行列が絶えない名店・大塚「ぼんご」が認めた味と技術、「おにぎりこんが」の強さとは?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月9日 20時59分
近年、おにぎりブームが加速し、東京を中心におにぎり専門店が増加している。中でも、ひと際人気を集め多くのメディアで取り上げられるのが、豊島区大塚にある創業60年を超える老舗の「おにぎりぼんご」だ。そのぼんごで修行し、ぼんごの女将に唯一出店を認められ、蒲田、赤坂、羽田空港に3店舗を構えるまでに成長しているのが「おにぎりこんが」だ。「おにぎりこんが」を手掛ける、FBIインターナショナル代表 合田 正伸氏に話を聞いた。
大きくて具沢山、オーダーを受けてから握るのが「こんが」のおにぎり
東京・大塚の老舗おにぎり店「おにぎりぼんご」のおにぎりといえば、大きくて具沢山、オーダーを受けてから一つずつ握ってくれる点が特徴だ。そのぼんごの伝統の味と技術、文化をしっかりと受け継ぎ、東京で出店を続ける「おにぎりこんが」も、連日多くの人が足を運ぶ人気のおにぎり店だ。
「『食べる人の笑顔が見たい!』がこんがのコンセプト。一人でも多くの人におにぎりを食べて笑顔になってもらいたい」と合田氏は話す。
こんがのおにぎりをはじめて食べる人は、まずその大きさに驚くことになる。一般的なおにぎりよりも一回りは大きい。それでも1個350円~400円が中心と、お手頃価格だ。さらに、注文してから一つ一つのおにぎりを丁寧に握ってくれる。原材料の高騰から値上り感の強い食品が多い中で、コンビニおにぎりとはまるで別物のこんがのおにぎりは、むしろリーズナブルなのではないか。
さらに、具材の種類が多く、定期的に新メニューも追加されることから、毎日食べても飽きることはない。
「具は22種類用意しており、人気は卵黄醤油漬け、肉そぼろ、筋子など。ぼんごの味と技術を受け継いだ具材は、肉そぼろ一つとっても計算しつくされた独自の味付けになっている。おにぎりに最も合う味の濃さであり、時間が経っても美味しく、傷まないようにと試行錯誤の末に辿り着いた特別なおにぎり。味が別格で、まさに、完成形のおにぎりだと思っている」
女性に人気が高いのが、明太クリームチーズだ。定期的に新メニューも投入しており、「女性は洋風の具材を好むので、最近では、おにぎりとはちょっとかけ離れたイメージのあるカルボナーラとボロネーゼを新たに追加した」という。
現在、こんがのおにぎりを食べられるのは、東京の蒲田、赤坂、羽田空港の3カ所だ。
多店舗展開を見据え、セントラルキッチンで仕込みを効率化
合田氏は、前職で飲食店のプロデュースや有名店とのコラボ企画などを行っていた。大塚ぼんごの存在をまったく知らなかったという合田氏は、仕事でぼんごの女将・右近氏とはじめて出会ってときに感動し、その翌日には会社を辞め、ぼんごへの弟子入りを志願したのだという。
「最初に話を聞いたときにその人柄や人間力、想いに感動して、右近さんの理想に近づきたいという想いに掻き立てられた。今飛び込まなければ一生後悔すると思った」
約1年の修行期間は、これまでの生活とは一変してひたすら下働きの日々。「実際におにぎりを握らせてもらったのは最後の1カ月くらいだったはず」と振り返る。
その後、“大塚ぼんご監修”という形で、ぼんごに唯一認定されたおにぎり店として蒲田に「おにぎりこんが」を立ち上げたのが2022年11月だ。
「ぼんごがある大塚と同じような雰囲気、条件の土地で『おにぎりこんが』をオープンさせたいと考えた。住宅街でありながらオフィスも立ち並び、大学が近くにあり学生も多い点は、大塚と蒲田の共通点だった」
1号店では、合田氏自身が仕込みから握るところまですべてを担当し、大塚ぼんごから受け継いだ味を蒲田の町の人たちに伝えた。ただ、おにぎりを食べて笑顔になる人を増やすには、もっとこんがのおにぎりを食べられる場所を増やしていく必要がある。そこで、多店舗展開を視野に動き始めた。
「正社員を雇い、マニュアルに基づいて具材の仕込みはすべてセントラルキッチンで一手に行って、仕込み済みのものを店舗に配送する体制を整えた。コロナ禍で客足が大きく伸びない時期も、作業工程を一つひとつ見直して改善につなげてきた」
「大塚ぼんご」の味と技術を引き継ぎ、「こんが」らしさを追求しながら店舗拡大
2号店をオープンさせるタイミングで、初出店の蒲田で掲げてきた“大塚ぼんご監修”という看板を外し、ぼんごの味と技術、魅力はそのまま引き継ぎ、「おにぎりこんが」独自のスタイルで店舗を広げていくことが決まった。
正社員の採用、アルバイトを含めた従業員の育成を進め、2023年3月に赤坂に2号店、4月に羽田空港国際線ターミナルに3号店をオープンさせた。現在では社員11人、アルバイトを含めると80人の従業員を抱えるまでに成長している。
「羽田空港店は、これから海外に向かおうとする空港利用者ということもあって、最も販売個数が多く、1日に約2,000個を販売する。赤坂の1日の販売数は約1,500個、蒲田は約1,000個弱で、3店舗で合わせて4,000~5,000個のおにぎりを、基本的に注文が入ってから一個一個握っている」
客単価は、赤坂が900円、蒲田が1,000円、羽田が1,500円と、こちらも羽田が他を牽引する形だ。
「コロナ禍で撤退したテナントが多く、ありがたいことに羽田空港国際線ターミナルから声がかかって出店できたのは大きい。国際線ターミナルに入るテナントで過去最高の売上を記録したのが、実はこんが。わずか8坪で叩き出した売上日報を見て、空港担当者から『2日間分まとめて送られてきていると思うんですが』と問い合わせが入ったほどの売上高だった」
商品力よりも人を惹きつけるのは、「人の温かさ」や「人との触れ合い」
大塚ぼんごで修行した合田氏は、「長きにわたってぼんごが人気を集めているのは、おにぎりそのもののクオリティが高いのはもちろんだが、それ以上に、お客さんは人とのつながりを感じられるお店であるところに魅力を感じているからだ」と話す。
「美味しいのは当たり前、お客さまは“美味しいと思える環境”を求めて来てくれているんだよ、と女将から教えられた」
合田氏は、「こんが」独自の店舗展開を進めつつも、ぼんごの魅力はしっかりと引き継ぐ。
おにぎりのおいしさを追求する一方で、人との触れ合い、人の温かさを感じてもらうことを目指し、こんがのビジョンを共有するための「8つの約束」から始まり、徹底した社員教育に取り組む。
「おにぎりを通じてお客さまと言葉を交わしてコミュニケーションすることで、人と触れ合う温かみを感じてもらいたい。店舗ごとに来店客の属性が違うので、お客さまに合った最初の一言をルール化し、必ずそのフレーズで話しかけることを徹底している。決まったフレーズがあることで、アルバイトでも躊躇せずに話しかけることができる」
2024年度中に国内10店舗へ拡大、おにぎり文化をアメリカにも伝えたい
「2024年度中に、現在の3店舗から10店舗に増やし、アメリカへの出店も検討している」と語る合田氏。
「東京だけでなく、関西にも進出したい。海外進出の1号店にアメリカを考えているのは、最も市場規模が大きいところで勝負してみたいという想いがあるから。より大きな市場に挑戦し、おにぎりの魅力を世界に広げ、おにぎりを食べて笑顔になる人を一人でも増やしていきたい」。
おにぎり文化が世界中に広がることを期待して、「おにぎりこんが」の今後の動向に注目したい。
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