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諦めない業界団体、登録販売者「不要論」へ起死回生の一手!?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年12月21日 20時59分

Tzido/iStock

厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会」(販売制度検)で「不要論」につながる制度改正が固まった登録販売者(登販)だが、本当の結論はまだ先だ。販売制度検の報告書を受け、来年早々から上部の会議体である厚生科学審議会で再度検討を行い、ここでの結果を受け、厚労省が改正法案を作成し再々度、国会で審議する。今後、こうした過程のなかで「不要論」を打ち消すチャンスはまだある。本稿は全6回からなる短期集中連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」の第5回です。

Tzido/iStock

日登協が画策する全薬協との「合併」

 日本医薬品登録販売者協会(日登協)は「不要論」の撤回へ、次の策を窺う。厚労省の担当課長に提出した「今後、反対意見を出さない」といった誓約書の効力は依然として残るものの、“奥の手”を準備しているようだ。そして、その一手を強力に補完するのが「組織力」であり「政治力」、すなわち「数」だ。

 日登協は、2006年の改正薬事法の可決成立を受け、2007年に設立。初代会長には全日本薬種商協会の会長だった鎌田伊佐緒氏が就いた。すでに触れたように鎌田氏が組織の先を見据え、薬種商とドラッグストア(DgS)業界の融合を目指していたことが逆に協会内の反感を生み、業界団体が2つに分裂してしまった。

 それぞれの組織が独自の道を歩んでいるのだが、日登協は日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)に所属する登販の「教育・研修機関」として、その役割を担ってきた。現在は、2代目の樋口俊一会長(JACDS副会長)のもとで、会員数は5万3000人に達する。また、受験資格や管理者要件などの制度変更に対応するため、2021年には「政策提言」をミッションに加えた。政治力の行使へと舵を切った格好だ。制度改正に翻弄され続ける状況に対して“物申す”団体を宣言したのだった。

 対して、薬種商協会から移行した全日本医薬品登録販売者協会(全薬協)は、ピーク時には約1万4000人の会員を擁していたものの、現在の会員数は「恥ずかしくて言えない」(全薬協幹部)ほどにまで減少。数千人程度と見られ、県単位の組織もすでにいくつかが解散し、衰退の一途を辿っている。かつては調剤を行わない「薬店」として一定程度の存在感を示していたものの、DgSの隆盛に圧され、「薬店」という言葉すら見当たらなくなった。

 ただそれでも薬種商は店舗の建物自体に与えられる資格であったことから、全薬協の会員はすべてが「経営者」。会員数が激減したとはいえ、ギリギリ政治力を保っている。そこで日登協が画策するのが、全薬協との「合併」だ。業界団体が一本化し、統一することで内外へのプレゼンスは高まる。すでに日登協は秋波を送っている。

日登協は「組織内独立候補」として国会議員の擁立をめざす

 合併を打診されている全薬協の杉本雄一会長は「公益的な視点から一緒に仕事をするのなら、なんの障害もない」と語ったうえで、「経営者の利益からバイアスがかかる」日登協の現状を指摘。「職能団体としての役割を果たせるなら、全面的にある」といった考えを示す。合併の可能性は低くはないものの、ハードルはそれなりに高い。

 一方、今、日登協が取り組んでいるのが署名集めだ。「登販制度を軽視する制度改正に断固として反対」といった意見に賛同する署名の募集を展開している。すでに会員の2倍以上、10万人分を集めた。現在はさらに上方修正し、30万人の署名を目標に掲げる。最終目標は40万人だ。なぜ40万人か──。「政治の世界では獲得名簿数の3割が実際の票になる」(日登協幹部)ともされ、40万人を集めればその3割、約12万票が弾き出される。12万票あれば、参議院の全国比例区代表に議員を送り込めるという算段だ。

 すなわち、日登協は「組織内独立候補」として国会議員の擁立をめざしている。実はJACDSなどの経営者団体のウイークポイントは「選挙に強くない」という点。票を集められない。多くの社員を抱える企業体ではあるものの、会社のトップが号令を掛けても票には結びつかない。もちろん公職選挙法違反となるので、オモテ向きそんなことはできないのだが、大企業の社員は「社長の言うことなんか聞かない」というのが実情のよう。今回の署名集めは、そんな経営者団体の弱点を克服する側面もある。

 そのうえで、署名集めに関しては、日登協の政治団体である日本医薬品登録販売者連盟(日登連)が担う。ここがキモ。「不要論」の反対意見表明もまた、政治団体である日登連が敢行するといった手筈を整える。厚労省に書かされた誓約書は日登協の会長名。だから“別組織”である日登連が「反対」を表明する作戦だ。今後、全薬協との合併が実現すれば組織力は上がり、政治的圧力も増す。同時に40万人分の署名の「数」も合わせ、厚労省と真っ向対峙するというのが彼らのシナリオ、次の一手だ。(つづく)

●連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」
第1回 忍び寄る登録販売者「不要論」 新資格に突き付けられた最大の危機とは
第2回 JACDS代表も反対せず…厚労省検討会で露になった登録販売者「不要論」
第3回 厚労省が誓約書を要請……阻止できなかった登録販売者「不要論」のウラ事情
第4回 「不要論」跋扈の登録販売者、その誕生秘話

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