ピンチの登録販売者、その「組織」と「個人」
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年12月25日 20時59分
登録販売者(登販)を巡る“影”=「不要論」について連載してきたが、最終回は登販にまつわる「組織」と「個人」について考えてみたい。組織に関しては「職能団体」が焦点となり、個人に対してはその「職能」にスポットがあたる。
本稿は全6回からなる短期集中連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」の最終回(第6回)です。
登販の統一団体が職能団体として機能するには
まずは「組織論」から。連載第5回でも触れた通り、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)と連携する日本医薬品登録販売者協会(日登協)は、薬種商から引き継いだ全日本医薬品登録販売者協会との合併をめざしている。登販の職能団体としては、統一化は避けられない。組織のプレゼンスを一段引き上げるだけでなく、対外的に強くモノが言える。
なおかつ、職能団体として確立するには、登販の資格者が組織のトップに就くことも必要だ。登販のトップ起用に関しては、幹部に対しても当てはまる。一方、現場で働く登販が組織を担うとなれば、微妙な問題も孕んでくる。例えば日登協に所属する5万人超の登販は、ほとんどがJACDS加盟のドラッグストア(DgS)企業に勤務し、会費等は企業が支払っている。個人資格の職能団体というよりはむしろ、企業にどっぷり浸かる組織だ。すなわち、登販自身が「独立」しなければ話は始まらない。
そして、独立した登販が職能団体組織の中核を背負うこととなれば、次に浮かび上がってくるのは「労使問題」。経営側ではない労働者側が幹部に就くわけだから、JACDSとの関係は微妙になる。どうしても、職場環境や賃金待遇などがテーマに上がり“労使交渉”の色彩が濃くなる。それでも登販自身の組織だ。企業はある程度許容すべきで、登販個人も所属企業との関係は是々非々で臨むべきだろう。
労働側の勤務者だけの組織は、医療・医薬業界でもさほど多くはない。看護師の職能団体である「日本看護協会」や病院薬剤師の「日本病院薬剤師会」くらいだ。ただし日本病院薬剤師会の場合、幹部は国公立大学の薬学部教授や大病院の薬剤部長などで、いわば「エリート」。勤務者の組織といっても、若干毛色は異なる。よって労使問題には発展しない。むしろ登販に近いのは看護協会かもしれない。労働者だけが構成員。登販の立場と似ている。
看護協会は前回の参院選でも組織内独自候補を立て、17万票以上を獲得し当選させている。このとき、日本薬剤師会の候補が集めた票数は12万票程度。組織力、政治力とも看護協会のほうが長けている。さらに看護師といえば、病院内での存在感はある意味、医師以上だ。ときに、医師に指示する看護師すら在籍するという。しかも患者からの信頼は厚い。
登販がめざす世界は、組織においても、個人においても、看護師に見習う点が多い。職能団体として参考になる。そのうえで最大のポイントは、看護師のように患者からの絶対的な信頼を得ることだろう。DgSへ一般用医薬品(OTC)などを買い求めに来る、生活者からの絶対的な支持だ。
最重要ミッションは
「プロフェッショナルとしての存在になること」
第2類と第3類は全OTC市場の9割を超える。その市場を担うのは登販。OTC販売に対しては、薬剤師以上に生活者から信頼・支持を得る、その役割を生活者から認知してもらう──。こうした環境をつくることこそがいちばんのプライオリティ。「そうだ、登販に聞いてみよう」などと気軽に生活者が思いつく、そんなプロフェッショナルとしての存在にまで上り詰めることが最重要ミッションだ。
そもそも、登販「不要論」が湧き起ってしまった背景には、OTC販売において登販の存在が希薄なところに原因がある。
厚労省担当官も登販不要論の噴出は、専門家による情報提供や相談応需が重要にもかかわらず「ほとんど実施されていないため、登販の必要性を感じられず、遠隔でも販売可能と安易に思われてしまう」と指摘し、警鐘を鳴らしている。
薬剤師不在問題に端を発して誕生した登販制度が、生活者から「不要」と“三行半”を突きつけられる前に、自らの「職能」に目覚め、日々「研鑽」し、「政治力」も備える、そんなブレークスルーを経て初めて、医療・医薬業界のなかでプロフェッショナルとして認められる。
連載の最後に、ある厚労省官僚トップが学会で薬剤師に向け語った言葉を紹介する。
「顔が見えるだけでなく、腕が見える。コイツは使えると相手からわかる。そして、大事なのは腹が見えること。いろんな意味で大丈夫とわかってもらうことだ」
薬剤師だけでなく登販にも通じるメッセージだろう。顔を見せるだけでなく、知識に裏打ちされた技術を駆使し、お腹の底から仕事に取り組む。そんな登販が増えれば、案外簡単に「不要論」など打ち消せる。
●連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」
第1回 忍び寄る登録販売者「不要論」 新資格に突き付けられた最大の危機とは
第2回 JACDS代表も反対せず…厚労省検討会で露になった登録販売者「不要論」
第3回 厚労省が誓約書を要請……阻止できなかった登録販売者「不要論」のウラ事情
第4回 「不要論」跋扈の登録販売者、その誕生秘話
第5回 諦めない業界団体、登録販売者「不要論」へ起死回生の一手!?
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