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Mirakl(ミラクル)CCOに聞くマーケットプレイスが日本の小売業にもたらす利点とは?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年10月5日 3時0分

業界で初めて、マーケットプレイス構築向けSaaSプラットフォームとしてソリューションを提供しているMirakl。そこでCCOChief Customer Officer)を務めるSophie Marchessou氏にマーケットプレイスの現状やコロナ禍の影響、日本の小売業にとってのマーケットプレイスの必要性について話を聞いた。

Mirakl CCO(Chief Customer Officer)の Sophie Marchessou氏 【プロフィール】HEC Paris卒、ハーバードビジネススクールでMBA取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでのパートナー就任を経て、2021年にMiraklへ入社。2023年3月より同社のCCOへ就任。

マーケットプレイスの現状について

─欧米におけるマーケットプレイスの現状について教えてください

 マーケットプレイスはこの10年で急速に成長したセグメントです。多くの小売企業は自社のマーケットプレイスを立ち上げ、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com:以下、アマゾン)をはじめとする大手のマーケットプレイスプラットフォームに対抗しています。マーケットプレイスはEC2倍超のペースで成長し、2022年には成長率の差が6倍に広がりました。

2022年におけるマーケットプレイスとeコマースの成長差は6倍

 我々が毎年実施しているアンケート調査によると、消費者はマーケットプレイスでの買い物に利便性を感じています。マーケットプレイスは品揃えが豊富で、より安く、顧客体験も優れているからです。小売企業にとってもマーケットプレイスは有益なセグメントであり、より多くの品揃えを提供する手段です。豊富な品揃えによってユーザーの離脱を防ぎ、より多くの商品を販売できます。

 Mirakl(ミラクル:本拠地、フランス)は2012年にフランスで創業し、マーケットプレイスに特化したSaaSソリューションのリーディングプロバイダーとして急速にグローバル化してきました。世界40カ国以上で事業を展開し、20225月に日本にも進出しています。顧客の過半数は欧州企業ですが、北米企業も25%を占めています。

 顧客の業態は多様です。百貨店の米メーシーズ(Macy’s)や仏ギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)、食品小売大手の仏カルフール(Carrefour)やルクレール(E.Leclerc)、米クローガー(Kroger)、ホームセンターの英B&Qや仏ルロワ・メルラン(Leroy Merlin)、スポーツ用品チェーンの仏デカトロン(DECATHLON)などでは、Miraklのソリューションを導入してマーケットプレイスを立ち上げています。最近はアパレルやビューティの領域も伸びており、ファストファッションブランドのH&MASOS(エーソス)などでもMiraklのソリューションが採用されています。

350社以上がマーケットプレイスを採用し、小売業も多数導入済み

─コロナ禍はマーケットプレイスにどのような影響をもたらしましたか

 コロナ禍ではオンラインビジネス全体が拡大し、マーケットプレイスも大きく伸長しました。マーケットプレイスは、より速くアジャイルなモデルです。コロナ禍以降、瞬時に適切な品揃えをすることは極めて重要になっています。マーケットプレイスを持つ小売企業は、コロナ禍で一変した消費者の生活様式やニーズにも素早く対応できました。たとえばデカトロンは、コロナ禍で需要が急増したトレッドミルやエアロバイクの品揃えをマーケットプレイスモデルによってすぐに拡充しました。自社で商品を調達する必要はありません。相応しいブランドと在庫を持つ販売事業者を選べばよいのです。

 マーケットプレイスは、コロナ禍でのサプライチェーンの混乱への対応にも役立ちました。マーケットプレイスの販売事業者がいれば、在庫を持っている販売事業者から消費者へより早く商品を届けられます。この2年はインフレに対する消費者の懸念が広がり、購買力が低下しています。マーケットプレイスであれば、幅広い人にとって安くて買いやすいエントリープライスで商品を提供できます。

マーケットプレイスの導入による成果について

─日本の小売業は利益率の低さが課題となっています。マーケットプレイスの導入は収益性の改善に寄与するのでしょうか

 近年、日本だけでなく世界全体で小売業の利益率が低下しています。利益率を高めるための強力な手段は、品揃えの一部をマーケットプレイスに持つことです。マーケットプレイスは、値付けや商品画像のアップロード、商品の配送など、多くの業務を販売事業者にアウトソーシングできるため、低コストで運営できます。

品揃えの一部をマーケットプレイスで強化し利益率を向上

 これまで小売企業は自社のオンラインプラットフォームへのトラフィックを獲得するために投資してきました。マーケットプレイスは、追加の固定費を必要とせずに売上を増やすための優れた手段といえます。

─日本では食品のEC化率がまだ低い水準にとどまっています。日本の食品小売企業はマーケットプレイスの導入によってどのようなメリットを得られますか

 欧米でも日本と同様、食品ECの成長率はアパレルや家電などのカテゴリーと比べて低い傾向にありますが、もっと取り込める余地はあると考えています。消費者は利便性を求め、生活必需品をオンラインで購入することもあるでしょう。

 食品スーパーは消費者が生活必需品を購入するために日常的に訪れる場所です。店舗で消費者とリアルな接点を持ち、消費者との信頼関係を構築している点で、アマゾンに対して競争優位性があります。

 食品小売のマーケットプレイスは、オンラインビジネスの成長にきちんとコミットし、関連のあるカテゴリーであれば成り立ちます。「すでにトラフィックがあるプラットフォームで、どうやって消費者に他の商品も買ってもらうか」を考えれば、加工食品や酒類、生活雑貨、調理器具、玩具など、品揃えを広げていくのは極めて当然です。関連のあるカテゴリーまで品揃えを拡張することで、店舗よりも幅広い商品を提供できるようになります。たとえばクローガーは、関連のある非食品カテゴリーの商品をマーケットプレイスで取り扱っています。

消費者の利便性を高め、集客力を強化できるマーケットプレイスは第3の選択肢

─日本の小売企業にとってMiraklの強みは何ですか

 マーケットプレイスの領域のリーダーであり、マーケットプレイスを立ち上げるための最も優れたマーケットプレイステクノロジー、エコシステム、専門性を備えている点です。Miraklは12年にわたる実績を持ち、約400社の顧客を擁しています。これはすなわち、Miraklのテクノロジーが国・地域や事業規模を問わず、あらゆる小売企業で導入できることを意味します。我々はさらなるイノベーションと投資を継続しており、明確なニーズに応える非常に強力なソリューションを構築しています。

 また、これまでの実績から「マーケットプレイスの立ち上げや運営において、顧客をどのようにサポートすればよいのか」の勘所をしっかりと押さえ、成功事例も積極的に共有しています。さらに、マーケットプレイスに適した販売事業者やマーケットプレイスの拡張や機能追加をサポートするパートナーのエコシステムを構築している点も強みです。

─マーケットプレイスの立ち上げにおいてどのような課題がありますか

 マーケットプレイスの立ち上げは、単なるITプロジェクトではなく、事業のトランスフォーメーションです。トランスフォーメーションには経営トップからの支援が不可欠であり、会社の優先事項として位置付けられなければなりません。企業戦略にきちんと組み込まれていなければ、失敗するおそれがあります。

 マーケットプレイスの立ち上げにあたって最初に考えるべきことは「自社の戦略は何か」です。消費者のペインポイント(悩みの種)の解消や顧客体験の改善によって、もっと消費者の役に立つためにはどうするべきかを考える必要があります。小売企業としての自社の提供価値をベースとし、「マーケットプレイスによってどのようにこれを拡張していくか」というアプローチで戦略を練っていくことが重要です。

 

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