速報!セブン-イレブンの「SIPストア」ついに開業 写真で見る新コンセプト店の全貌とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年2月27日 20時59分
セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)は2月29日、千葉県松戸市の「セブン‐イレブン松戸常盤平駅前店」(以下、常盤平駅前店)をリニューアル・増床するかたちで、新コンセプト店舗「SIPストア」の1号店をオープンする。セブン&アイグループの新たなシナジー創出を図るべく開発したというSIPストアの全貌を、27日に開かれたメディア向けのプレオープン取材会から、写真を中心に速報する。
約2000SKUをSIPストアの新規MDとして投入
SIPストア開発の端緒となったのが、2022年8月にセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)と、イトーヨーカ堂(東京都/ 山本哲也社長)が、両者のシナジー創出を図るべく立ち上げた「SEJ・IY・パートナーシップ(SIP)」という枠組みだ。
当初は商品・サービスの相互供給や、アプリを介した相互送客などをテーマに分科会を設置し各プロジェクトを推進していたが、23年春ごろにSIPストアの開発が決まり、1年弱の準備期間を経て開業にこぎつけた。
常盤平駅前店は新京成電鉄新京成線「常盤平」駅からすぐの場所にある。幅広い年齢層が住む住宅街という立地特性のほか、後述するプロセスセンター(PC)からのアクセスを含む物流面での条件に鑑み、既存の直営店を増床・改装するかたちでSIPストア1号店として開業した。
売場面積は約88坪で、セブン-イレブンの標準サイズと比較しておよそ1.8倍。取り扱い商品数は約5300SKUで、このうち約3300SKUはセブン-イレブンの既存店で販売している商品、残りの約2000SKUはSIPストアの開発に際して新たに投入した商品群となっている。
生鮮3品を拡充 精肉と鮮魚はPeace DeliのPCから供給
商品政策(MD)で特筆すべきはやはり、前述した約2000SKUの新規商品群だろう。そのほとんどはイトーヨーカ堂で扱っている生鮮食品(青果、精肉、鮮魚)や日配、冷凍食品、加工食品が占める。
つまり食品売場に関して言えば、SIPストアのMDはセブン-イレブンのMDにイトーヨーカ堂の食品MDを一部付加したものとなっている。
実際に売場を見ていくと、店舗中央部で生鮮と日配が一体化したゾーンが展開されており、既存のセブン-イレブンの店舗とは一線を画した光景が広がる。
生鮮のうち精肉と鮮魚については、イトーヨーカ堂傘下の食品製造・加工企業であるPeace Deli(東京都/和瀬田純子社長)が千葉県流山市に有するPC「流山キッチン」から供給を受ける。精肉は牛・豚・鶏それぞれでスライスや挽き肉、味付け肉など売れ筋を中心に展開。鮮魚は定番の魚種に絞り込んで切り身や干物、刺身は盛り合わせも提供する。
精肉、鮮魚ともに大容量パックは展開せず、使い切りを想定した量目で販売する。また、価格についてはグラム売りではなく商品ごとに固定価格を設定。たとえば「国産若鶏手羽元」は4個入りで200円(以下税別:取材日時点)、「国産豚ロースとんかつ用」は1枚入りで300円などとなっている。Peace Deliの担当者によれば、「グラム単価でみればイトーヨーカ堂の店頭価格とそれほど遜色はないアイテムが多い」という。
青果はゴンドラエンド(常温)に根菜や葉物類、冷蔵ゴンドラに果物類、カット野菜・フルーツなどを展開。ドレッシングやトッピング用のゆで卵などの関連販売も行っている。
冷凍食品はPB+NBでラインアップを強化!
生鮮と同様にラインアップを大きく拡充したのが冷凍食品だ。
セブン-イレブンの既存店では約80SKUが標準であるのに対し、常盤平駅前店ではプレオープン日時点で263SKUを販売。既存店ではほとんどが「セブンプレミアム」をはじめとするプライベートブランド(PB)で占められているが、同店ではナショナルブランド(NB)の売れ筋やヒット商品も積極的に導入したほか、高価格帯のスイーツなども取り入れている。また、イトーヨーカ堂の冷凍食品PB「EASE UP(イーズアップ)」に関してはすでにセブン-イレブンでも一部アイテムを販売しているが、常盤平駅前店ではほぼフルラインアップでの展開となっている。
このほかチルド商品についてもNB商品を充実させたほか、価格訴求型PB「セブン・ザ・プライス」も各カテゴリーで差し込むなど、価格帯に幅を持たせている。
レジカウンターは14m超!カウンターFFの品揃えも拡大
レジ周りも既存店とは大きく異なる仕様となっている。まずカウンターの全長(有効スペース)を14.5mと、一般的な店舗と比較して約5m拡大。そこにレジのほかカウンターFF(ファストフード)の什器、挽きたてコーヒーやスムージー用の抽出マシンが並んでいる。
カウンターFF(ファストフード)については、セブン-イレブンの定番である「おでん」や「ななチキ」などのフライ類に加え、店内焼成の「メロンパン」「フィナンシェ」「クロワッサン」なども販売。さらに注文を受けてから焼き上げるピザ(「マルゲリータ」<723円>・「照り焼きチキン」<815円>)の提供にもチャレンジしている。
さらにレジ対向部にはナッツやバナナチップス、グミなどの量り売りコーナーを設置。お客が袋に商品を入れたのち、備え付けのプリンターでバーコードラベルを発行するセルフ式となっている。
ロフト、赤ちゃん本舗の商品も導入 女性・子育て世帯のニーズ取り込む
加えて注目したいのが非食品のMDで、やはりセブン&アイグループに属するロフト(東京都/安藤公基社長)と赤ちゃん本舗(大阪府/味志謙司社長)の商品を取り入れた。
まずロフトについては常盤平駅前店周辺にバラエティ雑貨やコスメ用品の買い場が少なかったことから同社との連携を決定。品揃えだけでなくコーナーのデザインまで同社が監修した。取材時は女性向けアイテムが中心となっており、フェイスマスクや化粧水、アイライナーやネイルシールなどを販売していた。
一方の赤ちゃん本舗の商品についてはレジ前付近にゴンドラ4台分のスペースを割いて展開。ベビーミルクや離乳食、おむつ類や乳児用歯ブラシなど購入頻度の高いアイテムをメーンに揃えている。
赤ちゃん本舗のコーナーも導入し、子育て世帯のニーズ獲得を図る
すべての人が「近くて便利」を享受する店づくりを志向
ここまで常盤平駅前店の売場を駆け足で見てきたが、「SIPストア」はセブン-イレブン(S)とイトーヨーカ堂(I)という2社のパートナーシップにとどまらず、ロフトや赤ちゃん本舗の商品を導入しているように、セブン&アイグループ各社の知見やノウハウ、MDといった”資産”を結集させた店舗と言える。
その先に見据えるのは、あらゆる顧客層をカバーできるフォーマットの確立だ。セブン-イレブン・ジャパンの執行役員企画本部ラボストア企画部長の山口圭介氏は、「われわれはここ十数年『近くて便利』をコンセプトに掲げてきたが、それに主語がなかった。高齢化が進むなかで若年層の支持を集めきれていないし、男女比率を見てもほとんどの店で女性が男性を超えることはない」と指摘する。
グループの資産を結集しワンストップ性をより追求することで、若年層、女性、ファミリー層といった取り込めきれていない層を含め、顧客層の拡大とロイヤルティ向上を図るというのがSIPストアのめざす方向性といえそうだ。
ただし、山口氏は「SIPストアをフォーマット化することは目的ではない。新業態開発でもない」とも強調する。まずは常盤平駅前店を拠点に仮説とのずれを検証・修正しながら部分最適(既存店に水平展開できる新たな商品や販売手法)につながる情報の獲得をめざしたうえで、全体最適(あるべきフォーマットの研究開発)につながる検証を進めていくという。
今後については、24年度中にはSIPストアの2号店の開業をめざす考え。常盤平駅前店のような既存店の改装のほか、より広大な売場スペース確保をめざした新規開発なども視野に入れるという。
店頭で取材に応じたセブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は、「時代が大きく変化する中で商圏ニーズも大きく変化している。将来的にさらに高齢化が進むことは明らかで、人々が動ける範囲はより狭くなっていく。そうしたなかで、近くであらゆる消費財の購入ができるような店を構築していきたい」と話した。
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