イオンリテールの課題解決SC? 「そよら」が担う3つの役割とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年10月23日 20時59分
イオンリテールは、商業集積「そよら」の開設ペースを上げています。2020~22年の3年間では3ヵ所でしたが、23年から24年春までに合計9ヵ所になる予定で、今後も23年度並みの開設を計画すると言います。商業集積としてはなかなかの開設ペースで、先だっての武蔵狭山の概要説明会では「これからの成長エンジンの1つ」(イオンリテールSC本部長の蓑原邦明執行役員)との表現まで聞かれました。今回は「そよら」の本当の役割について、考えてみたいと思います。
フォーマットや出店戦略としては“バラバラ”?
「そよら」の名称は公募で決めたもので、「そら、寄って、楽しんでって!」に由来すると言います。それはそういうものとして、フォーマットとしては都市型SC(ショッピングセンター)と定義しています。これは、郊外型モールとの対比であることは明確です。ちょっとイメージが複雑になるのはここからで、すでに開設した店舗規模は4000~2万3000㎡と幅が広く、開設パターンも新店あり、改装あり、建て替えありで、エリアも関西に始まり関東、東海エリアに散っています。
フォーマットや出店戦略としてはバラバラの印象があり、記者職としては「そよらとは要するに?」と問わずにはいられません。取材で理解できたことは、「そよら」は、イオンリテールが抱える課題への対策であり、主に3つの役割を担っているということです。
①出店機会の創造 生活圏に近づくSC
1つ目は出店機会の創出です。郊外モール型が「広域から顧客を呼び込む」フォーマットであるのに対し、そよらで目指す都市型は、「顧客の生活圏にSCの方から近づく」ことが発想の起点になっています。この転換の背景にあるのは人口減少・高齢化、さらには車社会の変容です。
生活の近場で来店頻度の高いフォーマットに必要な要素として、そよらは10の機能を挙げています。列挙すると、食品スーパー、生活サポート、ファーマシー、ベーカリー、ランドリー、クリニック、シェアスペース、習い事、メンテ系サービス、雑貨・日用品です。
これらの機能を備えた都市型SCとして20年3月に1号店の「そよら海老江」(大阪市福島区)を開設しましたが、折り悪くコロナ禍と重なってしまいました。当初、都市型SCに誘致するのは感度の高い尖ったテナントを志向していたそうですが、環境が一変したことで、生活がそこで完結する利便性をより重視するようになったといいます。とはいえ、先に挙げた10機能は基本要素として踏襲されています。
②老朽化店舗を再生する選択肢の1つ
そよらで目指す2つ目の課題解決は、老朽化店舗の再生です。そよらは24年春までに9店舗体制になりますが、このうち5店はオープンから40年前後を経た店の建て替えです。他は改装2店、新設2店です。
古い総合スーパー(GMS)店舗の中には、今でも潤沢な商圏環境を保っているケースもあるわけで、そういった店舗を建て替える事例は、フード&ドラッグのイオンスタイルを核とする「そよら」に限りません。商圏によってはGMSのまま建て替える場合もあります。22年10月に再オープンしたイオン天王町SC(横浜市保土ヶ谷区)はその例です。
老朽化店舗を建て替える際の選択肢として、そよら屋号なら核店舗はフード&ドラッグ、イオン〇〇SC屋号ならGMSという使い分けをしていくそうです。
③商圏内のすみ分け、さらには拡張へ
そよら3つ目のソリューションは、商圏が重なる複数店舗のすみ分けです。イオングループは、その歴史の中でいくつかのGMSチェーンを統合してきました。そのため、同じ商圏内にGMS(またはそれを核とした商業集積)が重複しているケースが、そこそこあります。
それらのうち、店舗の一方を「そよら化」することで、機能を分けようという発想です。JR茅ヶ崎駅周辺のそよら湘南茅ヶ崎とイオン茅ヶ崎中央店や、西武新宿線・狭山市駅周辺のそよら武蔵狭山とイオンスタイル狭山は、そういった事例です。
どちらも、そよらを開設する前にもう一方の店もリニューアルしており、ターゲットや利用目的の違いを際立たせています。狭山市のケースでは、イオンスタイル狭山はキッズ関連を強化し、そよら武蔵狭山の方は大人をターゲットにした直営衣料をショップスタイルで導入しました。そよらの核店舗はGMSではないけれど、商圏を見て衣料品を展開する場合もあるということです。
そよら武蔵狭山は老朽化店舗の建て替え&ドミナント内のすみ分け事例ですが、2025年には隣駅の入曽駅近くに、完全な新設で「そよら入曽」がオープン予定です。このことから、そよらは既存ドミナントエリアの修正だけでなく、商圏拡張のフォーマットとして展開していく意志を確認できます。
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