中小企業でもECの翌日配送を実現できる『物流拠点の分散化』とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年5月12日 20時59分
前回の記事では、物流の2024年問題がもたらす影響と、その影響が物流とサービスの2極化を促進するというお話をご紹介しました。今回の記事では、消費者が根底にもつスピード配送のニーズに今後も応え続けるためには、どのような手法があるのか具体的な事例を交えてお伝えします。
中小企業にとってハードルの高い翌日配送
大手EC事業者が消費者のニーズに応える形で、今では当たり前のようになった翌日配送。
物流の2024年問題で物理的な輸送リソースが減少する以上、小売全体の方向性としてスピード配送は減少傾向にあると考えられます。
ただし、前回の記事でもご紹介したとおり、販売機会の損失を防ぐためにサービスとしての翌日配送を実現して差別化を図る企業も存在し続けるでしょう。
そんなスピード配送を実現するためにはさまざまな障壁があり、大手のように大規模な設備投資が行えない中小にとっては、個別にスピード配送を実現するのは厳しいようにも見えます。
では、大規模な投資ができない中小企業は、ユーザーの根本的なニーズであるスピード配送の実現を諦めるしかないのでしょうか。
翌日配送を実現するためカギは『翌着率』にある
結論から言えば、限られたリソースの中でユーザーのニーズに応えるためには、翌日に商品が到着する『翌着率』のエリアを見越し、物流センターを日本国内に細かく配置するという方法が有効です。
しかし、物流業界ではいまだ拠点の分散化に二の足を踏んでしまう会社が少なくありません。
実は15年以上前の物流業界では、物流拠点を細かく分散させることは不利益に結びつくと考えられていました。在庫管理の精度は今より低く、拠点を細かく切り分けることは物流コストの上昇に直結してしまいます。また、分散した物流拠点にある在庫から注文された商品を即座に引き当てることも難しく、それが販売機会損失につながっていたのです。
しかし、いまはそうではありません。
現在は、物流会社側が提供する在庫管理システムやそのほかのさまざまなシステムやの精度がかなり向上しています。倉庫内のオペレーションレベルも高まり、AI技術を活用して人手を介さずに自動で出荷できる状況も整ってきたため、拠点を分けるデメリットをほぼ解消することができるのです。
物流倉庫の働き方にも課題解決の糸口がある
当社の事例として、EC業界における倉庫の働き方についてご紹介しましょう。
物流倉庫といえば、かつては一般的に8時や9時に出社し、5時や6時に倉庫が閉まるというのがスタンダードでした。しかし、弊社の物流センターは2部制を採用しており、朝出勤と午後出勤のスタッフで構成され、夜の10時まで標準で稼働しています。
他にも、自動梱包機は10年前には1台で億超えという時代もありましたが、今では1~2千万円程度で導入できるようになっており、出荷ラインという部分的な自動化は比較的実現しやすくなっているのです。
どうしても「自動化」と聞くと大規模な投資を想像するかもしれませんが、出荷ラインの一部やRPA(Robotic Process Automation:主に人を介して行われていたPCの事務作業などを自動化する技術)など、倉庫作業の一部分を自動化することが主流です。
こういったアプローチにより、出荷ラインの自動化やピッキングにかかる時間の大幅な削減が可能となり、倉庫の中をより効率的に運営することができるのです。
このように、工場の2部制は大手企業だから組めるという戦略ではありません。最新技術を活用して業務効率化を図ることで、限られた人員でも人とシステムのバランスをうまく保ち、翌日配送を実現する企業が増えているのです。
2024年問題で、これまで棚上げしていた物流の課題が表層化する中、消費者のニーズに答えて出荷スピードを向上させるためには、最新技術の活用方法を理解して、変化に対応していくことができるかどうかが重要なターニングポイントとなるでしょう。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
PUMAの新物流拠点にAutoStore(TM)を導入 AutoStoreとBastian Solutions、PUMAの業務効率化に貢献~スピード、効率、精度を高めることを実現~
PR TIMES / 2024年11月22日 16時44分
-
トラスコ中山、物流センター「プラネット東関東」に高速自動梱包出荷ライン「I-Pack(R)︎」を新設し、出荷能力を強化!
PR TIMES / 2024年11月18日 17時15分
-
物流を起点に事業改革を探る 官民のキーパーソンが議論 2024年問題克服で、「物流フォーラム」開催
OVO [オーヴォ] / 2024年11月15日 9時20分
-
ロジウィルグローバルサプライ、AI・デジタルヒューマンとロボティクス・RPAの最新技術を活用した流通×物流をOne Stop型で連携、次世代型プラットフォーム構想『Logiwill24.ai』 を開始
PR TIMES / 2024年11月5日 11時15分
-
無人配送がますます身近に、ドローンや無人配送車、無人倉庫の導入が加速―中国
Record China / 2024年11月2日 15時0分
ランキング
-
1【独自】船井電機前社長『不正を働いたことはない』 “破産の申し立て”は報道で知る「本当に驚いた。なんでこんなことに…」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時20分
-
2三菱UFJ銀行の貸金庫から十数億円抜き取り、管理職だった行員を懲戒解雇…60人分の資産から
読売新聞 / 2024年11月22日 21時35分
-
3「築浅のマイホームの床が突然抜け落ちた」間違った断熱で壁内と床下をボロボロに腐らせた驚きの正体
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 17時15分
-
4物価高に対応、能登復興支援=39兆円規模、「103万円」見直しも―石破首相「高付加価値を創出」・経済対策決定
時事通信 / 2024年11月22日 19時47分
-
5ファミマ、プラ製スプーン「有料化」の実験結果を発表 大手コンビニで初、どうなった?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月21日 12時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください