ロカボ・糖質オフ商品の購入者像を徹底分析!市場拡大のポイントとは?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年9月7日 1時0分
生活者の健康意識の高まりやコロナ太りの解消といった需要増から、年々売上が伸び続けていたロカボ・糖質オフ商品だが、今年は少し踊り場を迎えている。食品スーパーのPOSデータやレシートデータから同商品の購入者像を分析することで、新たな販促ポイント、商品開発のヒントを探ってみた。
ロカボ・糖質オフ商品のカテゴリー別の動向について
今回ロカボ・糖質オフ商品を分析するにあたっては、商品名に「糖質」「ロカボ」を含むものに加えて、パッケージなどでこれらを謳っているもののうち、とくに売上の大きいものを抽出した。「KSP-POS」(食品スーパー)によると、同商品の売上は2021年までは順調に増加を続けていたが、22年に入り踊り場を迎えている。同商品の中では、どのカテゴリーが減少し、どのカテゴリーが伸びているのだろうか。
【図1】は「KSP-POS」で主なカテゴリーの千人当たりの購入金額と前年比をみたものである。酒類が最も売上が大きく、次いで菓子類、調味料となっている。酒類が前年を割ってしまっていることが、同商品全体の売上に大きく影響している。最も伸びが大きいのは即席麺カテゴリーで、これは21年4月に発売された日清食品の「カップヌードルPRO」の影響が大きい。ほかには、シリアル、ヨーグルト、パンといった朝食によく食べられる商品群も大きく伸びている。では、これらそれぞれのカテゴリーの購入者の性質に、違いはあるのだろうか。
ロカボ意識ライトユーザー、
ヘビーユーザーそれぞれの求めているコト
ロカボに対する意識が最も高いのは、どのカテゴリーのロカボ・糖質オフ商品を購入している人なのだろうか。逆に、ロカボに対する意識がそれほど高くはないのはどの購入者なのだろうか。それを調べるために、ふだんの買物の中での同商品の千人当たりの購入点数をカテゴリー別にみたところ、ロカボのお酒の購入者のみ、お酒以外のカテゴリーの同商品の購入点数が極端に低かった。このことから、ロカボのお酒の購入者は他のカテゴリーの同商品購入者とは大きく性質が違うと考えられるので、分けてみる必要がありそうだ。
そこで、自カテゴリーとお酒を除いたロカボ・糖質オフ商品の千人当たりの購入点数をみたものが【図2】である。即席食品購入者は他のカテゴリーのロカボ・糖質オフ商品を最も多く買っており、ロカボ意識が高いと言える。また、前年比で伸びていた即席麺やパン、シリアル、ヨーグルト、サラダチキン購入者のロカボ意識は中程度であった。
ロカボのお酒の購入シーンとは?
先ほどの結果より、ロカボのお酒の購入者は、ふだんから意識してロカボ・糖質オフ商品を摂取しているわけではなく、飲むなら一応低糖質を、程度で購入している方が多いということがわかった。また、同商品は全体でみると子供のいない方に購入されやすいが、お酒のロカボ・糖質オフ商品に関してはお酒カテゴリー全体と比較して子供のいる女性に購入されやすく、ターゲット像も他の同商品購入者とは違っていた【図3】。
お酒カテゴリー全体の購入者とロカボのお酒購入者それぞれについて、一緒に買われやすいものをみると、ロカボのお酒購入者の方が肉類(とくに輸入)や半総菜の購入が多く、子供と一緒に囲む食卓の中でロカボのお酒を楽しんでいるシーンが想像される。毎日飲むならロカボのお酒、という謳い文句とともに、お肉売場や簡便品売場で関連販売をすることで、より手に取っていただきやすくなるのではないだろうか。
即席食品は介護食品売場でも展開
では、最もロカボ意識が高かった即席食品を購入する方は、ロカボ・糖質オフ商品以外にどのようなものを購入しているのだろうか。スーパーに来店するすべての買物客と比べて、ロカボの即席食品購入者が購入しやすいものを買われやすさの度合いが高い順に並べてみると【表1】、1位に介護食品が来ている。介護食品は伸びている市場だが、介護食品カテゴリー内には商品名でロカボや低糖質を謳った商品は見られない。介護食品売場でもロカボ商品を展開するとともに、今後の商品開発として、食事に関して制限のあるなかでもおいしく食べられる低糖質商品というのが求められているのではないだろうか。
ロカボ・糖質オフ商品の市場拡大のためのポイントは?
ロカボ・糖質オフ商品の中で大ヒットとなった「カップヌードルPRO」であるが、商品特徴として、高たんぱく×低糖質を謳っている。「糖質」「タンパク質」のインターネットでの検索指数の推移をみると、「糖質」の検索が落ち込み気味なのに対し、「タンパク質」は伸び続けており、2023年に入ってからは「糖質」を「タンパク質」が上回っている。その一方で「タンパク質」や「プロテイン」が商品名についている商品はロカボ・糖質オフ商品に比べてまだまだ少なく、伸びる余地があると思われる。
ロカボ・糖質オフ商品購入者のふだんの買物の中で、「タンパク質」「プロテイン」を謳った商品の購入点数をみてみると、カテゴリーによってばらつきはあるものの、全体の買物客と比べて1.5~2倍近く購入されやすくなっており【図4】、相性のよさが窺える。また、高たんぱく食品として有名なサラダチキンであるが、サラダチキン全体の売上は前年比を割っているなか、低糖質を謳ったサラダチキンの売上は伸びている。
「低糖質」に加えて「高たんぱく」という付加価値をつけるのはひとつの切り口として成長が期待できるカテゴリーとなっていくと思われる。こうした世の中の流れや購買特徴を把握し、商品開発や売場づくりにつなげていくことで、ロカボ・糖質オフ商品市場をより拡大させるチャンスがあるのではないだろうか。
文=日本食研ホールディングス株式会社 食未来研究室 室長 児玉一穂
食未来研究室ホームページ : https://nsk-shokumirai.com/
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