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買物難民支援サービスが続々!小売業に求められる「届ける」以外の要素とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年6月5日 20時58分

Dane Gillett/iStock

少子高齢化が進み、日本の人口は、予想を超えるペースで減少を続ける。市場縮小によって各地で総合スーパー(GMS)や食品スーパーの撤退が相次いでおり、これに伴い、国内では「買物難民」が急増すると予想される。この支援のため、さまざまな対策が講じられているが、単に商品を届ける以外にも、プラスアルファの要素が求められそうだ。
本稿は連載「教えて本多利範さん!」の第6回です

Dane Gillett/iStock

デジタル活用した弱者支援

 厚生労働省は2月28日、2023年の出生数(速報値)が対前年比5.1%減となる75万8631人であると発表した。8年連続の減少となり過去最少だ。外国人を含んだ数値で、日本人に限ればさらに少なくなる。減少幅が80万人以下になるのは初めてである。

 総務省が発表した2023年1月1日時点の人口は1億2242万3038人。日本の人口は2009年をピークとして14年連続で減少している。そのペースは専門家の予想を超えており、年々加速している。人口減少に歯止めがかからない姿が浮き彫りになった。

 人口減少に伴う市場縮小により、各地で相次ぐのは、食品スーパーやGMSはじめ食料品や日用品などを販売する店舗の閉店である。これに伴って、周囲に店舗がなく、移動も難しいため日々の買物に支障が出る「買物難民」が急増すると予想されている。

 農林水産政策研究所は、店舗まで500m以上離れ、クルマの運転も難しい高齢者が2015年に対2010年比13%増の824万人と推計した。人口に占める65歳以上の割合が、2030年代には30〜34%となり、買物難民は1000万人以上となる可能性が高い。2050年には37%となると予想されており、さらに深刻さが増すと見られる。

 こうした状況にあり、生活者の買物支援のためのさまざまな対策が講じられている。

 長野県飯綱町にある食品スーパーでは、デジタル技術を活用したサービスを提供している。眼鏡型のスマートグラスを装着した店員が、離れた場所にいる利用者の買い物の手伝いをする。利用者はタブレット端末に映し出される売場を見ながら、商品を選ぶという仕組みだ。
 ある80代男性は、自宅でスマートグラス越しの総菜を見て、「アジフライがおいしそう」などと話し、まるで店内にいるような買物体験に感激していた。選んだ後、商品は約20分で自宅に届けられたという。

 飯綱町では、スマートグラスの製造を手掛けるTOPPAN(東京都)と連携、2022年からこの買物代行サービスを展開している。今後、ほかの地域でも同様のサービスが広がるかも知れない。

ドローン使って商品を離島へ

 ドローンを使った買物支援策もある。

 コンビニエンスストア(コンビニ)大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都)は、2025年度をメドに、店舗から離島へのドローン配送の実用化をめざしている。

 このほど福岡市内にあるコンビニから、約600人が居住する能古島まで商品を届ける実証実験を行った。同社が独自に開発したシステムで受注し、約5km離れた現場まで、わずか約10分で商品を配達することに成功した。

 注文された商品は、アイスクリームや淹れたてコーヒー、おでんなど、店舗での買物と同様のものが多かった。ドローンを駆使して「今すぐ欲しい」という利便性の高いサービスの提供をめざすというのは、コンビニらしい施策だ。

 「無印良品」を展開する良品計画(東京都)は、山形県酒井市や北海道函館市をはじめ、複数のエリアで移動販売を実施している。店舗から食品や日用品を詰んだ専用車両が山間地など、買物が不便な地域を巡回する。また、同社では出店販売サービスも行っており、千葉県千葉市の花見川団地では毎週土曜日、空いている店舗を活用し、商品を陳列している。

 良品計画がめざすのは地元ニーズに寄り添った店づくりだ。買物難民支援の意味合いもあるが、さらに生活者の近くの場所まで出向き、困りごとを直接聞くことが、新しい商品、サービスの開発につながると期待している。

 ほかにも移動販売としては先駆的な「とくし丸」も依然として強い支持を得ている。2012年のサービス開始から、車両数は1000台超と急速に拡大。商品を供給する食品スーパーと、軽トラックを運転して配達する個人事業者が利益を分け合うビジネスモデルを構築したことも大きい。配達人は、各地で対面販売を通じ、買物の悩みにも応えている。

 これらの事例からは、単に商品を届けるだけでなく、「コミュニケーション」はじめプラスアルファの要素に成功のカギがありそうだとわかる。

本多利範さんの書籍「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」

商売の基本_書影本多 利範 著
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2022年03月
ページ数:276
ISBN:9784478090787

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