博報堂が取り組む「テーマ型」リテールメディア、第一弾はフェムテック領域
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年3月19日 22時0分
博報堂(東京都/水島正幸社長)は、テレビ・デジタル広告から販促、売場強化まで、フルファネルで一気通貫したマーケティングサービスを強みとする。その中で同社はリテールメディア事業に他社に先駆けて取り組んできた。直近ではテーマ型のリテールメディアに注力する。
小売大手企業やキー局を巻き込む
博報堂はリテールメディアの領域において、約10年前からデジタルサイネージの広告枠の販売などを先進的に手掛けてきた。リテールメディアに関するコンサルティングやリテールメディアの立ち上げのプロデュースなど、さまざまなサービスを展開している。
近年、国内で小売企業のスマホアプリや店頭のデジタルサイネージといったデジタルの顧客接点が広がり、リテールメディアへの関心も高まっている。現時点では、リテールメディアの広告枠にメーカーらの広告主が広告を出稿する「広告モデル」が主流だ。売場に近いというリテールメディアの特性ゆえ、ポイントやクーポンといった販促面での活用に偏りがちな面もある。
博報堂は、生活者発想の体験デザインを得意とする総合代理店の強みを生かし、テーマ型リテールメディアに取り組んでいる。情報メディアとして信頼性が高く、影響力が大きいテレビ、インタラクティブなデジタルメディア、生活者が日常的に利用する小売チェーンの売場をフルファネルでつなぎ、社会的なテーマを掲げて生活者の認知や共感を獲得する。そのテーマに関連する商品を売場で購買するまでを一気通貫する総合的な体験設計が特徴だ。
初の取り組みとして、キー局のフジテレビジョン(東京都:以下、フジテレビ)、小売大手のイオンリテール(千葉県)、マツキヨココカラ&カンパニー(東京都:以下、マツキヨココカラ)と協業し、フェムテック(Femtech)に特化したテーマ型メディアを立ち上げた。
成長を続けているフェムテック市場
フェムテックとはFemale(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、月経や妊娠、不妊、産後、更年期といった女性のライフステージにおける健康課題をテクノロジーで解決する商品・サービスをいう。
女性特有の健康問題や心身の症状によって離職や昇進辞退、勤務形態の変更を余儀なくされていた女性がフェムテックを活用し、仕事との両立を実現することで得られる経済効果は年間2兆円超と推計され、女性の健康課題は社会全体で取り組むべき課題となっている。
国内のフェムテック市場は年々成長し、2019年時点の574億円から22年には約700億円に達している。しかし、セルフヘルスケア市場全体でみるとその割合はわずか1%程度とまだ小さい。イオンリテールやマツキヨココカラなど、フェムテックをテーマとした売場づくりに取り組む小売チェーンが現れつつあるものの、売場での露出や訴求には限界があり、生活者の認知や理解の獲得に十分つながっていないのが現状だ。
そこで、フジテレビは「女性の身体や健康、生きづらさなどを本音で語る」をテーマに、女性に寄り添うコンテンツを地上波とデジタルメディアのメディアミックスで届ける生活者参加型の番組を構想。23年4月にフェムテック番組企画のβ版として「トーキョー・ミモザ」を放送した後、23年11月から月1回のレギュラー番組「トーキョーツキイチMTG」を第3土曜日深夜に放送している。
「トーキョーツキイチMTG」は、視聴者と双方向でコミュニケーションできる番組設計となっている。番組で採り上げて欲しいテーマを公式インスタグラムやウェブサイトで視聴者から募集し、女性タレントやインフルエンサーが本音で語り合う番組を地上波で放送。公式YouTubeでは未放送シーンやおすすめ商品の紹介など、番組と連動した動画コンテンツを配信している。
「卵子凍結」をテーマとした第一回目の世帯視聴率は0.9%で、想定値の1%に近い結果が出た。メインターゲット層である35歳以上女性の視聴率が特に高く、視聴者数ベースではティーン層も一定の割合を獲得できている。
SNSでは「普段聞けない話もあって面白かった」、「引き続き観ようと思った番組。知識を得ておくことは必要」など、視聴者からポジティブな反響がみられた。
インフォマと売場を連動、番組と共に商品開発も構想
「トーキョーツキイチMTG」は、番組を視聴してテーマを認知し、共感して理解を深めるだけでなく、自分ごと化した生活者が店舗に出向いて売場で商品を購入するまでの購買動線も設計しているのが特徴だ。テレビや公式SNS、ウェブサイトでは、番組で採り上げた商品を購入できる店舗を紹介し、店頭へ送客。イオンリテールやマツキヨココカラの対象店舗では、女性の様々な悩みに対応するフェムテック商品を品揃えし、番組と連動した企画販促を売場で展開している。
小売チェーン側からは「フェムテックの売場と『トーキョーツキイチMTG』とのコラボレーションに対してお客さまから反響があった」と好評だ。博報堂ショッパーマーケティング事業局(SMK局)の小島健嗣氏は「小売チェーンのフェムテックへの先進的な取り組みがメディアで採り上げられ、売場への送客につながるとともに、生活者に寄り添った便益性のある情報を伝えることで、フェムテックの認知度も高められている」と成果への手応えを語る。
同番組はフェムテックに特化しているため、フェムテック商品を訴求するインフォマーシャルとの親和性が高い。SMK局の中田早紀氏は「バラエティやドラマなど、フェムテック商品と親和性の低い番組では、ザッピングでの離脱が起きやすく、商品の印象が残りづらいが、『トーキョーツキイチMTG』では、本編と一貫性のある世界観で商品をスムーズに訴求でき、商品の認知に効果的につなげられる」と説明する。
同取り組みには、OTC医薬品を中心とするヘルスケア流通卸大手の大木ヘルスケアホールディングス(東京都)が23年4月に創設した完全子会社のLAUGHBASE(東京都)も参画している。
LAUGHBASEは、女性特有の健康課題に社会全体が取り組むべき包括的なケアサポートを行う環境作りを「フェムケア(Female+Care)」という造語で定義しておりフェムケアに特化した情報発信と市場創造を担うプラットフォームとして、ブログやSNSで女性特有の心身の不調や悩みを採り上げたコンテンツを配信するとともに、その解決につながる商品の開発にも積極的に取り組む企業だ。
「トーキョーツキイチMTG」では、番組とのインタラクティブなコミュニケーションを通じて生活者と広告主であるメーカーが新商品を共創し、協働する小売チェーンで先行発売することも構想している。
24年1月には、第一弾商品としてデリケートゾーンケアブランド商品を発売する計画だ。番組で商品を採り上げ、公式YouTubeで商品の特徴や使用方法などを詳しく紹介する動画を配信。イオンリテールやマツキヨココカラの店舗では、商品を先行販売する。
ほかのテーマにも拡張できる可能性
テーマ型リテールメディアは、世の中が関心を持ちやすい社会テーマを掲げて生活者から広く共感を獲得し、商品・サービスの販売を仕掛ける「戦略PR」の手法をリテールメディアに導入している点で斬新なモデルだ。
一般的な広告モデルに比べて、価格以外の商品の価値や魅力を伝えやすくなる。また、社会テーマを掲げることで、テレビ局や小売チェーン、メーカーら、さまざまな企業を巻き込みやすくなるのも利点だ。
小島氏は「テーマ型リテールメディアは拡張性のあるモデルだ」とし、「新たなヘルスケアやフードロスなど、幅広い社会テ
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