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三島食品の「ゆかり」、脱「ふりかけ依存」で売上アップ、その戦略とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年8月8日 20時59分

ゆかりとかつおをコラボさせた売場

米が主食の日本人にとって、ふりかけは切っても切れない存在だ。中でも、紫色のパッケージでお馴染み、赤しそふりかけの「ゆかり」を知らない人は少ないだろう。その「ゆかり」を製造、販売する三島食品が、大手スーパーマーケットチェーンとタッグを組んで行う「メイン食材販売支援プログラム」が注目を集めている。三島食品ならではの、スーパーマーケットと協業する販促プログラムとはどのようなものなのか。特命営業部長の吉本英治氏に話を聞いた。

ゆかりとかつおをコラボさせた売場

調味料としての「ゆかり」を普及へ

 三島食品の看板商品である「ゆかり」は、54年の歴史をもつヒット商品で、同社の売上の約3割を占める。現在ではご飯のお供として各家庭にも広く普及しているが、発売当初は業務用がメーンで、学校の給食用としての納品がほとんどだった。

 最初は、給食づくりの現場で、ご飯の味付けに「ゆかり」を混ぜる、というのが主な使われ方だった。一方で「ゆかり」は彩りもきれいな上に塩味もある。次第に、「ゆかり」を使った新たな給食メニューが開発されるようになっていったという。

 「調理員の皆さんが最初に目を付けたのが野菜。なかなか児童に食べてもらうのが難しい野菜をどうすればおいしく食べてもらえるか。そう考えたときに、『ゆかり』で和えるというメニューが広がっていった。そこから、野菜に限らず、肉や魚の味付けにも使われるようになっていった」

 給食現場では、すでに「ゆかり」は塩コショウと同じような調味料として活用されるのが一般的となっている一方で、家庭ではあくまでも「ふりかけ」としての認知の域を出ていないという実態があった。

 「ご飯のお供として『ゆかり』を使ってもらうだけでは、家庭用の売上をこれ以上増やすのは難しい。給食の現場でさまざまな食材に活用してもらっているように、『調味料』という位置づけで認知してもらい、野菜や肉、魚に加えたときのさっぱりとした『ゆかり』の味わいや魅力を多くの人に知ってもらいたいと考えた」と吉本氏は話す。

 これが、生鮮食品とのクロス販売を行う「メイン食材販売支援プログラム」を始めたきっかけである。プログラムがスタートして約9カ月。「ゆかり」シリーズの2023年通期売上は、前年比約108.9%と好調だという。

生鮮とのコラボ提案「ゆかりをこんな風に使えるなんて」

 「メイン食材販売支援プログラム」の方針が決まったのはコロナ禍の2021年。「ゆかり」をメーン食材の味付けに使ってもらえるような提案をしながら、各スーパーマーケットの生鮮品の売上アップに貢献できる仕組みを考えた。目玉となるのが、生鮮品と「ゆかり」のコラボメニュー集だ。メニュー集の見た目、内容にも工夫が詰まっている。

 「『ゆかり』のパッケージと同じサイズ、デザインで印刷し、お客さまが『ゆかり』を手に取ると『実はメニュー集だった』という仕掛けになっている。『ゆかり』を活用した50種類のメニューが載っており、『基本メニューバージョン』のほか、『おつまみ用バージョン』『子ども向けバージョン』の3種類を用意するなど、家族全員が楽しめる内容を考えた」

 店頭でのイベントを開始したのは、2023年の7月。

 「夏場は、魚介コーナーではタコ、野菜売場ではきゅうりがよく売れる傾向にある。そこで、タコときゅうりを『ゆかり』で和えれば1品が完成するという簡単なアレンジメニューを打ち出した」

 結果、とにかく手軽な点が好評を博した。「これまで『ゆかり』をこんな風に使うことは想像していなかった」との反応が多く挙がり、肉、魚、きゅうり以外の野菜の売場にもPOPを置き、「ゆかり」とのクロス販売を進めていった。

 一方で、食品メーカー各社は、こぞってスーパーマーケットでの販促施策を企画し展開しており、イベントを実施するにも競争が激しい。そんな中、同社の「メイン食材販売支援プログラム」のもう一つの目玉は「お店全体をインパクトのある『ゆかり』の紫色に染める」ことだ。

 吉本氏が「紫色のエプロンから、ポンチョ、帽子、うちわ、バルーン、のぼり等100種類にものぼる『ゆかり』の紫色のグッズを用意し、大々的なイベントにして楽しめる仕掛けを用意している」と話す通り、お店に入った瞬間、思わず店内を見渡してしまうような特別感のある演出が特徴となっている。

 「メイン食材販売支援プログラム」の実施は、これまでに12企業、100店舗以上にのぼる。

 「店舗の感想や意見を聞きながら、新たなグッズも増やし、お客さまに楽しんでもらえるイベントを目指して進化させている」

パスタ、唐揚げ…総菜コラボメニュー続々

三島食品

 クロス販売を進めるうち、「ゆかり」は総菜売場と相性がよいことがわかってきた。「メイン食材販売支援プログラム」で同社と強力にタッグを組むのが、静岡県西部を中心に展開する遠鉄ストアだ。その遠鉄ストアで、「ゆかり」を使用した三角おにぎりにオリジナルの小さな「ゆかり」シールを貼って販売したところ、女子高生の間で話題となり売上が伸びた。

 「赤しそおにぎりという定番の使われ方ではあるが、『ゆかり』のミニシールに注目が集まり、当初は2種類のシールを用意していたところ、今では5種類で展開している。さらに、『ゆかり』を使用したパスタを新たにメニュー化するなど、店舗担当者とさまざまなアイデアを出し合いながらクロス販売の工夫を続けている」

 「ゆかり」による「メイン食材販売支援プログラム」をスタートして以降、『ゆかり』以外にもラインナップが揃っていることが認知されるようになり、ちょうど発売後1年程度の新しい商品ラインナップである混ぜご飯の素「ひろし」「鮭 ひろし」の売上もアップしたという。

 「POPには『ゆかり』シリーズ8種類すべての写真が載っているので、POP効果でこれまで手にしたことのない商品を手にとってくださるお客様が増えたのだと考えている」

そもそもご飯にはかけない!海外でも売上好調な理由

 メーン食材と「ゆかり」のクロス販売に手ごたえを感じつつも、他社との競争が激しい中、同社のイベントを選んで実施してもらうのは簡単なことではない。また、現状では、POPの設置から店内の装飾までのすべてを社員総出で対応していることから、同時期にイベントが集中すると同社の社員数では対応できなくなるという課題もある。

 「数店舗でのトライアル販売で、売り方のノウハウすべてを提供し、他店や他のチェーン店に展開してもらうのが理想だと考えている」と吉本氏は話す。

 一方、足元では、「ゆかり」シリーズは海外の売上の伸び率が高く、前年比1.3倍を超えるペースで推移している。それも、米が主食ではないアメリカを中心に人気で、従来からサラダやポップコーンなどの味付けに活用されているという。

 吉本氏は「『ゆかり』シリーズの8種類はすべて、調味料としての役割を果たす。ご飯にふりかけるもの、というイメージが強い日本においてこそ、塩コショウと同じように日常的に使ってもらう調味料の位置付けになるのが目標。『ゆかり』以外のラインナップにも生鮮品や総菜のクロス販売を広げていきたい」と意気込む。

 

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