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オイシックスらが行うフードパントリー活動が、サポート企業を50社以上に広げられた理由

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年11月13日 20時59分

連携先の一つ「みなと子ども食堂」のフードパントリーで配布された食品

オイシックス・ラ・大地(東京都/高島宏平社長:以下、オイシックス)では、ESG(環境・社会・ガバナンス)活動の一環として、社会貢献活動に力を入れている。その一つが、ひとり親世帯を中心とした困窮家庭への食品支援事業「WeSuppotFamily」だ。2023年9月時点でサポート企業は50を越えた。どのようにして企業からの協賛を広げたのか。

フードパントリー
連携先の一つ「みなと子ども食堂」のフードパントリーで配布された食品

食品支援のプラットフォームを構築

オイシックス・ラ・大地では「食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する」という企業理念のもと、「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」など、安全性に配慮した食品をサブスクリプションモデルで提供する事業を行っている。

社内には「ソーシャルコミュニケーション室」という部署があり、ESGの観点を取り入れたさまざまな活動に取り組んできた。

その中のひとつが、ひとり親世帯を中心とした子どものいる困窮家庭に向けた食品支援のプラットフォーム「WeSuppotFamily」。ESGのうち「S」(社会とのかかわり)に当てはまる。

前身となったのが、新型コロナウイルスの感染拡大直後である20年4月に立ち上がった「WeSupportMedical」だ。社会事業をコーディネートする一般社団法人のRCF(東京都/藤沢烈代表理事)と、物資の保管・管理を行うココネット(東京都/河合秀治社長)、オイシックス・ラ・大地が提携し、124の医療機関に294万個(約9億5000万円円相当)の物資寄付を行った。WeSupportMedicalとしての活動は21年11月で終了しているが、プラットフォームを引き継ぐ形で「WeSuppotFamily」が立ち上がった。

子どものいる貧困世帯(年収114万円以下の世帯)は全国で約268万世帯あると言われ、うちひとり親世帯は66%を占める。コロナ禍の収束後も、物価高騰などによって、母子家庭では食事回数や品目を減らすなど、食生活への影響が出ていることが、これまでの調査から明らかになっている。「WeSuppotFamily」はこうした背景を踏まえ、ひとり親の困窮家庭に無償で食品を配布する「フードパントリー」と呼ばれる活動を支援している。

物流・配送の手間を減らしサポート企業増やす

オイシックス・ラ・大地の活動で注目したいのが、サポート企業の輪を大きく広げている点だ。活動開始間もない21年12月時点では18だったが、23年9月時点ではネスレ日本、井筒まい泉、デルタインターナショナルなどが加わり、計55に増えた。連携する支援団体も、23年9月時点で60にのぼる。

当初は缶詰・レトルト食品など常温の食品に限定して配送を行っていたが、現在では一部の自社倉庫、メーカーから冷凍食品を支援団体に直接届ける動きも生まれている。

短期間で協賛企業を増やすことができた一因となったのが、企業側の負荷を減らすサポートの仕組みだ。

近年では大手食品スーパーや食品メーカーの間で、包装の破損や過剰在庫などにより、店頭で販売できなくなった食品を、関連団体や困窮世帯に無償で提供する傾向が強まっている。

こうした活動を行う企業にオイシックス・ラ・大地が課題をヒアリングしたところ、多く挙がったのが支援団体への食品の納品、配送だった。とくにメーカーの規模が大きくなるほど、寄付する食品が数千個単位にのぼることもあり、受け入れ先を探すのに苦労する傾向がみられたという。

オイシックス・ラ・大地、コーポレートコミュニケーション部部長・大熊拓夢氏

この課題を受けて「WeSuppotFamily」は活動企業の苦労を請け負う方策を考えた。協賛企業はまず、神奈川県川崎市にある事務局の食品倉庫に食品を納品する。その後、事務局が各支援団体との間でマッチングを行い、支援先のニーズに合わせて送り先を決定する。受取日時、数量、物流などの調整も、事務局側で行っている。

オイシックス・ラ・大地、コーポレートコミュニケーション部部長の大熊拓夢氏は「企業からすると、支援団体の開拓や、複数の納品先の調整は不要で、効率的に困窮世帯への支援を行うことができる。この点にメリットを感じていただき、サポート企業からの紹介や、企業からの直接の問い合わせが増えていった」と話す。

食品提供から体験提供へ支援を拡大

こうした「WeSupportFamily」の活動を通じて見えてきた課題から、新たな活動も始めている。食品提供だけでは解決ができない「体験の格差」へのアプローチだ。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが実施した調査によると、年収300万未満の家庭では、子どもの約3人の1人が、スポーツ・ピアノなどの習い事やキャンプといった学校外での体験の機会を、年間を通じて全く持っていないという。

こうした背景を踏まえ、23年から「WeSupport Family」は、支援世帯を対象にしたウィンナー作り体験や醤油蔵見学といった食の体験企画の実施に注力している。今後、協賛企業には食品や資金の寄付とあわせて、体験活動についても協賛を呼びかけていく予定という。

前述のように、サステナビリティ施策の一環として、家庭では消費できない食品を店舗で収集し、フードパントリー活動団体に寄贈する食品スーパーは増加傾向にある。

しかし、他企業や団体と連携して活動にあたる事例はそれほど多くはない。社会課題の解決に向けたインフラづくりを行うICHI COMMONSが約1200のNPOを対象として行った調査では、企業と連携して活動を行うNPOはうち8%に留まったという。食料品メーカー、社団法人、支援団体NPOなど、さまざまな立場と連携しながら「貧困」という社会課題に取組む「WeSupport Family」の活動は、食品小売業界のESG活動のあり方を考える上で示唆に富むモデルを提供している。

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