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「Shein訴訟」も追い風に 米国で存在感増すユニクロ、現地の反応は?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年2月11日 20時59分

今や時価総額12兆円を超え、グローバル小売としての存在感も大きくなったファーストリテイリング。中でも「ユニクロ」のコンセプトである、トレンドに左右されない究極の普段着「LifeWear」のニーズが高まっていることが背景にあると見られる。そのユニクロが2024年に米国で20カ所以上の新規出店を行い、2027年までに北米で200店以上の規模をめざして拡大中だ。米国では同社の動きが、どのように受け止められているのか。

米国でユニクロの存在感が増している

GAP低迷に乗じて上昇気流に

 スペインのザラ(Zara)、スウェーデンのH&Mに次ぐ、アパレル第3位に付け世界で2400店以上を展開するユニクロは、2022年から拡大を続ける北米事業を米国53、カナダ19の合計72店舗(2023年12月11日時点)から2027年までに2倍以上となる200店舗をめざすと発表した。

 ユニクロが2005年に立ち上げた北米事業は参入以来長く赤字が続いていたが、2023年9月に代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任した、生え抜きの塚越大介氏が2020年9月に北米担当責任者となって以来、積極的なブランド認知戦略、不採算店の整理、ヒット商品『ダメージジーンズ』の発売など改革策を次々と断行。2023年8月期には円換算ベースの売上が1639億円と対前年同期比で43.7%と大幅に伸び、営業利益も3.3ポイント改善して12.9%となった。15年以上をかけた初黒字化である。

 今回の北米事業拡張計画は、その好調の波に乗るものだ。出店先としては、主に東海岸と西海岸に重点を置き、新規開拓する東部ロードアイランド州のプロビデンスをはじめ、既存店がある州では東部マサチューセッツのブレーンツリー、東部ニューヨークのスタテンアイランド、西部ワシントンのタコマやリンウッドなど中規模都市が候補に挙げられている。

 一方で、日本では知らない人はいないユニクロも、北米では未だ知名度が低い。塚越社長自身、米ブルームバーグのインタビューで、「北米では『ユニクロって何?』から始まる」と語っており、ソーシャルメディアや既存メディアに大量の広告を打ってブランド認知を上げ、さらに実店舗を両海岸の戦略的な場所に配置することでLifeWearのコンセプトを浸透させたい考えだ。

 こうしたユニクロの動きは米国から見ると、どのように映っているのだろうか。

 コンサルティング企業グローバルデータ(GlobalData)の小売アナリストであるニール・サンダース氏は米小売ニュースサイトのリテール・ブルー(Retail Brew)の取材に対し、「ユニクロは、かつて米アパレル大手のギャップ(Gap)がシェアを持っていた領域に進出している。興味深いのは、今のユニクロが、ギャップなど米小売があるべきであった姿を反映していることだ」と述べ、米競合の低迷に乗じてユニクロが勢いづいていると示唆した。

 サンダース氏はさらに、「ユニクロは店舗数を減らしているギャップなどから市場シェアを奪いつつあり、『より高品質なお手頃ベーシック』を売り物にするZaraやH&Mからも客を奪っている」との見解を示した。

 ちなみにギャップは、若年層に人気のオールド・ネイビー(Old Navy)、バナナ・リパブリック(Banana Republic)、アスレタ(Athleta)などのブランドを擁するが、業績は思わしくなく、2023年7~9月期の売上は前年同期比15%減と冴えない。

米メディアの扱いが増加

 ユニクロの今後の北米事業の成否を握るのは、塚越社長も重要視するブランド認知だ。その面において、塚越氏の目論見は当たりつつあるように見える。

 たとえば、南部テキサス州最大都市のヒューストンのモールにユニクロがオープン予定の同州第1号店について報じた米ニュースサイトのアクシオス(Axios)は、「ユニクロファンたちよ、喜べ。ユニクロが9月にメモリアル・モールのフォエバー21の跡地にやってくる」と伝えた。

 まだ店舗がないテキサス州で、すでにユニクロがファン層を抱えていることがうかがえる。同時に、出店の文脈として「ユニクロが熱心なファンを開拓できたのは、そのミニマリズム、品質、お買い得さ、そしてサステナビリティが評価されたからだ」と同記事が分析したことは、LifeWearのコンセプトが米国で受容され、北米事業拡張が成功する可能性を示唆している。

 また、人口増が続いて経済も好調なテキサス州の第2号店として、ユニクロが州第2の年である北部ダラス近郊に出店を計画していることも報じられており、「勢いがあるチェーン」との印象を与えることに成功している。

 また、一部の米メディアではユニクロが2023年に発表したヒット商品の「ラウンドミニショルダーバッグ」が20ドル(約3000円)と安価ながら「ミレニアル世代のバーキン」として親しまれ、短編動画サイトTikTokで1億2000万回近くの閲覧があったことが紹介されている。

 ユニクロは2024年1月に、中国発のファストファッション大手シーイン(Shein)がラウンドミニショルダーバッグの模倣品を販売したとして販売停止と損害賠償を求める訴訟を提起したが、これが米国で大きく報じられ、結果的に「模倣されて損害を受けた人気ブランド」との印象を与えていることは特筆に値する。ネガティブなニュースだが、ユニクロの立ち位置は「よいモノを作って模倣された被害者」であり、ブランド認知が向上している。

 ユニクロの米国における2023年の売上はドルベースで前年比28%伸びたと米小売調査企業のコンシューマーエッジ(Consumer Edge)が発表するなど、2024年に向けて北米事業の上昇気流は続きそうだ。

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