小売業の課題解決を図りながら 持続可能な発展をめざす!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年1月23日 1時0分
「おいしさ、思いやり、いつもいっしょに。」を合言葉に、心と体の健康づくりに寄与する健康増進総合支援企業をめざすブルボン。創立100周年を目前に控えた2023年3月、営業部門の組織改革を行った。そのねらいは何なのか。今後の成長戦略を含めて、取締役執行役員営業戦略統括部長兼マーケティング部長の井手規秀氏に聞いた。
マーケティング部を新設
二つのねらいとは
――2023年春、営業の最前線ともいえる開発開拓本部において組織変更が行われました。どのように変わったのでしょうか。
井手 営業部門は開発開拓本部の中に属しており、以前は東日本、西日本、首都圏といったエリアを管理する部門のほかに、飲食品、冷菓などのカテゴリー、自動販売機、業務用、通信販売などチャネルを管理する部門で構成していた時期がありました。それぞれの営業部が互いに競争意識をもって取り組んでいたものの、正直言って、営業活動を進める上ではもっと効率的にできそうな部分も感じていました。
また、セールスにおいても、飲食品、冷菓に携わっていると、菓子のことがわからない。逆に、菓子に携わっていると、飲食品、冷菓は後回しになってしまうなどの傾向があり、これでは、総合食品メーカーと謳いながら、その力を十分に発揮できないという課題を感じていました。セールス一人ひとりがカテゴリーを問わず、マルチに活躍できる環境をつくっていくためにも、組織を分散するのではなく、集約するほうがいいと考え、数年かけエリアの組織を一本化し、カテゴリーごとの営業部門を新たにマーケティング営業部として組織化しました。あわせて、営業戦略統括部を新設しました。
――新たに設けられたマーケティング部と営業戦略統括部の役割を教えてください。
井手 いわゆるマーケティング部の役割は、自社の商品やサービスが売れるような仕組みを構築することです。その一環として、消費者のインサイトや市場動向を踏まえて、売れる商品やサービスをつくるために、開発部門や製造部門を動かしていくものと認識しています。
しかしながら、当社にはこれまでマーケティング部という名称が存在しませんでした。というのも、会社全体にマーケティングの手法が落とし込まれていたためです。だからこそ、「フェットチーネグミ」のようなユニークで斬新な商品が開発され、大ヒットしました。実はこの商品は、当社の製品開発部門が生み出したものであり、こうしたものづくりの力こそ当社の強みといえるでしょう。
とはいえ、時代が大きく変わりゆく今、それだけで本当にいいのかと問いかける中で、たどり着いたのが、当社ならではのマーケティング部を新設することでした。当社の開発力や製造技術を生かした新発想の“製品”を、どのように“商品”へと高めていくのか消費者の行動を分析した上で、どんなシナリオをつくり、購買につなげていくか。このシナリオこそが大事であり、ストーリーマーケティングと名付け、実践する部署を設けました。
一般に、マーケティング部は営業部門からは独立した組織ですが、当社では営業戦略統括部の下に紐付く形をとりました。営業部門も同様です。こうすることで、会社としての基本姿勢を示す営業戦略統括部のもと、双方が組織の壁を感じることなく、連携して売上拡大に取り組めるようにしました。
――こうした組織改革のねらいは何でしょうか。
井手 当社の企業理念は、「利害相反する人を含めて、集団の生存性を高める」です。これは、自分たちだけが存続できればよいのではなく、当社を取り巻くステークホルダーも含めて発展、成長することを意味します。こうした考え方は、当社の成り立ちに大きく関係しています。
今から100年ほど前、関東大震災により地方への菓子供給がストップした窮状を見て、地方での量産工場による菓子づくりを行うべく、1924年に新潟県柏崎で「北日本製菓」として当社は誕生しました。災害をきっかけに、社会に役立つ事業を志し、栄養価が高く、保存が容易なビスケットの製造から始めたのです。
今回の組織改革も自らの成長のためだけでなく、当社の強みを生かして小売業の課題解決に貢献したいとの思いが根底にあります。
課題解決のカギは
プチシリーズとビスケット
――小売業の課題解決に向けて、どんな施策を展開していますか。
井手 昨今、価格高騰の影響から、客単価が上がる一方で買上点数減少の傾向が顕著になっています。また、Covid-19が収束するにつれ、小売業の人手不足が加速。そのため、限られた人員でいかに効率的に売上をつくるかが問われています。こうした小売業の課題解決のために、私たちが提案するのは「プチシリーズ」のコーナー展開です。
さまざまな商品が値上げする中、24種類で展開している「プチシリーズ」は発売当時から販売価格80円前後を維持しています。100円以下で購入できる菓子が減少しているだけに、その価値はますます高まり、買上点数アップに貢献できると自負しています。
他の菓子カテゴリーと比較しても、定番棚1本あたりの売上貢献度が高いデータが取れていますし、どれもほぼ同じサイズで揃えているため、小売業は棚替や商品改廃などの作業も簡素化でき、短時間で効率的に売上をつくることができます。何より「プチシリーズ」はボール箱を並べるだけで楽しい売場を演出することができるため、消費者にとっても、売場を移動することなくビスケットやスナック、米菓の中から好みの商品を選ぶことができ、ワクワク感を享受できる商品といえるのではないでしょうか。そこで「プチシリーズ」を、小売業の抱える課題解決につながる商品と位置付け、目下訴求しているところです。
――「プチシリーズ」の提案のほか、注力している商品やカテゴリーはありますか。
井手 継続して力を入れているのはビスケットです。近年、ビスケット市場は拡大傾向にあり、チョコレート、スナックに次ぐ売上規模となっています。市場を支えているのは、主にシニア層やファミリー層です。
ビスケットには、半生ケーキやサンドビスケット、ウエハース、ラスクなど、さまざまな生地があり、バラエティに富んだ商品をつくることができるのが強みです。他にも個包装の商品が多く、シェアできたり、さまざまな食シーンに対応できたり、メリットは多々あります。
ただ一方で、ビスケットの定番棚本数は売上規模に対して米菓よりも少ないという状況です。今後は、ビスケットの可能性を再認識してもらえるように、ビスケット定番売場の拡大とアイテムの拡充を図っていきます。「ブランド」「健康」「価格」「話題性」の4つの軸で、既存ブランド商品のアップデートと新商品開発を進め、小売業の売上最大化に貢献するとともにお客様に喜びと価値を提供していきたいと考えています。
創立100周年を節目に
小売業との協業を加速
――今年、創立100周年を迎えます。小売業へメッセージをお願いします。
井手 創立100周年を迎えるにあたり、お客様に対して感謝を伝えるとともに、あらためてブルボンという会社を知ってもらうための取り組みを進めています。小売業に対しても、私たちの会社の強みをしっかり伝え、それが課題解決につながることをこれまで以上に実践していきたいと考えています。
2021年、全国47都道府県すべてに営業拠点を設け、よりきめ細やかな対応ができるように整備しました。おかげで、お客様や小売業から直接声を聞くことができ、課題の共有や迅速な課題解決に加え、魅力的な売場づくりなどを行えていることに、高い評価をいただいています。直近では、「アルフォート」に描かれた帆船を売場で再現するという面白い企画もあります(笑)。お客様に楽しんでもらえる売場づくりは、私たちにしかできない施策ですし、話題を喚起することで店舗への来店客のアップに貢献しようと、全国で展開したいと考えています。
また、47都道府県に拠点があることを生かし、地産地消をテーマにした商品づくりなどにもチャレンジしてみたいですね。そのためにも、新設したマーケティング部をしっかりと機能させていく、それが私に課せられたミッションだととらえています。
菓子産業は平和な社会のもとに成り立つものであり、まさに平和のバロメーター。創立100周年を新たなスタートととらえ、これからも事業を通じて社会への貢献と、小売業やお客様の課題解決に向けた取り組みを推進し、持続可能な発展をめざしていきたいと考えています。
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