ユニクロ柳井正会長が語る 企業のサステナビリティの本質とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年9月17日 20時56分
「ユニクロに学ぶサステナビリティ」と題して、今年5月から始まったこの連載も、いよいよ今週の掲載で最終回を迎える。これまでの27本の記事では、30名にのぼるユニクロ、ファーストリテイリングの各担当者あるいは外部パートナーに、サステナビリティの様々な取り組みを取材してきた。今やサステナビリティ先進企業となったユニクロ、ファーストリテイリングも、2001年に社会貢献活動をスタートしてから22年の間、様々な試行錯誤を続けてきたことがわかる。
最終回は、創業社長である柳井正会長に話を聞いた。サステナビリティというテーマを超え、企業として、小売業として、また一個人として、これからの世界をどう生きていくべきか、という示唆に富んだメッセージである。
企業は何のためにあるのか
企業が大きくなっていくと、社会的な影響力も強くなりますが、成長の過程には、原点に返って考えないといけないタイミングがあります。その原点とは「企業は何のためにあるのか」ということです。
企業は何のためにあるのかをを考えていくと、「企業はお客様のためにある」ということに行き着きます。そして、あらゆる「お客様のため」を突き詰めると、「社会全体のためになるような企業活動をする」ということになるのではないかなと思います。
事業を行ううえで最も大切なのは、その事業を通じて、社会を良くしていくことです。サステナビリティとか何とかというよりも、社会にとって良いことをする。そう考えると、自ずとやることが決まってくるでしょう。
ファーストリテイリングの前身である小郡商事を父から引き継いで、自分でやっていくことになったとき、「この会社をどんな会社にしていけばいいのか」と考えました。そして決めたのが、「社会に良いことをする」ということです。当時書いたメモは今も手元にあり、私の商売の原点となっています。
お客様の生活をより良いものに
お客様のためというのは、お客様に服を売るのと同時に、「その服を着ることによってお客様の生活がより良いものになる」ということだと考えています。
ただ単純に、地球環境のためだけに商品を作っても、お客様の生活が良くなるようなものでない限り、共鳴して買ってもらうことはできないでしょう。素材をいくら地球環境に優しいものに変えたとしても、値段が上がったり着心地が悪くなったりするのであれば、作る意味がありません。「それでもサステナビリティだから」と押し通しても、全体にとってプラスになるとは思いません。
また、再生繊維を使用した製品を扱えばサステナビリティブランドと言えるかというと、それを作る過程で実はCO2の排出量を増やしている可能性もあります。短絡的な考えによって、かえって社会の負荷を増すやり方になっていないか、深く考えながら取り組む必要があります。
事業そのもので社会に良いことをする
会社を存続させていくための条件があるとすれば、「社会に良いことをする」以外はないのではないでしょうか。
「社会に良いことをする」というと、社会貢献室のような組織を作ることを想像するかもしれません。我々もはじめは社会貢献室を作って、さまざまな活動に取り組んできました。しかし、社会に良いことをするというのは、自分たちの事業にプラスアルファでやることではなく、事業そのもので社会に貢献しなければいけないのだと気づかされました。「社会に良いことをする」ことと自社の事業が一致していて、矛盾しないのが大事だと思います。
企業のサステナビリティの本質とは
地球環境保護や慈善事業は、サステナビリティの側面の一つにすぎません。企業のサステナビリティの本質は、日常的なすべての事業活動を通じて、社会に良い影響を与えることにあります。
サステナビリティがない限り、いや、その以前に、社会にとって良いことができない限り、その企業の存在価値はないと言ってもいいのではないでしょうか。社会に貢献した企業だけが大きくなれて、かつ持続的に成長できるのだと思います。
サステナビリティには、それぞれのやり方がある
日本では、欧米からやってきたものを形から真似をすることが多いですが、サステナビリティというのもどこか表面的になってしまっているように感じます。「サステナビリティ」や「SDGs」という言葉がヨーロッパやアメリカからやってきて、日本の企業が突然それに気がついて慌てて対応を考える、という状況になっているのかもしれません。しかし、本当のサステナビリティとは、その言葉通りの意味ではなく、「これとこれをやればサステナブルだ」ということでもないと思います。
我々は、お客様が本当に欲しいと思う良い服を作って提供することを通じて、サステナビリティを実現しようとしています。しかし、これはあくまで我々の姿であって、それぞれの企業にそれぞれの事業の姿があり、それぞれのやり方によるサステナビリティがあって当然なのではないかと思います。
「世界に出ていく」というのはどういうことか
2019年1月にスウェーデンオリンピック委員会と、メインパートナー契約とオフィシャル・クロージング・パートナー契約を締結しました。そのとき、スウェーデンオリンピック委員会の方から最初に聞かれたのは「あなたの会社の規模はどのくらいですか」とか「収益はどうですか」ということではありませんでした。そこではまず、「あなたの会社は、サステナビリティ活動としてどのようなことをやっていますか」と聞かれたのです。
この経験は、我々に大きな影響を与えました。「世界に出ていくというのは、そういうことなのか」とあらためて気づかされました。「地球環境も含めて、サステナビリティを重視している企業しか世界に出ていけないのだ」と改めて認識し、さらに一人ひとりの社員がそのような心がけに変わらないといけないのだと気づいたのです。
世界で最も必要とされる会社になる
我々は、戦略とか戦術とか、そういうことをあまり考えていません。自分たちが一番大事にしているのは、「使命感」や「志」といったことです。
実現できるかどうかわかりませんが、世界最高で最大の製造小売業、世界で最も必要とされる会社になりたいと思っています。世界最高の小売業とは、「お客様が欲しいものがいつもある」ということです。それが完璧な形で実現できている会社は、世界にまだありません。
我々はそれを実現する世界で初めての会社になりたいと本気で思っています。そのために、我々は「グローバルワン 全員経営」という考え方を掲げています。
会社を表すのは、経営者というよりも、お客様が日頃接している店舗や販売員の印象です。ですから、お客様と接するその人たちに、本当に生きがいを持ってやってもらうのが大事なのです。
私たち企業家には、事業を通じて世界をより良い方向に変える力があります。そして事業を継続するためには、「社会全体が永遠に繁栄できる」ということが前提になっています。世界全体で持続可能な成長の仕組みを作るのは、企業家の責任でもあります。
後編は明日9月19日に掲載。
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