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ロングセラーブランドに学ぶ、生活者ニーズの理解

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月23日 1時0分

(i-stock/JGalione)

現在と20年前のトップ10商品を比較してみると、6ブランドがランクインし続けていることがわかった。競合商品が多い中、これらのブランドはいかにして生き残ってきたのか?生活者の買物意識が変わってくる中で市場活性化のカギとなるロングセラーブランドの取り組みに注目してみた。

愛され続けるロングセラーブランドの戦略

 毎年数万品という新商品が市場に送り込まれ、競合品と棚争いをしながら、生活者の厳しい目で選別を受け続けるのが小売商品の宿命であるが、ブランド力というのはどれぐらいの寿命を持っているのだろうか?KSP-POS(食品スーパー)で2003年と23年の上位10商品を並べてみたところ【表①】、なんと20年たっても6つのブランドがトップ10に君臨し続けており、ロングセラーとなったブランドの力を感じることができた。これらのブランドの売上や利用状況を分析してみると、支持されているロングセラーブランドこそ挑戦的であり常に生活者のニーズや嗜好の変化をとらえ、リニューアルやシリーズ商品を発売しながら成長を続けている姿が見られた。

表①】2003年と2023年の売上トップ10

アサヒビール「アサヒスーパードライ」

 生ジョッキ缶という革新的な商品の発売は記憶に新しいが、この商品は生活者のどのようなシーンを開拓することができたのだろうか?バスケット分析で従来の商品と生ジョッキ缶それぞれが何と一緒に買われているかを分析してみると、生ジョッキ缶は従来品以上に和牛焼肉やローストビーフ、さらにはプレミアムアイスなどごちそう感のある食卓を連想させるカテゴリーとの同時購買が高く、ハレの日のリッチな食卓シーンにフィットさせることができたのではないだろうか。生ジョッキ缶は【図①】にあるように土日の売上構成比が高く、意外とお刺身や焼き鳥のようなおつまみ品との同時購買はさほど高くないことから、平日の晩酌需要、お家で居酒屋の代わりというよりは、ホームパーティーのシーンに新たな価値を提供できたことが強みではないだろうか。

【 図①】「 アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」の曜日別の売上構成比

明治「明治ブルガリアヨーグルト」

 KSP-POS(食品スーパー)によると、ヨーグルト商品を販売している企業は292社あり、明治は36%のシェアを持つトップメーカーとなっている。「ブルガリアヨーグルト」以外にも「R-1」や「十勝」など多数の有力なブランドを擁しながらも、「ブルガリアヨーグルト」のブランド力を磨き続けることを怠らず、世帯数の減少にあわせた小容量タイプ、健康ニーズに対応した脂肪0、無添加など常に時代のニーズにあった商品を投入し続けてきている。時間の経過とともにそのブランドの購入者も年齢を重ねていき、新しい顧客を取り込めないままにブランドの寿命が尽きてしまうケースもあるが、「ブルガリアヨーグルト」は【図②】にあるようにヨーグルトだけではなく、アイスでも商品を出すことによって見事に若年層を取り込みブランドの活性化につなげている。

【 図②】「 明治ブルガリアヨーグルト」と「同フローズンヨーグルトデザート」の年代別売上構成比

ロングセラーブランドが求められる背景

 スーパーマーケットの食品市場において、ロングセラー商品の占める売上構成比は年々伸びてきているのだが、これはなぜなのだろうか?ロングセラー商品と逆の位置づけになるのが新商品ということになるが、【図③】にあるように、実はこの新商品数というのが18年までは年間6万品以上発売されていたのが、19年以降は5万品前後と75%ぐらいまでに絞られてきてしまっている。新商品が売れにくくなってきているということなのだろうが、その背景として日清オイリオグループの生活科学研究課が行った買物意識の調査を紹介したい。買物の際に重要視することを調査したものだが【図④】にあるように、「いつもの定番品であること」が2位となっている。回答者のコメントを見ると「失敗したくない」、「後悔したくない」という言葉が多く出現しており、これらの言葉がとくに30〜40代という若年層で特化していた。食のトレンドは若年層がつくることが多いのでこの結果には驚かされたが、昨今の物価高がこのような意識に拍車をかけているのではないかと思われる。【図⑤】は食料品や光熱費等すべて含めた物価と給料の推移を見たものだが、22年以降物価は大きく上がり、給料の上がり幅を超えてきており、節約意識や失敗を恐れて買物に保守的になる傾向が強まってきているのではないだろうか。有名な外食店や専門店に「監修」してもらい、おいしさの担保を得た商品が売れており、この数年で市場が3倍と大きく拡大してきていることも、その証左であると思われる。

【図③】 新商品数の推移

【図④】 商品を選ぶ際に重視していること

【 図⑤】 物価と給与の指数推移

求められる新しいロングセラーブランド、確立への挑戦

 社会的な背景もあり、食市場にはロングセラーブランドが欠かせない存在となっているが、単身世帯の増加、既婚男性の料理頻度の増加、レンジ調理など調理方法の多様化などさまざまなことが変化してきており、既存ブランドではカバーできない、これからの時代のための新しいブランドもまた必要となってきている。過去のロングセラーブランドも最初は新商品からのスタートであり、生活者の変化に対応することでブランドとして確立し、支持され続けるようになってきている。味、価格、包装形態、機能性など過去にロングセラーブランドが挑戦してきたことを学ぶことにより、新しいロングセラーブランドを確立していくことができるのではないだろうか。

食未来研究室ホームページ : https://nsk-shokumirai.com/

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