「豚丼」に続いて「韓国カフェ」も! 低リスクFCで躍進するワンズトラインの戦略
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年1月23日 20時59分
「元祖 豚丼屋TONTON(トントン)」という丼チェーンをご存知だろうか。チェーン展開を始めたのは2021年6月と最近だが、いまやロードサイドを中心に70店舗体制になろうとしている急成長チェーンだ。同チェーンを運営するのが、大阪に本拠を置くワンズトライ(山内仁社長)だ。代表の山内氏は現在40歳。パンクバンドで活動し、19歳でプロデューを果たすという異色の経歴を持つ山内氏は、どのようにして急成長チェーンをつくりあげたのか。
郊外・ロードサイドを中心に70店舗を展開
山内氏は23歳のときに音楽活動に一区切りをつけるとカラオケ店の経営を始め、その後、飲食業に参入。「大衆居酒屋あげもんや」を2017年4月に開業し、海外で複数のマスターフランチャイズ契約を獲得するものの、コロナ禍に突入し、その話は立ち消えてしまう。そこで、低コストで開業可能で、テイクアウトにも対応する新しい業態として、「豚丼TONTON」を2020年6月にオープン。翌21年6月にはフランチャイズ展開する「元祖 豚丼屋TONTON」の展開をスタートした。
山内氏は、バンド活動をしていた当時、年間約300回のライブをこなし、全国を飛び回る生活を送っていたという。プロモーターに連れられて、各地の郷土料理の名店を訪れ、食の地域性にふれたことで、将来は飲食の分野で事業を起こしたいと考えるようになった。
順調に拡大するも、コロナ禍がワンズトライの居酒屋業態を直撃した。山内氏は次のように語る。
「コロナのとき、取引先はどうして契約を取りやめることになったのか、自分なりに考えてみた。『あげもんや』は店舗面積40~50坪で月商800万円をめざしていたが、これでは規模が大きく、先行きが心配になるというのは当然のこと」
当時、同社では弁当店の売上が安定していたため「これからはテイクアウトが有望ではないか」と山内氏は考えた。そこで目をつけたのが、バンド時代に味わった北海道・帯広の「豚丼」だ。そうして「元祖 豚丼屋TONTON」の原型となる店を2020年6月に大阪・南船場にオープンした。
その後、チェーン展開していく「元祖 豚丼屋TONTON」は2021年6月から営業を開始。店舗数は2023年8月にオープンした「九大学研都市店」(福岡県福岡市)で50店舗となり、23年中に70店舗を超える予定だそうだ。
「元祖 豚丼屋TONTON」は、低コストで出店可能で、手堅く売上高を稼ぐというフランチャイズチェーン(FC)モデルとなっている。店舗面積は15~20坪で初期投資は400~500万円、立地は郊外ロードサイドがメインとなる。小規模な店であればオーナーが店に入り、人件費を抑えることができる。月商は300~400万円。低コスト・低リスクを志向しているのが特徴だ。
山内氏はこう語る。
「われわれは、加盟を希望する方に『10年続けましょう』とは言わない。逆に『10年続けたい』と言われてもFCオーナーとしてもしんどい。私は20年間経営を行なっているが、リーマンショックや東日本大震災など大変なことが次々と起きた。『元祖 豚丼屋TONTON』は6~7カ月で投資回収が可能なので、商売を続けながら新しいことを考えることもできる」
韓国のカフェを日本でFC展開
ワンズトラインでは2023年12月3日、大阪・心斎橋のアメリカ村に「BONTEMPS(ボンタン)」という韓国カフェを新たにオープンした。韓国で7店舗を展開している、韓国ドーナツとクリームコーヒーで人気のカフェだ。
現地では、日本のZ世代がわざわざ飛行機で韓国まで行き、このカフェに訪れるという。同店の看板商品であるドーナツは1個約500円、メインは5個セットで約2500円と、既存のドーナツチェーンと比べると高い。山内氏は「当初はZ世代の感覚がわからなかったが、ヒットしている裏側にどのような価値観があるのかを知りたくなった」と話す。
2022年に現地から同社にオファーがあり、「われわれはこれに取り組む意義があるのか」と社内的に議論を重ねてきた。
「私はいま40歳で、感覚は60~70代の人と大差なく、Z世代とは大きな隔たたりがある。Z世代は生まれたときからパソコンやスマホがある。世の中との距離感がわれわれとは全く違う。Z世代はあと10年もすると、世の中の消費の中心を占めることになるのだから、この若い世代の動向を学ぶ必要がある」と山内氏は話す。
店がまだない状態にもかかわらず、加盟店から多くの問い合わせが寄せられたことも決断を後押しした。また、アルバイトの募集をしたところ、11月1~13日の間で約460人から応募があったという。「若い世代は『自分が働きたいところで働きたい』という感覚を持っているということを痛感した」(山内氏)という。
韓国カフェ「ボンタン」のフランチャイズロイヤリティは月間売上の5%、自己資金の目安は500万円。収益性などについては同社のホームページに掲載されている。
飲食のフランチャイズチェーンは50年の歴史を経て、新時代を迎えているようだ。いま、飲食チェーンに求められているものは、専門性、テーマ性、ストーリー性がしっかりとしていること。そして、初期投資が低く、手堅く利益を出せることだ。山内氏の飲食ビジネスに対する取り組み姿勢は、今の時代に適格なものであると筆者は感じる。
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