あのチェーンも導入!食品スーパーの「量り売り」、成功の秘訣は?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年7月4日 20時58分
10年ほど前から食品スーパー店舗がスポット的に導入している「量り売り(バルク販売)」コーナー。急成長のあの食品スーパー企業や、セブン-イレブン・ジャパン(東京都)が先般オープンした戦略店舗「SIPストア」で導入されたことで注目を集めた一方で、扱いを取りやめるチェーンも散見される。食品スーパーにおける量り売りの動向と成功要因について、バルク販売用什器の販売代理店グローリートレーディングの担当者に聞いた。
じわり広がるも継続に難あり、米国との違いは?
2014年頃から量り売りのバルク販売用什器を取り扱うようになったグローリートレーディング。同社の田中氏は、「量り売りの小売店への導入は、ここ10年でじわじわと右肩上がりで進んでいる」としながらも、「正直なところ、思ったほどの広がりはない」と実感を語る。
そもそも、バルク販売用什器の導入は飲食店が中心で、小売のボリュームは小さい。エシカル意識の高い個人規模のカフェや雑貨店での取り扱いは増加しているものの、食品スーパーの導入実績は低調だという。「たとえば個人が運営するカフェであれば、量り売りコーナーの導入により、店に変化をつけることができる。しかし食品スーパーはそういった柔軟性を発揮しにくく、導入されても継続が難しいので、売場がなくなってしまう」(田中氏)
日本の食品スーパー企業は、米国のWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)をはじめとした米大手チェーンを参考にして量り売りを取り入れるケースが多いという。しかし米国と日本ではビジネス手法も異なれば、お客が重視するポイントも異なる。
米国チェーンの量り売りコーナーは「店舗内でロケーションを押さえて一斉に展開」という手法がとられる一方、日本では「店舗の一角で小規模に始める」といった導入例がほとんどだ。また、米国では、「日常で使われる商品」が売られるが、日本では「とくに導入が始まった初期は、スーパーフードやオーガニック商品といった高価格帯の商品が扱われてきた」(田中氏)という。
さらには、「包装されていない商品への抵抗感」を持つ消費者の存在も看過できない。日本の消費者は、包装された商品を好む傾向にある。たとえば、「包装されているナショナルブランド(NB)商品」と「包装されていない量り売り商品」があるとすると、日本では前者が選ばれやすい。「湿気の多い気候も影響しているかもしれないし、小分けされることで明確な価格が付いていることも安心材料になっている可能性もある」と、田中氏は分析する。
ほかにも、容器から中身がこぼれやすく、売場を清潔に保つために清掃に割くコスト管理や、オペレーションの工夫が不可欠となる点も、量り売りコーナー普及のハードルになっていると考えられる。
「NBにない商品」と「詰め放題」体験でワクワク感を演出
衛生面、オペレーション、管理コストなどが普及の障壁となっている量り売りコーナーだが、成功事例も存在する。
成功した要因のひとつに田中氏が挙げるのは「NBにない品揃え」だ。前述のとおり、同じ店舗内に似たNB商品がある場合、量り売りよりも包装済みのNB商品が選ばれやすい。そこで、NBにはない商品で量り売りコーナーを構築することが重要になるというのだ。
とはいえ、高価格帯のスーパーフードやオーガニック食品に消費者の手はなかなか伸びない。そうした中で販売が好調なのは、ナッツやグミ、とくに素材などにこだわったナチュラル系の商品だそうだ。ちなみにグローリートレーディングの直営店舗では、チョコレートコーティングされたプリュッツェルが人気だという。
田中氏はもうひとつのキーワードとして「詰め放題」を挙げる。通常の量り売りは、商品を容器に詰めたらどのくらいの価格になるか想像しにくい。しかし「カップ1杯いくら」と価格が明示されていれば、安心感だけでなくお得感も提供できる。
そういった点でロピア(神奈川県)が首都圏の店舗で導入した量り売りコーナーは、これらの要因を満たす成功事例のひとつといえよう。同店の菓子売場内にあるバルク什器に収められたグミは、NB商品では扱われていないややアッパーな商品で、「袋いっぱいで◯円」という詰め放題で販売している。カラフルな色彩で売場を盛り上げながら、「詰め放題」をお客に体験してもらうことでお得感とワクワク感を提供しているのである。
「NBにはない商品」を「詰め放題」で提供する量り売りは、高価格帯の商品を計量方式で量り売りする場合と比べて、利益率は低い。とはいえ、「詰め放題体験が提供する『楽しさ』は、お客さまにとっての店舗の魅力を高める価値になる」と田中氏は強調する。
他方、計量方式にも「日本らしい量り売り」とも言うべき事例が出てきている。「関西の食品スーパーでは、いりこや昆布など出汁に使われる素材の量り売りを実施したところ、販売が好調だ。『ちょうどいい量が欲しい』という核家族の需要や、『湯豆腐用の昆布が一枚だけ欲しい』という単身世帯のニーズに合っているようだ」(田中氏)
日本の食品スーパーに量り売りが導入されてからわずか10年ほど。黎明期から成長期へと移行するには「継続」がポイントとなる。田中氏によると、重要なのは「お客も店舗も、さほどコストをかけずに手軽にできること」だという。什器を提供する販売店として「成功事例をもとに小売店をフォローしながら、ご提案とお客様への価値提供につなげていきたい」と田中氏は意欲を語った。
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