日本市場縮小のなか、強みを発揮できるビームスらしい海外戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年6月3日 20時58分
ビームス(東京都/設楽洋CEO)の海外戦略が着々と実を結び始めている。フランス・パリの2024年秋冬ファッションウィークにあわせて開催した「AW24 BEAMS パリ展示会」(1月17日~1月21日)では、同社が展開するウィメンズの〈BEAMS BOY〉が、海外の卸先を現卸先11社の「2倍超」となる24社まで拡大させた。手ごたえのある成果を受け、同社グローバル本部 グローバルビジネス部 部長の戸田慎氏に、「世界」への想いや戦略を聞いた。
初のシーズンもの投入が確かな成果を推進
1月の展示会では〈BEAMS BOY〉を定番商品だけでなく、初めて2024年秋冬シーズン商品まで投入。欧米バイヤーに国内市場と同じく、シーズン商品をアポイント制で紹介した。29社のバイヤーと商談を行い、オーダーは現卸先11社の「2倍超」となる24社から受け付けた。
欧米バイヤーの反応では「メンズライクなレディースという〈BEAMS BOY〉のコンセプトがユニークだ」といった声が目立ったほか、ブランドを複層的に構成する「トラッド」「ワーク」「ミリタリー」「アウトドア」「スポーツ」というテーマそれぞれの商品群に対して、テイストの異なる幅広い取引先が、〈BEAMS BOY〉ブランドの中でも、自社に合うテーマの商材のみをピックアップして買い付けるという、海外展示会ならではといった動きも見られたという。
「ここに至るまでも〈BEAMS BOY〉は、国内での店舗接客を通して得られるお客さまの声や販売実績をもとに、より完成度の高いオリジナル商品を制作し、世界に届ける準備を粛々と進めてきた。今回の展示会を通してさらなる飛躍ができる手応えを感じている」と、戸田氏は満足げに振り返る。
フランスの展示会では初めてシーズン商品を紹介できたことも推進力になった。
「海外に卸をするためには、例えば 2024 年秋冬の商品展開が1月のタイミングだと、その 1 年前にはサンプルを見せなければならない。しかしトレンドの見極めが難しく、今まで定番しか出せていなかったが、一部の商品においては企画の時期を早めることで、その問題を解決した」と戸田氏は話す。
セレクトショップとして植え付けられた遺伝子
1976年に創業したビームスは、モノやコトをボーダレスに日本に紹介。店舗ではアイテムを通して、各国の文化的背景や魅力を知るきっかけを与え、顧客のライフスタイルを豊かにしてきたという自負がある。近年では、アパレルだけでなく、BEAMS JAPAN事業を通じた地域活性化などもあり、風俗や文化への影響も意識した取り組みが、同社の遺伝子には組み込まれている。
2013年に現地一号店を出店し、現在直営9店舗を運営する台湾は、そうしたビームスのイズムが最も反映された海外進出事例といえる。2023年には同国のファッション感度の高まりを受け、ビームスのさまざまなスタイルを求めるようになった顧客へ向けて、温暖な気候下では需要が少ないと言われてきたスーツやジャケットを展開する店舗をオープンさせた。それは、単にその国に新たなファッションアイテムを流入させるにとどまらない、文化にまで影響を及ぼす一歩も二歩も踏み込んだアクションといえる。
「セレクトショップとしての強みや、ビームスの出自、考え方、『文化をつくるんだ』という想いで言えば、台湾が最もカルチャーメイキングできている場所になっていると思う。現地法人を設立し、自社スタッフが顧客のライフスタイルに影響を与え、着実にレーベル展開を増やしている。ビームスの多面性を表現できて、コミュニティもできていると考えると、台湾の姿が今後各国に求められるのだろうと感じている」(戸田氏)
ビームスにとっての海外進出とは
国内市場がシュリンクする中で、海外に市場を求めるという側面だけでなく、ビームスとしてのミッションを達成することを重視。だからこそ、同社の海外への一歩には、よりその意義や価値が重要であり、軽々しくは踏み出せない重みが伴う。
「今後、単に国内市場が縮小するという理由以上に、やはり海外でしっかり勝負できないと国内でも通用しなくなると思っている。国内で培ってきた、価値の高いプロダクトをつくる力や、新しいカルチャーをつくっていく力を、それぞれの国に適応させながら深化させていく必要がある」と戸田氏は、フランスの展示会で得た手ごたえを継続するために必要なスタンスを、自身にも言い聞かせるように口にした。
大きなうねりの中にあるアパレル業界にあって、独自のスタイルで存在感を示し続ける同社。海外展開は同社のイズムを存分に発揮できる領域であり、今後の伸びしろとしても外せない。着実に進出国でその足跡を刻む同社の動きは、国内アパレルの今後を占ううえでも目が離せそうにない。
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