商品開発体制も一新!カインズが8つのプロダクトブランドに分けるねらいとは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年9月27日 22時9分
カインズ(埼玉県本庄市/高家正行社長)は、オリジナル商品のリブランディングプロジェクトを発表した。2024年4月以降、オリジナル商品を8つのプロダクトブランドに分けて展開する。既存の社内体制を見直し、デザインオフィス「nendo」と協業しながら、新たな商品開発を進めていく予定という。
自分らしいくらし
実現できるブランド
カインズでは2007年、商品企画から設計、物流、プロモーション、販売までを自社が一貫して行う「SPA (製造小売業)宣言」を、18年には社内と売場の双方でIT活用を推進する「IT小売業宣言」を行った。2019年以降は次の10年、20年先に向けて持続的な成長を続けるための「第3創業期」として位置づけ、そのために中期経営計画「PROJECT KINDNESS」を策定している。
「PROJECT KINDNESS」に含まれる戦略の一つが、SBU(Strategic Business Unit:戦略事業単位)だ。
同社ではSPA宣言以降、オリジナルブランド「CAINZ」の商品開発に本格的に舵を切るようになった。カテゴリーは日用雑貨、家庭用品、ペット用品、インテリア用品など多岐にわたり、品目数は1万3000点程度。07年度から22年度までの16年間で、オリジナル商品の売上高は約2.3倍にまで増えている。
ここまで商品数が広がってくると、品番でカテゴリー分類した場合、お客のニーズとの間にズレが生じる可能性が出てきてしまう。このため、事業単位を「ライフスタイル・日用雑貨・プロ・ペット」という4つに拡縮し、各事業でターゲットごとにコンテンツを分類することで、品番を超えた顧客提供価値をベースとした商品開発の姿勢を打ち出した。
今回のリブランディングはこのような改革の延長線上に位置づいており、生活のシーンやテーマを基軸とした商品開発をさらに加速させるねらいがある。
リブランディングにあたっては、カインズの提供価値とは何かを再定義し、日々の生活シーンから課題を抽出。最終的に、これまで「CAINZ」1つだったブランドに新たなシリーズを加え、今後は「CAINZ」「CAINZ STYLE」「CAINZ FIT」「CAINZ MAKE」「CAINZ ISM」「CAINZ PRO」「CAINZ Pet」「CAINZ CYCLE」の全8つで展開する。それぞれ「くらしを『支える』」「日々のくらしを『楽に』」「日々のくらしを『すこやかに』」「くらしを自分らしく『クリエイティブに』」「いつものくらしに『プロの視点を』」「職人さんの一日を『よりよいものに』」「ペットとのくらしを『心地よく』」「自転車をくらしの『パートナーに』」という同社の提供価値を反映した商品開発を行う。
既存商品すべての
パッケージを更新
順にブランドを紹介していこう。
■CAINZ
・8つすべてのベースとなるブランドで、「安心・安全」「誰もがコーディネートできる」「満足できる価格である」という3つの価値を備えた商品開発をめざす
・衣料用液体洗剤や、飲料・酒など日々の暮らしに必要不可欠な商品を組み込む
■CAINZ STYLE
・「立ったまま収納できるほうき」「スパッと切れるラップケース」など、暮らしの中で消費者が感じる不便に応え、ストレスをなくす商品を提案する
■CAINZ MAKE
・初心者でも使いやすい電動工具など自ら道具や材料を選ぶことができるDIY製品を中心に揃える
■CAINZ FIT
・もちもちした感触と、ワッフルのような格子状の見た目が特徴の「Moffle(モッフル)」まくらやヨガマットなど、消費者が何気なく続けている習慣を見直して、健康なくらしを続けるための商品を提供する
■CAINZ IZM
・プロの職人が使う洗剤を家庭用に使いやすくした「プロ仕様洗剤シリーズ」など、各専門業界のプロの視点を取り入れた商品開発を行う
■CAINZ PRO
・コンテナを載せてもずれにくい一輪車や、収納性を考慮したコンテナなど、現場で働く職人の仕事や生活をサポートする商品を整える
■CAINZ PET
・ずれにくいペットシーツや機能性にこだわったペットウエアなど、ペットの健康に配慮した商品を揃える
■CAINZ CYCLE
・持ち運びのできる折り畳み自転車「スライク SLIKE」や、カゴカバーなど、日々の自転車生活を快適にする商品を提供する。
現在、店頭に並んでいる既存商品に加え、年間を通じて開発される新商品もいずれかのブランドに入る予定だ。新商品の開発品数について目標は定めないが、既存商品については24年度末を目標に、1万3000点すべてのパッケージを刷新する予定という。
24年4月にまずは「CAINZ STYLE」を先行でリリースし、その後も各ブランドの商品について、順次リリースしていく。
部署を超えた
意思決定プロセスを導入
新たなプロダクトブランドを開発するにあたり見直しをかけたのが、商品の開発体制だ。
これまで同社では、個々のバイヤーがカテゴリーや品番別に企画を立案し、事業部長らがその内容を承認する「タテ型」の意思決定プロセスをとってきた。メリットは市場のニーズをとらえ、スピード感のある商品開発・改良を行いやすいこと。他方で、個々人の能力に依存することになるほか、知見や技術が蓄積されにくいなどのデメリットがあった。
そこで新ブランドの開発にあたっては、従来の体制に加えて、新たに「ヨコ型」の意思決定プロセスを導入し部署を超えた横断型のチームで商品開発を行った。今後は、個人の力が発揮されるタテ型の体制と、チームの力が発揮されるヨコ型の体制を並存させながら、どちらの強みも活かす商品開発を行っていくという。
プロダクトブランドの開発には、デザイナーの佐藤オオキ氏を中心とするデザインオフィス「nendo」もかかわった。「nendo」は東京オリンピックの聖火台をはじめとして、建築やグラフィックなど多領域のデザインを手がける。従来カインズでは機能性を重視した商品開発を行っていたが、nendoの製品が機能性とデザイン性の双方を兼ね備えていることに注目した会長・土屋裕雅氏が佐藤氏に声をかけたことが、協業へとつながった。
協業の際にはブランドコンセプトやお客のニーズ、店舗での売り方など、プロセス全体についてカインズ、nendoの双方が意見交換を重ね、具体的な商品の形に落とし込んで行った。
カインズはこれまで、商品企画から販売までを自社が行うことで、適正な品質の商品を、低価格で提供することを強みとしてきた。一方、新たなブランドでは、商品価格は大きく打ち出さない。お客のインサイト(潜在欲求)を着実に反映するため、売上目標も設定していないという。
理由について、高家社長は「『いい商品を安く提供する』という企業理念は変わっていないが、オリジナル商品はもともと、カインズでしか買うことができないもの。他店の商品と比べてではなく、お客にとっての商品価値をもとに値段を決めることを大切にしたい」として、価格訴求に限らず、価値訴求の姿勢を重視する姿勢を強調した。
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