情勢の影響による原材料価格上昇など、厳しい環境下で、同社はなぜ業績を伸ばすことができているのか。

 23年3月期決算の場で川野社長は「23年3月期は物価上昇に見舞われたが、価格対応を続けたことや、商品の品質に対して、お客さまからの信頼を得ることができている」と、消費の二極化への対応が奏功したと語っている。

 実際にヤオコーは他チェーンと比べて消費の二極化に対応できているのか。調査により明らかにしたい。

「品質」「品揃え」重視の
来店客が5チェーンで最多

 まずは消費者アンケートで、買物をする際に「品質」「品揃え」「価格」のうち、何を最も重要視するかを尋ねた「価値観調査」を実施した。図表1は、その結果を比較対象とした5チェーンのメーンユーザー別にまとめたものだ。(調査期間:2023年6月23日~7月3日、対象:一都三県在住者)。

メーン利用者が最も多かったのは「オーケー」で167人、次に「イオン」(35人)、「ライフ」(223人)、「サミット」(217人)、「ヤオコー」(167人)の順となった。(図表1)。

図表1
図表1

 その結果、5チェーンで比較したなかで、ヤオコーは「品質(39.0%)」「品揃え(15.9%)」を重要視する消費者が最も多いことが見てとれる。とくに「品質」は5チェーン合計より10.3ポイント(pt)高い。

 コメントでは「品物の質や店の雰囲気の良さを重視している」「生鮮品の鮮度が最優先」「食品の鮮度が大切」といった声が挙がっており、ヤオコーは目が肥えた利用者が多いと言えるかもしれない。

「品質」「品揃え」の満足度が
5チェーンのなかで最高に

 次に、商品についての「満足度」を尋ね、こちらも同様にメーン利用するチェーン別に比較した。(図表2

図表2
図表2

 ヤオコーの満足度の評価は、5項目中4項目が比較対象の中で上位にランクイン。「生鮮食品の品質」や「総菜やパンなどの商品力・オリジナリティ」はライフに次ぎ高く、とくに「商品の品揃え(86.8%)」「商品の品質(89.2%)」は5チェーンの中でもっとも評価された。

 コメントにも「ヤオコーは品揃えが良く鮮度も良い」、「魚や野菜などの生鮮食品の品質がよい」、「店内で焼いているパンが安くてとても美味しいのでお気に入り」とあるように、「品質」と「品揃え」を重要視する消費者の支持を得ていることが結果にあらわれていた。

全体購入金額は
オーケーに続いて高い

 さらに23年1月~6月までのレシートデータを分析し、購入状況を比較した。(図表3

図表3
図表3

 ヤオコーのレシート1枚あたりの平均購入点数、平均購入金額(レシート単価)は5チェーン計を上回り、いずれも「オーケー」に続いて高い結果となった。
前出の調査結果で、「品質」、「品揃え」で同じく高い評価を受けていたライフと比べてみても差をつけている。

商品単価は
中間に位置する意味

 もう1つ注目したいのが、ヤオコーは「品質」・「品揃え」で支持を受ける一方、商品単価はと決して高いわけではなく、中間に位置していることだ。

 物価上昇で節約志向が高まるなか、EDLP(エブリデー・ロープライス)の価格政策や、ポイント制度を活用した販促、プライベートブランド(PB)の販売強化など、価格対応にも注力していることが要因だと考えられる。

 実際に調査回答者からは、「商品が豊富で値段が安く、ポイント制度があり割引券をくれるのでできるだけ利用する」、「PBが充実していて結果的にお得」といった声が挙がっている。

 この数年で消費環境が劇的に変化し、消費ニーズはますます多様化をみせている。また、コロナ禍が収束したとは言え、外食は完全には戻っておらず、家庭の食卓で“ちょっと良いもの”を楽しむ傾向は継続しており、消費の二極化は確実に強まっていると考えられる。

 こうしたなかヤオコーは本来の持ち味である「品質」「品揃え」の特徴を伸ばしつつ、「価格」でも巧みに節約志向を取り込む戦略が今の消費者に合致し、支持獲得に成功していると言えそうだ。

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