粗大ゴミ、廃校備品が売物に メルカリと自治体の連携が活発化する理由とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年9月21日 20時55分
メルカリ(東京都/山田進太郎代表)と自治体の連携が活発化している。持続可能な社会の実現が企業活動におけるグローバルなミッションとなる中で、行政機関が日本最大のフリマサービスと距離を縮める先にどんな未来があるのかーー。メルカリで自治体連携を担うキーマンに、その狙いやその可能性について聞いた。
拡がる自治体のメルカリ活用
2023年6月5日、国際連合地域開発センター、徳島市、蒲郡市、行方市、大町市、大淀町、揖斐川町、メルカリが共催する「SDGs循環型社会推進公民連携フォーラム」で、8つの自治体が「メルカリShops」の利用開始を発表した。これにより、「メルカリShops」を活用する自治体は、合計で21自治体となった。
「メルカリShops」は「かんたんで、売れる」をコンセプトに、スマートフォン1つでネットショップを開設することができるEコマースプラットフォーム。メルカリグループの新規事業の企画・開発・運営を担う、ソウゾウ(東京都/藤樹賢司CEO)が、2021年10月から本格提供をスタートしている。
メルカリと行政の連携の先にあるもの
自治体がECを利用するというと、やや違和感がある。それを埋めるキーワードが、発表の場となったフォーラムタイトルにある「SDGs」「循環型社会」「公民連携」となる。2018年の立ち上げ時から、自治体との連携に関わるメルカリ経営戦略室政策企画参事の高橋亮平氏が、そもそものきっかけについて振り返る。
「私自身が自治体で部長職を務めていたこともあり、自治体の首長らとの人脈があった。2018 年の入社直後、メルカリへの貢献という側面、そしてメルカリ利用の可能性としても、行政機関との連携に可能性があるのではないかと考えた」
2019年 2 月に岐阜市と包括連携の協定を結んだのを皮切りに、以降、着々と自治体との連携を進め、現在 までに24 の自治体と包括連携協定を結ぶ状況になっている。
粗大ゴミ、廃校備品が売物になる意味
メルカリShopsの利用を開始した自治体は具体的に何をしているのか。その多くは、粗大ごみや廃校備品などの販売だという。まさに、個人が不用品をメルカリで販売するように、自治体は行政で排出された不用品を、「メルカリShops」を通じて販売することで、循環させているわけだ。
その意義について、高橋氏が説明する。「たとえば自治体は、図書館で不要になった本を市民に提供することなどはやっていた。しかし、その利益を享受しているのは、ある特定の市民であることも多く、行政の公平性の観点からどうだろうかという問題意識があった」
せっかくの優れた施策も、結果的にあまねく市民に行き渡ることなく、歪みのようなものが生じがちという課題があった。いまや、一般的な購買手段の一つとなったECによる提供となれば、欲しい人に公平にいき渡りやすくなり、行政としても有効な提供手段となる。
さらに粗大ゴミの処理でも、まだ使えそうな家具はシルバー人材を活用し、リペアして格安で販売していたりもするが、 同様に特定の人ばかりがヘビーユーザーとなり、恩恵を受ける市民が一人握りになることも珍しくなかったという。
加えて、粗大ゴミでは処理費用もかかり、税金の活用の仕方として、市民から疑念を抱かれかねないという課題も。そうした中で、「リユースや循環型社会への転換を役所が進めていくうえで、活用する一つのポイントになるのでは」と高橋氏は、自治体のメルカリShops活用による効能を示す。
官民、公民連携による波及効果
自治体がメルカリでリユース品を提供することによる波及効果も期待される。「今までの環境政策やリユース施策はいわゆる啓発が中心だった。それに対し、自治体自身がやっていることを示せるのは一つのインパクトではないか。やはり市民全体で関わってもらわないと、なかなかゴミ問題のような大きな問題は解決できない。そうした中で、自治体だけでは伝わらなかった層の人にも伝わっていると、自治体自身も感じている」とメルカリ経営戦略室政策企画参事の伊藤亮太氏は、約2000万人の利用者を誇るメルカリの”触媒効果”を明かす。
メルカリにとっても自治体との連携は企業ミッションの実現を手繰り寄せる上で、追い風になる。「循環型社会の実現といった大きなアクションを私どもだけで実現するのは限界がある。やはり官民・公民連携、それぞれのセクターを超えた連携というところに大きな可能性がある」と、同社経営戦略室政策企画マネージャーの今枝由梨英氏も、連携の影響力に期待を寄せる。
シェアリングエコノミー拡大の波に乗り、スマホで手軽に個人間の売買を可能にするアプリとして急拡大したメルカリ。フリマを一気に身近にした先に描くのは、モノの消費に伴い発生するムダをできる限り減らす、循環型社会の一つの核となるインフラとしての浸透だ。
循環型社会のインフラ化へ大きな可能性
つくりすぎない、使い尽くす、リユースするーー。大量生産大量消費から脱し、循環型社会へ移行するには、企業の努力だけでなく、市民の意識変革も強く求められる。その壁はとてつもなく高いが、国民の6分の1が利用する巨大プラットフォームと地域の行政を司る自治体が連携する相乗効果は計り知れない。
すでにマンホールや伐採した木を加工して売るなどの事例もあり、矯正協会との連携で、刑務作業で製作された商品の販売も行われている。これまでなら廃棄されていたようなモノや一般市民の目には触れづらい中で売買されていたモノが、メルカリを通じ、よりオープンな流通に乗り始めている。
まだ使えるモノ、こだわり抜いてつくったモノ、売れるかわからないモノ…。フリーマケットの醍醐味が“発掘”や“再評価”だとすれば、メルカリの活用領域や範囲が広がれば拡がるほど、その存在価値は比例して高まる。結果的にごくナチュラルに国民の意識変革促進にもつながることになる。
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