10カ月で6店舗出店! 浅草ドミナント急拡大中の「神戸牛ダイア」、急成長の秘密
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年10月30日 20時59分
コロナ禍を乗り越え、インバウンドで再び盛り上がる・東京・浅草。その浅草で最近目立つようになっているのが、「神戸牛ダイア」の看板だ。看板には「KOBE BEEF STEAK」「Steak on the Rice」「SASHIMI」などの文字が写真付きで書かれている。
この看板を掲げる店が浅草に初めて出店したのは2022年12月のこと。新仲見世商店街の松屋寄りにある「浅草1号店」を出店して以来、「雷門東店」「観音通り店」「浅草楽天地店」「雷門西店」「国際通り店」と、2023年9月末までに、浅草エリア内に計6店舗を出店。さらには「ドン・キホーテ」などがある通称「浅草六区」に7店舗目を出店予定だ。
これらを展開しているのは神戸に本拠を置く、「神戸牛 吉祥吉グループ(以下、吉祥吉グループ)」だ。グループ全体で神戸牛を切り口とした8業態50店舗を展開する吉祥吉グループ。東京での店舗展開は2023年3月に設立された事業会社、神戸牛ダイア(東京都)が担う。
神戸牛には「無限の可能性」がある
吉祥吉グループの代表を務めるのが、現在62歳の赤木清美氏だ。1998年から神戸で小料理屋を営んでいた同氏。店舗が手狭になったことを理由に、2004年に店舗を移転し、移転先では「神戸料理」をテーマに、春は天然の鯛、夏は鱧、秋冬は松茸とフグといった高級食材を扱い、「居酒屋よりちょっと上の商売をしていた」(赤木氏)という。
そうした日々を送る中、あるときメディアから「神戸牛を扱っているか」という問い合わせがあった。このとき店では神戸牛を扱っていなかったが、赤木氏はとっさに「扱っている」と答えてしまったという。そこから神戸牛の仕入れを本格的に開始し、神戸料理専門店から神戸牛専門店にリニューアルオープン。2008年4月から神戸牛を専門に扱う「神戸牛吉祥吉」の店舗展開がスタートする。
2010年代に入ると、吉祥吉グループは出店を加速し、2014年に6店舗、2015年には10店舗を一気にオープン。出店地のほとんどが神戸と大阪で、インバウンドの「爆買いブーム」にも乗って勢いをつけた。ピーク時は大阪・道頓堀に17店舗を展開していたという。
吉祥吉グループが東京進出を決めたのは、赤木氏の知人からの紹介からだそうだ。神戸・大阪で繁盛していたこともあって、「神戸牛はどこでも儲かると思っていた」(赤木氏)とのことだが、この考えは外れ、東京に出店した最初の2店舗のうち1店舗は閉店することになった。
「浅草」に商機を感じた理由
赤木氏が「浅草」という立地を知ったのは、かつての従業員が浅草にカフェを開業して、その手伝いをしたことがきっかけだ。浅草はインバウンドが多く、大きな商機を感じ取ったという。浅草で焼肉店を営む経営者と親しくなり、従業員を引き継ぐことになったのも背中を押した。
「神戸牛の商売をしよう」と決意した赤木氏は、浅草で物件を探し、やがて元ブティックの建物を見つける。大家に自らの素性を説明して不動産業者に出向き、わずか1週間後に「浅草1号店」をオープンする。
一般的に、物件の所有者は「煙や脂、臭いが出るのではないか」と“肉業態”の飲食店を警戒するという。そうした懸念を解消するため、吉祥吉グループでは2022年8月、神戸に100坪規模のセントラルキッチンをつくり、ここで真空パックにした肉を各店舗に配送している。店舗では、脂身を取った肉を、タレではなく塩・コショウで焼くため煙や脂はほとんど出ない。さらに浅草1号店が「坪月商120万円を超える」という繁盛ぶりを伝えると、だいたいの物件所有者は納得して貸しに出すという。
人材については、コロナ禍にあっても事業を継続していた飲食業者に直接出向き、入社を働きかけた。「コロナ禍でも仕事を続けていた人たちは、飲食業が心底好きで、成長意欲を持っているからだ」という。こうした取り組みにより、2023年9月末までに80人体制を築いている。
浅草にドミナント出店するメリットについて、赤木氏は「視覚効果」を挙げる。インバウンドはウォークインで来店するパターンがほとんどで、「神戸牛ダイア」の看板がたくさんあることに安心感を抱いて入店するようだ。現状はお客の9割がインバウンドだという。従業員も約4割が外国籍で、流暢な英語で接客している。
「神戸牛ダイアは浅草で20店舗はいけるのではないか」と、赤木氏は今後も浅草での出店を継続する方針だ。さらには、そば店やもんじゃ焼き店などにも「神戸牛」をメニュー化してもらうことを働きかけたいとしている。
「これから全国の観光地で『神戸牛ダイア』を展開していきたい」と語る赤木氏。現地をよく知る事業者とパートナーシップを結ぶ、フランチャイズを超えた関係性により、ビジネスを広げていきたいという。赤木氏が「神戸牛」から感じとった「無限の可能性」はインバウンドがにぎわうことでさらに広がっていくことであろう。
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