激戦区・赤羽で建て替えオープンの「イオンスタイル赤羽」 食品の売場づくりを徹底解説!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年3月18日 20時59分
有力チェーンがひしめく食品小売の激戦区、東京・赤羽。2023年7月、「赤羽」駅から直線距離で約1kmの場所に、「イオンスタイル赤羽」がオープンした。同店は1982年に「忠実屋赤羽店」として開店。38年間にわたって営業した後、スクラップ&ビルドにより新たにリニューアルした。本稿では、新装オープンしたイオンスタイル赤羽の各部門の特徴を確認しつつ、売場づくりを説明していく。
「日常使い」を取り込む工夫が随所に
イオンリテール(千葉県)は2023年7月28日、2020年に閉店した「イオン赤羽北本通り店」をスクラップ&ビルドするかたりで「イオンスタイル赤羽」を新装オープンした。
食品売場は旧店時代の1.6倍に拡大され、地域で唯一の「日常使いのワンストップショッピングサービス」を提供することをめざす同店。主通路、副通路ともに1.8メートル以上の通路幅を確保しており、快適に買物を楽しめるレイアウトとなっている。
青果から鮮魚に至る売場では、高さをおさえた陳列什器が開放感を生み出し、買物のしやすさに寄与している。
部門別に売場を見ていこう。青果は平台4台の構成で、果物が1.5台分、野菜が2.5台分を使用、一品単価が高い果物を売り込む姿勢が伝わってくる。視察時は、売場トップでイチゴとリンゴを売り出していた。
青果全体に共通しているのは、フェース数を確保して面での陳列をしっかり行っている点だ。
イチゴは8SKU、リンゴは7SKUと品揃えが豊富で、購入への選択肢を広げている。イチゴのボリューム陳列は、主通路に沿いのエンド部分で行われており、「とちおとめ」「とちあいか」を478円で、大型のパネルを設置して強調していた。品揃えの幅は広いものの、価格幅は400円~700円前後にまとめており、「日常使い」に配慮した取り組みとなっている。
リンゴは品種こそ多くないが、ばら売りと袋入りを併売しており、用途の選択肢を広げることで手軽な購入を促している。
そのほか平台ではバナナを6SKUで展開し、青汁の粉末との関連販売で、「バナナとほうれん草のスムージー」のレシピとPOPをつけて訴求していた。バナナはヘビーユーザーが多く、来店頻度を高める重要アイテムの一つである。購入への動機づけを高める仕掛けを平台で行っているのは注目ポイントと言える。
有機・減農薬商品をどう売り込むか
平台の野菜はニンジン、ピーマン、ナスからスタートしている。
レギュラーアイテムではなく、減農薬や機能性など付加価値を訴求するアイテムで構成しているのが特徴だ。そのほかにも平台や定番の冷ケースを使ってオーガニック、減農薬(写真)、AEON農場の栽培アイテムを展開していた。
安全・安心志向の高まりを背景に、オーガニックや減農薬アイテムの売り込みは以前から各社が行っているが、実際のところ、レギュラーアイテムとの価格差や品質自体の違い、訴求の面で欧米ほど販売が伸びていない。
イオンスタイル赤羽では、あえてまとめてコーナー化せず、定番の品揃えの中に付加価値アイテムを加えながら、購入機会を増やそうとしているようだ。
イオングループは生産側への関与が深く、農産物でもPBアイテムが増えている。レギュラーアイテムとの価格差をコントロールしながら商品供給していると推察される。
そのため視察時もオーガニック、減農薬アイテムとレギュラーアイテムの価格差が小さく、売場での訴求ができていた。まずは手軽な利用を促しつつ、需要開拓にどこまでつなげていけるか、お客の支持のバロメーターとしてもチェックしたい。
また、野菜においては少量アイテムが充実している点にも注目したい。店内加工もあるが、多くはアウトパック加工を活用しながらの品揃えで、売場づくり、オペレーション面でも参考になる部分といえる。
「選択肢の多さ」に注目の鮮魚売場
鮮魚は、店角のマグネットとなっている対面型の丸魚コーナーが目を引く。
視察時は平日で雨模様だったため、丸魚ではなく加工された状態での商品展開だったが、それでもインパクトのある売場となっていた。厚切りのブリが3切れで498円(写真)と破格の価格で、隣にはブリのカマが200円で並んでいた。
そのほかにも、にしんや金目鯛など5~6種ほどが陳列されており、ボリューム感と値頃感を兼ね備えていた。
反対側の平台では、マグロとサーモンをコーナーでまとめ、専門性をアピールしている。売場トップのまぐろは価格訴求のしやすい「びんちょう」や「めばち」に加え、「本マグロ」でも店内加工の赤身の切り落としを1パック598円(写真)とお得感を出しながら展開し、手の伸ばしやすい品揃えとなっていた。
サーモンはノルウェー産、チリ産、チリ産のアタカマソルトサーモン(写真)など3種類を展開し、刺身や厚切りなど加工のバリエーションが豊富で選択肢の多さが魅力の売場となっている。刺身や切り身は商品自体にボリューム感があり、競合店との差別化となっている。
また、鮮魚売場においては、刺身を分散して展開している点も特徴的である。
壁面の最後、約12尺のスペースを使用し、売場の存在感を高めている。メインは5種2切れ入りの刺身の盛り合わせ598円だが、刺身の盛り合わせとサクのパックを混在させ、魚種を基準としたグルーピングでまとめている。
また、刺身を使ったおつまみ総菜、20SKUを展開するお一人様用刺身コーナーなど、品揃えがバラエティーに富んでいる。まぐろとサーモンと離れた場所に刺身売場を設けることで、回遊性の向上が期待できるレイアウトになっている。
後編では、精肉や総菜の売場を見ていく。
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