赤字体質から脱出、ドレステリアが2年連続で過去最高益を更新した復活戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年5月13日 20時55分
アパレル大手・ワールドが展開するブランドの中で、ひと際上質で洗練されたセレクトショップとして知られるDRESSTERIOR(ドレステリア)が、2年連続で過去最高益を更新するなど好調だ。26年の歴史をもつ同ブランドは、再起をかけて思い切ったリブランディングに踏み切った結果、新たな顧客を呼び込むことに成功し好調を維持している。見事なリブランディングの成功のポイントはどこにあったのか。ワールドのグループ執行役員で、ドレステリアを運営するエクスプローラーズトーキョー(東京都)共同代表の靏(かく)博幸氏に話を聞いた。
赤字体質から一転、2年で黒字化に成功
ドレステリアが誕生したのは1998年。メンズ&レディースのセレクトショップとして今年で26年目を迎える。ファッションへの感度が高い男女から支持されてきた一方で、靏氏によると「これまでに利益が出たのは2007年の1年のみ。ワールドの中でまったく利益を生み出さない、苦しい立ち位置のブランドだった」という。
靏氏は、長きに渡って赤字体質から抜け出せずにいたドレステリアを、2020年に着任してからわずか2年で黒字化に導き、ワールドを代表するブランドに生まれ変わらせた。
全盛期には40店舗以上あった店舗が現在では15店舗のみと3分の1近くにまで減少した中、売上規模は全盛期と同等程度に復調。店舗当たりの収益性が大きく向上している。
「2022年度は過去最高益を記録し、2023年度はさらにそれを更新、前年比124%成長で着地。また、これまでの縮小傾向から一転して、2024年2月には台北に新規出店も果たした」
靏氏は、オンワード樫山、三陽商会、さらにはユニクロ常務執行役員を務めた経歴をもつ。三陽商会では「バーバリー・ブラックレーベル」の立ち上げとブランド責任者、セレクトショップ業態「ラブレス」「ギルドプライム」のディレクターや事業部長を務めた。
そんな靏氏が、コロナ禍という厳しい環境において、長年赤字続きという厳しい状況にあったドレステリアのリブランディングに取り組んだ理由は何だったのか。「ドレステリアは、ワールドの中でメンズ、レディース両方のラインナップを揃える数少ないブランド。歴史があるからこそ、なくしてしまうのはまずいと思った」と振り返る。
課題を分析したところ、誕生から26年経って顧客の年齢層が上がっている中、コンセプトが曖昧で時代に即していないことがわかった。「再生には、変化がはっきりわかるようなリブランディングが必要だと考えた。細かいところまで、できるところはすべて改善を徹底し、スタッフにもコンセプトを浸透させていったところ、うまく結果がついてきた」
価格帯を2割下げてトレンド要素も取り込む
目に見えて変化がわかるリブランディングは、実際どのように作り上げていったのか。
新たに掲げたマーケットコンセプトは「届きやすい価格にて上質を提案する、手が届くラグジュアリ―ブランド」だ。「最もわかりやすいのは、価格帯の変化。これまで通りの上質感は維持しつつ、2割程度下げた。5万円台のジャケットを4万円台に、3万円台のワンピースを2万円台にと、全体として2割程度落としたことで、確実にターゲットが広がっていった」
さらに、これまではトレンドに左右されない「クラシカル」を追求してきたが、新たにトレンド要素を取り入れたラインナップを加えた。ベーシックなカラー、天然素材を基本にしつつも、シーズンカラーやハイテク素材を導入するなど目新しさを加えている。
こうした変化により、「従来の“高価格”דクラシカル”というポジショニングから、“手の届く価格帯”דトレンド感”を組み合わせたポジショニングとなり、ユナイテッドアローズ、マーガレット・ハウエルに代表されるような、幅広い世代に認知されるブランドと同カテゴリーへとシフトさせた」と靏氏は話す。
「コア顧客は50代以上になっていたが、リブランディング後のターゲットは、“20代後半から50代の洗練されたファッション感覚をもつ男女”とかなり幅を持たせた。年齢に関係なく、良いものを着こなしたい男女に幅広くアプローチしている」
これまで1サイズ展開が主流だったところを、現在は3サイズ、4サイズ展開しているのも、小さいサイズを求める若い世代を取り込むためだ。
「できるところはすべて改善を徹底した」と靏氏が話す通り、改良した点はまだまだある。店舗デザイン、商品ルール、スタイリングコンセプト、販売員の接客やSNSの運用ルール、ロゴの運用ルール、ECサイトのデザイン、ショッピングバッグの刷新やボディの統一。ありとあらゆる面を見直すことで、新生ドレステリアを作り上げた。
二世代で楽しめるラグジュアリーブランドへ
リブランディングの結果、売上や利益率に直結する要因となった点が3つある。
一つは、定価での販売率が改善されたことだ。「これまでは30%前後と低く、過去の赤字体質の大きな要因になっていたが、60%前後にまで改善されている」
もう一つは、EC売上の伸びだ。コロナ前と比較して、レディースが100%増、メンズが400%増と、ECによる売上としては飛躍的だ。
現在の店舗数は15店舗と限定的なため、新規客にとって最初のタッチポイントの多くがECになっている。これを受け、「リブランディングを進める際に、EC画面を通して伝える世界観も徹底的に見直し、ワールドの中でもよりラグジュアリーブランドだとイメージできるようサムネイル画像を一新した」
これほどまでに伸びているのは、「昔からのドレステリアの世界観を求めて購入してくれていた世代も新しい世代も、新たに追加されたトレンド感のあるアイテムがお手頃価格で手に入ることに魅力を感じて、追加購入やリピート購入につながっているのではないか」と推測する。
さらに、現場の店舗スタッフが感じる変化も見逃せない。最近、親子でドレステリアに買い物に来てくれるケースが多いというのだ。「50代の父と20代の息子、50代の母と20代から30代の娘といった組み合わせでお店を訪れ、それぞれの洋服を選んで購入してくれる。親子で楽しめる手の届くラグジュアリーブランドとして認知されつつある」と靏氏は話す。
メンズ・レディースの複合ブランドとして、大型店舗の出店進める
見事、利益の出せるブランドへと生まれ変わったドレステリア。今後は店舗の拡大を急ぐ。
「近年は、商業施設のレディースフロアにレディースだけを取り扱うショップを展開していたように見えていたが、これからはメンズ・レディースの複合店であることを前面に打ち出していく」(靏氏)
具体的には、80坪から100坪程度の大型の複合店を増やし、店舗から世界観を伝えていく。
「リブランディング後の商品を購入してくれたお客さまの中には、ECではじめてドレステリアを知った方も少なくない。今後もECでの販売が重要なことは間違いないが、メンズ・レディースが同じ場に揃う複合ブランドとしての世界観をより多くの人に認知してもらうためにも、大型店舗の拡大を進めていきたい」(同)
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