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めざすはデジタル発の製菓メーカー! おやつサブスクのスナックミーのユニークすぎる事業戦略

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年11月16日 20時59分

snaq.me清澄白河

月、あるいは年単位で定期的に料金を支払い、商品やサービスを利用する「サブスクリプション」。近年は、音楽、動画、アパレル、クルマなどさまざまなサブスクリプションビジネスが台頭しており、消費者の財布シェアを競っている。そうした中、おやつのサブスクリプションというユニークなビジネスを手がけるのが、2015年創業のベンチャー、スナックミー(東京都)だ。デジタル発の、“お菓子”というモノではなく、“おやつ”という体験を提供するブランドを生み出していく「おやつ体験メーカー」をめざし、チャレンジを続ける同社の取り組みについて、代表取締役社長の服部慎太郎氏を取材した。

おやつ8種を専用ボックスに詰め合わせた「おやつ定期便」を届けるサブスクリプションサービスの「スナックミー」

おやつサブスク「snaq.me」とは!?

 「snaq.me」とは、食べきりサイズ(20~30g)のおやつ8種を専用ボックスに詰め合わせた「おやつ定期便」を、ユーザーの自宅や職場に届けるサブスクリプションサービスだ。届ける頻度は「2週間に1回」「4週間に1回」の2パターンから選ぶことができ、1ボックス当たりの価格は1880円(税込、別途送料330円)となっている。

 「snaq.me」を利用するユーザーは初めに、公式サイト上で食の好みや除外したい食材などの情報を入力する「おやつ診断」を受ける。その後、購入手続きを行うと、自宅や職場などにおやつ定期便ボックスが届く仕組みだ。届いた商品を食べた後は、マイページ上で評価をつけることができ、食べたいおやつをリクエストすることも可能だ。

 「snaq.me」では、常時100種類以上の菓子を揃えており、そのラインナップは毎月更新される。1000億通り以上の組み合わせの中から、自分好みの8種のおやつが定期的に届くというわけだ。

 ラインナップされている商品も特徴的だ。「snaq.me」のおやつは全商品が人工甘味料、合成香料、合成保存料、漂白剤などが不使用で、ナチュラル素材だけを原料としている。スナックミーは現在、日本全国244社の生産者と提携し(2023年3月時点)、商品の製造・開発を行っており、個人でおやつづくりをしている職人から「道の駅」などで菓子を販売している地場メーカーまで、多彩な生産者と協業関係にある。2016年3月のサービス開始からの約7年間で開発したおやつの種類は2300を超えている。

 ユニークなのがおやつ定期便で届く8種のおやつはユーザー自身では選べないという点だ。マイページのリクエスト機能で好みの商品をリクエストして毎月届けさせることも可能だが、「snaq.me」では基本的に同じ商品が続けて届かないようになっている。

 おやつ定期便の8種のおやつはスナックミー側が独自にセレクトしており、ユーザーはボックスが届いたときに初めてどんなおやつが届いたかがわかる。今まで知らなかった新たなおやつと出会ったときの喜びを楽しんでもらいたい、という想いが込められている。

1000億通り以上の組み合わせの中から、自分好みの8種のおやつが届く仕組みとなっている

スナックミーの創業ストーリー

 近年は、「ロッテ」「森永製菓」といった大手菓子メーカーのほか、「GODIVA」のような高級メーカーもサブスクリプションサービスに参入しているが、ベンチャー企業であるスナックミーはなぜ、「おやつのサブスク」を開始するに至ったのだろうか。

 「snaq.me」の基盤となっているのが、服部社長の「食」への興味関心だ。大学卒業後、大手コンサルティングファーム、大手IT企業などを経て、スナックミーを創業した服部氏。会社員時代に訪れたマルシェで出会った、シンプルな原材料を使ったおやつの味に感動し、「こんなおやつを身近に買えるようにしたい」という同氏の想いがスナックミーの原点となっている。

スナックミーの服部社長

 「snaq.me」がサービスを開始した2016年頃は、現在ほどサブスクリプションビジネスがメジャーではなかったが、「マルシェで新しいものに出会う」という体験をウェブ上で実現するためにサブスクリプションというモデルに目をつけたかたちだ。

 創業当初のスナックミーは、都内のマルシェやローカルの道の駅で販売している菓子を買い付け、それらをパッケージにして販売していた。サービスを続ける中で「スナックミーオリジナルのおやつが欲しい」というリクエストがあったことから、16年6月からおやつの自社開発をスタートする。現在、スナックミーの商品開発チームには、食品小売の経験者やパティシエ出身のメンバーも在籍しており、日々開発を行っているという。

リアル店舗を出店! その狙いは?

 さらに、スナックミーは2021年8月に「銀座ロフト」(東京都中央区)で初の常設店頭販売を開始し、2022年4月には初の常設リアル店舗「snaq.me 清澄白河」(東京都江東区)をオープンしている。

 オンラインを中心に事業展開してきた同社がリアル店舗を出店する目的は2つあるという。1つが、店舗でイベントを開催することでユーザーと直接コミュニケーションをとること。もう1つが、「スナックミーの存在は知っているものの、サブスクの登録にはハードルがある」という消費者に、気軽に商品を試してもらうことだ。実際に「snap.me清澄白河」では、地域の住民がリピーターとなっているそうで、「サブスクやECにはない、新たな価値を提供できたという手応えを感じています」(服部氏)という。

 服部氏は続ける。「僕も週に2回は必ず店舗に立ち、どのようなお客さまが実際に当社の商品を購入するかを見るようにしています。そこで得られた気づきが事業に生きることも多く、現場に立ってお客さまと接し、リアルな反応を見るというのはとても重要だと考えています」

snaq.me清澄白河

社長自らユーザー宅を訪問する理由

 直営店での接客だけでなく、「snaq.me」会員への電話インタビューも服部氏自ら行うことも多く、実際にユーザーの自宅に訪問することもあるという。社長自らこうした取り組みを行う理由について、服部氏は「良くないのは、アンケートの結果やマイページの情報を見ただけで、お客さまのことを知った気になってしまうこと。実際に話すことで、『当社のお客さまはこのような方なのだ』ということがリアルにわかります」と述べる。

 「たとえば、子育て中の女性ユーザーのご自宅に伺い、当社の商品をどう利用しているか聞いたところ、『ふだんは子供に見つからない場所におやつを隠していて、子供が寝た後に食べている』ということがわかりました。ヒアリング前は『お子さまと一緒に食べているのだろう』と想定していましたが、実際はそうではなかったのです。また、許可をもらってそのお客さまに冷蔵庫の中を見せてもらうと、こだわりの調味料を多く使用しているなど、食そのものに高い関心をもっていることも判明しました。このように、お客さまと会話をすると、LINEや電話などではわからないリアルな利用シーンが浮かび上がってきます」(服部氏)

 スナックミーでは、そうしたリアルなお客の利用シーンを社内で共有し、商品開発や商品提案に役立てているという。

デジタル発のおやつ体験メーカーに!

 サブスクビジネスは2020年頃から盛り上がりを見せ、現在はさまざまな定額制サービスが“乱立状態”にあり、消費者の財布をめぐってしのぎを削っている。顧客からすると、商品やサービスを楽しむ選択肢が増えた一方で、事業者側から見ると、競争が激化し、以前のような成長ペースを維持するのは難しくなりつつある。

 そうした環境下、スナックミーではさらなる成長をめざすべく、小売向け販売・卸事業の展開を進めている。2021年4月から「ファミリーマート」での販売をスタート、22年からは「ナチュラルローソン」でもスナックミーの商品の扱いを開始した。そのほかにもイオン(千葉県)グループの各店舗などに販路を拡げている。

人気商品の「北海道産皮付きじゃがいものフライドポテト」

 今後の展開について、服部氏は「当社は『おやつと世界を面白く。』という理念を掲げており、これを実現するにはサブスクとECだけでは足りません。製菓業界は長い歴史があり、トップメーカーの売上高は2000億円以上と大きな差があります。スタートアップである当社は、『デジタル発の新しいおやつ体験メーカー』としてこれまでにない新しいアプローチで、そうした大手メーカーに肩を並べる存在になりたいと考えています」と話す。

 「大手の製菓メーカーの有名ブランドは、売上高で約100億円の規模があると言われています。定量的な目標としては、当社もまずはそれぐらいの規模をめざしたいと考えています。ただ、大きな数字を追いかけるのではなく、新しいかたちの『おやつ体験メーカー』をめざすというのが、長期的なビジョンです」(服部氏)。

 服部氏が述べる長期ビジョンを実現するために重要なるのは、やはり「リアル小売」という販路だ。スナックミーでは、当面のあいだ、先述の直営店の拡大のほか、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアといった小売チェーンのへ販路拡大に注力するとしている。サブスクを飛び越え、メーカーのポジションをめざして成長を続ける同社の展開に注目だ。

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