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コスモス薬品 東北進出、食品構成比6割越えの衝撃!

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年7月21日 20時53分

今回調査した「ドラッグストアコスモス南柏店」(千葉県柏市)

ドラッグストア(DgS)大手のコスモス薬品(福岡県)が、2024年5月期連結決算を発表した。売上高は対前期比16.6%増の9649億円、営業利益は同4.6%増の315億円、経常利益は同3.7%増の342億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同2.8%増の244億円と大幅な増収と増益を達成。売上高はいよいよ1兆円の大台を射程圏内に捉えた。7月18日、メディア向けに開かれた決算説明会で同社の横山英昭社長は、新規エリアを含めた出店戦略や、他社が強化する生鮮食品の販売に関する見方など、今後の成長を左右するさまざまな施策についての展望を語った。質疑応答の内容を中心に発言内容を抄録する。

食品の売上比率は初の60%超 「生鮮が加われば『最強』になるが……」  

決算説明を行う横山英昭社長
オンライン上で決算説明を行う横山英昭社長

――食品の売上高構成比が60%を超えた(60.4%)。あらためて食品の販売政策についてどう考えているか。

横山 四半期単位では60%を超えたことはあるが、通期で超えたのは初めてだ。食品マーケットは大きいので、そこが伸びるのは自然な流れ。今後も食品の売上比率は高くなっていくだろう。

――生鮮の販売についてはどう考えているか。

横山 DgSにとって生鮮の販売は破壊力があり、集客の肝であることも理解している。しかし、われわれの生鮮の取り扱いは実験の範疇で、スペースも什器2台分くらいだ。(ほかの生鮮強化型DgSに比べて)お粗末すぎてやっているうちに入らない。「その程度の規模感でやるなら、やめてしまえば」といったような声も社内では出ている。

 ただ、将来的に生鮮の販売を本格化する選択肢は十分にある。その場合は自社でやるしかないとも思っている。今はとにかく(生鮮について)勉強中だ。

――生鮮の導入に関しては何がいちばんの障壁なのか。すでにつくり込まれた売場レイアウトとオペレーションに付加することがやはり難しいのか。

横山 われわれの店舗は大型なので、生鮮を売場に導入すること自体は難しい話ではない。ただ、生鮮はやはり鮮度が重要。鮮度管理のノウハウが(ないことが)大きな課題だ。

――競合が生鮮を強化するなかで、そうしたチェーンとぶつかったときにまだ競争優位に立てるのか。

横山 われわれの強みはディスカウント要素で、それは生鮮3品がなくても強い集客装置になっている。そしてディスカウントはローコストオペレーションを確立しなければ成立しない。「安く売るための仕組み」をつくることができている点は大きい。

 もちろん、そこに生鮮3品が品揃えに加われば”最強”になるかもしれないが、なかなか難しいところがある。

東北進出までは1~2年 「M&Aは考えない」

コスモス薬品
コスモス薬品の店舗

――売上高は1兆円に迫るが、DgS業界ではウエルシアホールディングス(東京都)とツルハホールディングス(北海道)の経営統合によって2兆円企業が誕生する。どう見ているか。

横山 他社のことについてはコメントしないが、われわれとしては1兆円も通過点に過ぎない。今進めている戦略のもと、消費者に支持される店づくりをしっかりと続けていきたい。

――M&A(合併・買収)による規模拡大はこれまでどおり考えていないか。

横山 まったく考えていない。小さくとも多少の利益が出ているような店は確かにあって、他社がそうした店をM&Aすることはよいと思うし批判もしない。ただしわれわれはそういった小さな店(を手中に収めること)で利益を稼ぐよりも、自社の大型店で大きな利益を稼いでいきたい。大変なことではあるが、丁寧に、集客力のある店をつくっていきたいと考えている。

――(決算説明の中で)長野県と福島県での出店調査を開始すると発表した。福島県に出店するとなると、ようやく東北地方への進出が達成される。実際に出店するまではどれくらいのスパンで考えているか。

横山 あくまで出店調査を開始するということなので、時期は明言できない。また、われわれの出店は大店立地法が絡むので、1~2年はかかるだろう。

――インバウンド(訪日外国人)需要を見込んだ都心部での出店についてはどう進めるか。

横山 東京では歌舞伎町、大阪では心斎橋と道頓堀、福岡では天神などに店舗を構えているが、インバウンド(の取り込み)は副業であり、主要ビジネスではない。われわれの主戦場はあくまで郊外だ。たしかにインバウンドの数は増加しているようだが、それに期待することはない。

「セルフメディケーションの阻害は許されない」 OTC販売制度見直しの議論にチクリ

――OTC医薬品の販売制度見直しを主な論点に、薬機法改正に向けた議論が進んでいる※1。

横山 (若者が多く集まる)歌舞伎町に店を構えていることもあり、オーバードーズの問題については登録販売者が中心になって、声掛けをしながら防いでいきたいと思っている。しかし、大多数の適正利用者の購入を阻害する、言い換えればセルフメディケーションを阻害するような制度改定には反対したい。

 「角を矯(た)めて牛を殺す※2」という言葉がある。今回の問題で言えば「角」はオーバードーズの問題、「牛」はセルフメディケーションに例えられるだろう。「角」は確かに深刻であり対応しないといけないが、「牛」の利便性を損なうことは許されない。

※1:若年層を中心としたOTC薬のオーバードーズ(過剰摂取)が社会問題となるなか、陳列方法の規制強化(来店客が直接手に取れる場所に置かないなど)や、頻回購買の防止(身分証確認や販売記録の保管など)といった販売方法の見直しが、厚生労働省を中心に議論されている。これに対して日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は店舗側の負担増やセルフメディケーションの阻害リスクを理由に反対を表明している。

※2:曲がった牛の角をまっすぐに直そうとした結果、牛を死なせてしまうこと。転じて、部分的な欠点や問題に手を加えすぎた結果、かえって全体を悪化させてしまうことのたとえ

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