24時間健康相談ができる!スマホアプリ活用したイズミの健康経営とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年12月24日 20時59分
従業員の健康管理を通じて、結果的に業績や企業価値向上をはかる「健康経営」に取り組む企業が増えている。こうしたなかイズミ(広島県/山西泰明社長)は、健康経営を実践するための施策の一つとして、医師にオンライン相談ができるアプリ「HELPO」(ヘルポ)を導入している。その導入経緯や効果を聞いた。
医師への直接相談ができる
オンラインサービス
「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、実践することが、従業員の活力や組織の活性化をもたらし、結果的に業績の向上へとつながるという考え方のことだ。
近年、小売業ではヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)や関西スーパーマーケット(兵庫県/福谷耕治社長)をはじめ、自社HPなどでも「健康経営の推進」を標榜する企業が増えている。方法は企業によってさまざまだが、優れた取り組みを行う大企業や中小企業について、経済産業省が顕彰する「健康経営優良法人認定制度」も始まっている。
中国・九州地方を中心に105店舗を運営するイズミも、健康経営を推進する企業の一つだ。従業員の健康保持・増進に関係する業務を統括するCHO(Chief Health Officer)も配置し、積極的にさまざまな施策に取り組んでいる。
そんな同社が22年6月から、従業員が気軽に健康相談できるようになることをねらいとして導入したのが、ヘルスケアアプリ「HELPO(へルポ)」だ。
「HELPO」は、ソフトバンクの子会社であるヘルスケアテクノロジーズ(東京都/大石怜史社長 兼 CEO)が提供するヘルステックサービスだ。主な機能としては、スマホアプリからチャット形式で医師・看護師・薬剤師からなる医療チームに健康相談ができる「健康医療相談チャット」や、自宅やオフィスから医師の診察を受けられる「オンライン診療」などがある。「HELPO」側が提供するのはオンライン診療のプラットフォームで、診療は提携先医療機関が行う。
ヘルスケアテクノロジーズには医師、看護師、薬剤師など数十人が自社の専属スタッフとして在籍しており、健康医療相談には、これら医療専門家が直接対応に当たる。
オンライン診療は夜間(平日22時まで)や土日の診療にも対応しており、予約いらずでスピーディな対応ができること、チャットには24時間365日いつでも相談が可能なチーム体制を組んでいることがサービスの強みだ。
導入している企業の業種はさまざまだ。イズミのような小売業のほか、自動車業界、保険業界、出版業界など、多様な企業が健康経営の推進や福利厚生の拡充を目的に導入している。
健康経営宣言をきっかけに
アプリを導入
イズミが「HELPO」を導入したのは22年、グループとして健康経営宣言を出したことがきっかけだった。
宣言には、「地域住民に対し地域の健康寿命を伸ばしyoume(夢)ある社会に貢献します。」という文言が含まれる。「住民」と銘打っているが、同社の従業員は勤務する店舗の近隣に住んでいることが多く、「地域住民の健康」は「従業員の健康」とほぼイコール。従業員の健康寿命を伸ばすため、新たな福利厚生制度を用意できないかと会社側が検討するなか、目に留まったのが「HELPO」だった。
多くの小売業と同様、イズミの従業員はシフト制で店舗に勤務していることが多い。一般的なオフィス勤務者などと比べると不規則な働き方をしているため、自分や家族の体調に異変があったとしても、病院に行く時間が確保できないこともある。そこで、病院が開いていない時間帯も、チャットやオンライン診療による健康相談ができれば、症状の放置や重症化を防ぐことにつながると考えた。
同社の従業員数は正社員が4407人、パートタイマーが1万930人(連結、23年2月28日現在)。就業形態を問わずさまざまな人々に使ってもらうため、「HEPLO」は正社員に限らず1年以上同社に勤務するパートタイマーも利用可能とした。導入にあたっては、社内説明会のほか、社内報や店舗休憩室内のデジタルサイネージも用いて、「HELPO」やアプリの機能の認知を広げていった。
人間関係やダイエットの悩みも
導入後約1年間、月ごとのアクティブユーザー(アプリにログインした人数)は、約3000人前後で安定的に推移。オンライン診療は月に数件程度、健康医療相談チャットについては月に100件程度の利用がある。
イズミの直近1年分の相談内容について集計を取ったところ、最も多かったのは風邪症状で、コロナとの違いをたずねるものも含まれた。次いで手荒れをはじめとする皮膚症状、手足間接の痛みに関する相談と続いた。
相談は身体症状に限らず、どのような内容でも受け入れている。ヘルスケアテクノロジーズ エンタープライズビジネス本部 カスタマーサクセス課の斉藤卓也氏は、「職場や家族など人間関係に関する悩みや、ダイエットに関する相談もあった。気になってはいるが、病院に行くほどのない悩みを一旦話してみようという感じで利用していただいている」と話す。
本人に限らず、家族に関する相談も多い。とくに子を持つ従業員の場合、わが子の急な体調不調に直面してしまうこともある。アプリを利用した従業員からは、「子どもが熱を出したとき、医師に薦められた薬を使ったらすぐに熱が引いた」といった声も寄せられている。
イズミ総務部広報課の飛子晴美氏は「自分のことでも家族のことでも、ちょっと気になることがあれば相談ができるため、大きな病気を未然に防ぐことができる。そのことが従業員の満足度向上や、ひいては離職の防止にもつながると考えている」と話す。
同社ではほかにも、生活習慣病のリスクを抱える従業員に対し、健康相談を推奨する取り組みも行っている。リアルとオンラインの両面で健康不安をカバーすることで、従業員の満足度をあげ、業績向上へとつなげていく考えだ。このようにオンラインツールも活用したイズミの取り組みは、健康経営の新たなあり方を示している。
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