H&G併設型の最新店舗 業態転換で売場機能を明確化
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年7月30日 21時0分
コメリ(新潟県/捧雄一郎社長)が、大商圏型の「パワー」、小商圏型の「ハード&グリーン(H&G)」に続いて、第3のフォーマットとして育てているのが「PRO」だ。建築職人をターゲットとした同フォーマットの最新店舗「コメリPRO橿原店」の売場づくりを調査した。
調査日:5月16日、17日
業態転換中心に15店舗を展開
PROは大商圏型のパワーの資材館をスピンアウトし、建築職人のニーズに合わせて、建築資材、工具、金物、作業用品などプロユース商材を総合的に品揃えしたプロショップである。2024年3月期末で15店舗を展開している。
PROは14年8月、三重県津市にオープンした「PRO久居店」が1号店。01年に1号店を出店した「コーナンPRO」や08年開業の「ホダカ」と比べると、後発のスタートとなった。当初は業態転換を中心に店舗数を増やした。ここ数年は業態転換だけでなく、居抜き出店や、H&Gとの併設型など、出店のバリエーションを拡大している。3号店の四日市店(三重県四日市市)ではトラックに乗ったまま売場に入り、必要な商品を積み込んでワンウエーで会計もできるドライブスルー方式の資材売場を併設するといった、他社ではあまり見られないような特徴のある売場づくりも行っている。
今回、売場調査を行ったのは、24年3月17日にオープンしたPROの最新店舗「コメリPRO橿原店」(奈良県橿原市)だ。調査日はオープンから約2カ月後の5月16日、17日の2日間である。
H&G併設型で新規顧客を開拓
橿原店は売場面積が約2000坪の大型H&Gの店舗だったが、H&Gを約1200坪に縮小。約800坪のPRO店舗の併設型へとリニューアルした。これにより、奈良県内のコメリの店舗数は15店舗で、PRO業態としての出店は初となる。
同店は近鉄大阪線「真菅」駅から徒歩約13分の場所にある。橿原市は奈良県中部の都市で、奈良市に次ぐ県下で人口第2の都市。店舗周辺は住宅地が広がる一方で、道路を挟んで向かい側には食品スーパー「オークワ」、家電量販店、ドラッグストア、100円ショップなど商業施設も立ち並ぶ。橿原店は奈良県を東西に結ぶ中和幹線と、南北につなぐ橿原バイパスの交差点の近くにあり、大阪市内や奈良市内で仕事をする建築職人にとって利便性の高い立地となっている。周辺地域には工務店など建築関係従事者が多く、今回のリニューアルは彼らからの要望も後押しになったと推測される。
橿原店をH&GとPROに分離したことによって大きく変わったのは売場機能の明確化である。H&G店舗はハード商材を大幅に縮小することで、もともと得意としていた園芸と、日用品・家庭雑貨などソフトラインの商材を中心に構成。売場のダウンサイジングによって、普段使いで買い回りしやすく、平日でも開店時から主婦や年配男性など多くのお客が途切れなくやってくる。
一方、PROは一般客向けの売場と分離されたことで、職人にとって気兼ねなく立ち寄れる店舗となった。新たな顧客層の開拓を期待できる点もコメリにとってのメリットだ。
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ハード商材のPBも充実
コメリPRO橿原店のもう1つの特徴は、プライベートブランド(PB)商品が充実している点だ。同業他社のホダカをはじめ、プロショップではPBを敬遠する傾向があるが、コメリは積極的に導入している。
建材・木材・配管材は「K+(プラス)BUILD」、工具は「K+GEAR」、塗料・補修材は「K+COLORS」のようにカテゴリー別にブランドを展開している。そのほか、「電動工具」の「UBERMANN(ウーバマン)」、作業衣料の「SOLVIC(ソルヴィック)」、左官道具の「寅吉」もすべてPB商品だ。
コメリのPBの売上高構成比率は47.7%(24年3月期)とHC業界で最も高い。PB開発のラインアップはソフトラインだけにとどまらず、ハード商材でも進んでいるため、このような売場づくりが実現できる。PB商品は商品政策(MD)に幅を持たせられるだけでなく、プロショップの運営で課題となる粗利益率の改善にもつながる。
橿原店のMDは、大型資材をベースに工具、作業工具、作業着など基本商品をほぼ網羅した総合型タイプといえる。屋外売場ではブロック、セメント、塩ビ、砂などほぼフルラインで揃えている。
オープンして約2カ月だが、固定客づくりが課題となるだろう。調査日の2日間、来店客の動向を見ると、早朝の7〜8時はあまりお客がいないが、9時を過ぎると軽トラック、小型バンが少しずつやってくる。とくに午後1時過ぎにかけては木材などの大型商品購入が見られた。まだ開店して日が短いが順調な滑り出しではないだろうか。今後は「コメリビジネスカード」の固定客を増やすことができるかがカギとなるはずだ。
総合的なMD 核は電動工具
売場を順番に見てみると、入口から左側・後方は建築資材・木材が中心となる。
左壁面には単管パイプ、VU継手、正面奥の壁面には断熱材、手すり、スチール棚、換気・ガラリ・ダクトを配置する。平場右サイドには塩ビパイプ、水栓部材に加えて、便座、化粧台といった住設機器も陳列。壁紙の切り売り販売も行う。塗料売場では養生用テープ、ガロン缶も取り扱う。建築金物はPB商品も含めた構成で、まとめ売り、バラ売りなどきめ細かく対応している。
内装資材は、造作材、アルミ型材、ドア、クローゼット、カーペットタイル、吸着フロア材などフルラインで揃えている。長尺木材は約100尺を確保し、杉間柱、赤松垂木、杉KDカフェ板、木材波板、屋根材などを扱う。左壁面は約146尺でメッシュ、安全用品、波板など建築職人にとって欠かせない商品群を並べている。
売場前方・右サイドは電動工具、作業衣料、装備品、電設資材などを中心に品揃えしている。
右壁面前方では電球、蛍光灯、セキュリティーセンサーを展開。その隣の平場では、約52尺で電設資材、エアコン部材を配置した。作業衣料、装備品はコメリが得意とするカテゴリーでPB商品も交えて品揃えを深掘りしている。
電動工具はガラスケース入りで「マキタ」を4尺13本、「ハイコーキ」を4尺5本、「BOSCH」「京セラ」「パナソニック」「MAX」を4尺4本で陳列する。カタログ価格から35%割引をPOPで強調し、売場の核カテゴリーにしている。
そのほか機械のレンタルサービスを実施しており、コンクリートミキサー、エンジンチェーンソー、電動式耕運機など26機種の貸し出しに対応していた。
今期、コメリはPRO店舗を新たに9店舗出店する計画だ。橿原店はH&GとPROの併設フォーマットのモデル店舗となるだろう。
コメリPRO橿原店
オープン日 | 2024年3月17日 |
所在地 | 奈良県橿原市北妙寺町630番地 |
アクセス | 近鉄大阪線「真菅」駅から徒歩約13分 |
売場面積 | 2605㎡ |
営業時間 | 7:00~20:00(日曜は9:00~) |
駐車台数 | 597台 |
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