売上伸長だけじゃない!食品スーパーが積極投資したくなる冷食の魅力とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年11月26日 20時58分
冷凍食品の需要は拡大を続けています。消費者にとってのメリットは・・・・、もう語り尽くされているでしょう。一方で、冷凍食品の売場を拡大している食品スーパーなどの小売業にとっても、ただ売上が伸びるという以上のメリットがあり、「冷食だからこそ」可能な挑戦を試みています。それは改装投資や電気代をかけてでも、冷食売場を拡大したくなるほど魅力的なメリットです。今回は、小売にとっての冷食の魅力を明らかにしたいと思います。
メリット1 高価格帯にチャレンジ
冷凍食品が小売業にもたらすいくつかのメリットは、すべて販売期限の長さが前提にあります。販売期限が長いからこそのメリット、その1つ目は、「高価格帯の商品にチャレンジできる」ことです。
コロナ禍以降の冷食売場のトレンドといえば、グルメ商品の強化です。外食の味、ご当地の味、世界の味などがコーナー化され、それらの単価は総菜部門のデリカ商品を上回る価格帯になることも珍しくありません。単品レベルで高価格帯になるだけにとどまらず、イオンリテールの冷食専門店「@フローズン」では、前菜からデザートまで単品を組み合わせ、総額4000~6000円台になるフルコース提案も試みています。
期限が当日、長くて数日の総菜デリカでは、数千円もの商品づくりはロスが怖くてやり切れそうにありません。日配のチルド商品でも、冷食ほどの販売期限を確保するのは難しい場合がほとんどです。お取り寄せグルメ的な、またはご褒美スイーツのような価格帯の商品を陳列してみようかと決断できるのは、冷凍の販売期限があってこそです。
メリット2 遠方からの調達が可能
高価格帯へのチャレンジが進み、最近の冷食売場には全国各地の外食や専門店の味が増加中です。冷食ならではのメリットの2つ目は、遠方からの調達を可能にすることです。
どんなにおいしく優れた品質でも、納豆・豆腐のような販売期限では、遠方から取り寄せて陳列というわけには、なかなかいきません。単価的にも輸送費をかけられるのかという問題もあります。ご当地メニューには知名度・ブランド力のあるものも多く、高単価でもそれなりの販売期限があれば売り切る見通しが立ちます。
食品スーパーがご当地の有名商品を展開できるようになったのは、コロナ禍の副産物です。人の動きが制限されたことで、地域の専門店も外食の名店も新たな販路を求め、冷食カテゴリーに進出しました。店舗で売れない、地元で売れないことへの対処、いわば「商いのリモート対応」を進める手段が冷食化でした。
そういった名店にとっても、コロナ禍が収束したとはいえ、店舗と外販のハイブリッドをあえて止める理由はないでしょう。冷食が可能にする各地の味の増加は、消費者にとっては新しい発見の機会となって、冷食の需要をさらに押し上げています。
メリット3 遠方に販売できる
距離に制約されないことのメリットは、遠方からの調達にとどまりません。遠方への販売も、冷食であれば可能性が広がります。
例えば予約販売のクリスマスケーキや、おせちです。これらは消費する日にちが固定しているので、チルド商品の場合だとその日に目掛けて製造キャパにも物流キャパにも限界が出てしまいがちです。冷凍なら、あらかじめ作りおくことが可能になります。
今年(2023年)の百貨店ギフトのクリスマス用ケーキの中に、届け日は12月21日か22日と指定されているものがありました。クリスマスには早すぎるのでは? と思いましたが、よく見れば冷凍で配達とあります。それならクリスマス当日に合わせて解凍すればいいわけです。冷食には製造や物流のピークを緩和する効果もあります。
以前の記事「EC化率4%台からの展望 食のデジタルシフトはどこまで進むか」でも触れましたが、大丸松坂屋百貨店は、おせちの販売増に向け、冷凍おせちの拡販を図っています。同社のおせち商品に占める冷凍比率は22年で1割ほどですが、オンライン専業の楽天市場になると、おせち販売の7割が冷凍商品と言います。全国配送には冷凍の方が向いています。
もっと日常的な消費でいえば、イオングループのオンラインマーケット「グリーンビーンズ」は、鮮魚ニーズを満たす方法として冷凍の刺身や切り身の展開に力を入れています。同事業の特徴である広域配送の仕組みとまとめ買いスタイルを追求するうえで、生の刺身のように当日期限の商品ではサービスのコンセプトと相入れません。冷食で補うことができれば、鮮魚のまとめ買いという購入スタイルが実現します。
冷食だからこそ高価格帯に挑戦でき、全国から高価格帯の商品を調達でき、それらをネットを通じてリアル店舗の商圏よりはるかに遠方にまで販売できる・・・・。こうしたメリットが、店側の意欲を掻き立てて品揃えを広げ、それが消費者ニーズをいっそう高め、さらに店側の商品開発意欲を駆り立てるという好循環を生んでいます。
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